論評者:NAKA/road
①「天才魔法使いに転生したのにネルがあまりに能天気なせいで幼女たちの下僕になっていまい、そんな幼女たちは貧乏だというのに世界征服を目論んでいる件」 作:とお
どうも初めまして、NAKA/roadのroadです(同一人物)。作者:「とお」さんの作品を拝読させていただきました。読んだエピソードは全部です。早速、批評を始めたいと思います。
(1)作者の印象
これは、作者:とおさん(さん付けすると、まるで父さん、のような印象になってしまうので、以下、作者さん、とさせていただきます)の人格どうこうではなく、作品を読んで私が抱いた、言うなれば作者さんの得意不得意の話ですね。
何が言いたいかというと、ズバリ、作者さんには明確に得意不得意な文章の形がある、と私は思ったわけですね。文章の品質、というのがはっきり分かれている。
どんな作者さんにも、得意な文章、苦手な文章というのはあるかと思いますが、今作の作者さんのはかなりマイナスに働いてしまっているように私は感じました。
というのも、作品では【何かの事柄を説明する】場面における文章が、あまりにも説明口調に思えたのです。具体的な内容は以下に記しますが、とにかく、惜しい!
世界観や設定、ストーリーの流れが独特で、読んでて面白かったのですが、その独特な設定等の殆どが、どこか急にぶつ切りのメモのように記されてしまっているのが、どうしても話を読み進めている最中で違和感を覚えてしまう。
というわけでまずは文章から指摘させていただきます。
(2)文章
①漢字に変換しましょう
まず、漢字に出来る言葉を漢字にしたほうが良いですね。どうしても読み辛いですし、何より、平仮名の連続では言葉を理解するのに時間がかかってしまいます。
例文:「ネルイは彼女をいつもじつの妹のようにかわいがっていた」
第一話の三段落目の一文を抜粋させていただきました。
・「いつもじつの妹」
・「ようにかわいがっていた」
他にも散見できますが、本来熟語であるはずの言葉と平仮名の言葉が、まるで一つの言葉のように錯覚してしまうのは良くありません。特別、主人公が漢字が苦手である、などと言った背景も見受けられないので、ただただ読者にはストレスを与えるばかりです。改善しましょう。
②説明的且つぶつ切りな文章がある
作者さんの大きな弱点(私が思うに)ですね。抜粋します。
第1話より
【聞きおぼえのない少女の声がして、背後を振りかえった。丘の下にちいさな金髪の幼女が立っているのが見えた。片手にはスティックのようなものをつかんでいて幼女はそれを空へと伸ばした。幼女はつぎにそのスティックを前へ突き出した。】
第6話より
【その晩も、ネルは布団に入ると、マリアの抱きまくらとなった。タイムマシンは、いちどだけ使用した。ヴィーアールというシステムで、一〇〇年前のオレフォス村を視聴した。
結論から言うと、そこは自分の知っているオレフォス村ではなかった。叔父も叔母もおらず、とうもろこし畑もなかった。】
分かりやすいのが、上記の二つの文章ですね。句点の前の一文字が全て「た」で終わっているんですね。これは勿体無いです。なぜなら、この作品では、三人称視点の中に度々、主人公の心情が描かれる場面があったり、口語体の文章が登場する、言うなれば【読みやすさ】に重きをおいた文章となっています。
であるにもかかわらず、~した、~いた、といった文末の言葉が連続するせいで単調な文章になってしまっています。
勿論、敢えて文末の言葉を統一する手法もありますが、一文一文の情報があまりにもぶつ切り過ぎて、そして無感情です。
たとえばですが……、
【聞きおぼえのない少女の声がして、背後を振りかえった】
→【聞き覚えのない少女の声に振り返る】
【丘の下にちいさな金髪の幼女が立っているのが見えた。片手にはスティックのようなものをつかんでいて幼女はそれを空へと伸ばした。幼女はつぎにそのスティックを前へ突き出した】
→【丘の下。空へと伸ばしたスティックのようなものを片手に持つ金髪の幼女がそこに立っていたのだ。幼女はすぐに、スティックを前へと突き出した】
文末を変えるだけでも印象は変わりますし、文字数も減らせて、尚且同じ内容の文章になります。さらにここで【聞き覚えのない】を【透き通った】などの装飾の言葉に置き換える(あるいは付属する)とネルイの心情や感覚が理解できますし、マリアの印象もぱっと感じ取れます。
情報だけを明示する手法はありますが、それは全てにおいて適応出来る訳ではありません。他にも付属できる情報などを付け加えれば良いと思います。
③しかし、盛り上がる場面での文章は良い。
説明口調な文章は目立たなくなっていました。おそらく、問題ない文章は作者さんが明確なイメージを持って書いたのだと思われます。そういった部分は読みやすく、物語に没頭できました。文句無しです。
(3)主人公のキャラクター
少し淡白に感じました。他のキャラクターや世界観が目立っている為、だからこそ、たとえば前半部分でのタイムマシン、未来の世界、アンドロイド、ドラゴン、といった特別な存在に対して、主人公らしいリアクションや心情を比喩などで補完したほうが良いと思いました。
(4)ストーリー展開
特別不自然な部分はありませんでした。丁寧な構成で、物語に入り込めました。強いて言えば、物語開始時の主人公の淡白さ、ドラゴンや魔法を目の当たりしたとは言え、異世界という特異な環境に身をおいた主人公の理解のあっさりさは違和感がありました。疑問を抱く程度ではあっても良かったですね。そうすれば、涙を流す場面で生えますし、魅力的なキャラクターのマリアがより際立ち、主人公にとって大切な存在であると強調できるかと。
(5)総評
作者さんは、
【登場人物の動かし方(役割的な意味で)、ストーリー、世界観の料理の仕方】と【盛り上がる場面の描写】が得意な方なのだと感じました。それはこの物語の確固たる魅力であり、読んでいてワクワク感が心地よかったです。
ですが、逆に、
【世界観や登場人物の所作心情の説明】が苦手な方なのだと感じました。特に1話や2話でそれが顕著ですね。異世界の設定が独特であるが故に、読者にそれを伝えようと、本当に情報だけを明示するせいで、逆に最初で物語に没頭できなくなってしまっています。また、登場人物の所作を会話の合間合間に度々明記する事によって文章のテンポも悪くしてしまっています。
内容や設定は本当に面白い!
ただ、その面白い、作者さんが思っているだろう「ここが盛り上がる!」という展開に行くまでの文章があるせいで、ちょっと読み進めるのが大変。
①漢字にすべきところは漢字にする。
②文章を短くする。
③ぶつ切りな情報だけではなく、時折情緒的な表現も取り入れる。
これらを改善すれば、この作品はもっと良くなっていくと思いますよ!
私からは以上です!
何かありましたら、返信を何なりと。
(URL:https://kakuyomu.jp/users/mitimitinakamiti/news/1177354054885684452)
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