羅梅鳳、掘りを掘る。
意とは心から発する
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武官の校尉内では色々噂がたった。仮設橋のときの
しかし、十万人も集まって宿営しているので、すぐに正確な話しが共有され出した。
”
それ以外誰も考えつかなかった。
”黒豆皇后”はすぐに、”
全ては、結局、
驢馬車と年老いた
陳粋華は、一番おとなしい
同じ文官同士ということで、軍師、尉遅維の近くに常にいることとなった。
輜重隊を切り離しても、北伐軍の進軍速度は卒の歩みに合わせたままだった。
李鐸は卒が疲れるのを嫌った。いや、根っからの
しかし、戦は急がねばならなかった。この行軍はおそすぎた。
もう冬が目の前である。天幕で十万もの大軍が
陳粋華はどうにか、馬の歩を早め
「あのぉ、、」
「なんでしょう」
肌が地黒でちんちくりんの陳粋華にとって、無駄にイケメンの尉遅維を話しをするのは無駄に緊張する。
「あの碁は如何あいなりましたか?ぐず」
「負けました」
「えっ、あんなに軍師殿が優勢だったのに、ぐずぐす」
「ハイ、李鐸殿の脅威の粘りで、、この
恐るべし李鐸である。いや、陳粋華が無理やり打たせたスベりが好手だったのかな。
物見の斥候はもっと先に進んでいるはずだったが、北伐軍の本体は、いよいよぐるっと
北の地平線の彼方に
途端、北伐軍十万全体の空気が重苦しくなった。
当たり前である、今までは、少数の斥候が行方不明になっていたとしても、天下の
敵が見えると、否が応でも戦争をすること自覚させられる。
尉遅維が灰色の
その筒は収縮自在の
そして、その筒を通して
「おかしいですね」
と尉遅維。
「
「見えるんですか」
と陳粋華。
「見ますか?」
「ハイ、宜しければ」
「どうぞ」
筒を手渡された陳粋華は筒を除く。棄明が同教の仙人の術で離れた。
「うわっ」
陳粋華は
「逆です」
見直すと、
「おおっ」
視野は限られるが、遠くが近くに見える。
「
「すごいものですね」
「会族は砂の海を渡って、寒州より渡ってきます。砂の海を渡るときに重宝するのだとか」
さすが、状元(課挙に一番で登第)だ。持っているものが違う。
「
「ハイ」
裸眼でも、棄明の城壁の外にたくさんの天幕が張られているのが見えだした。
大きな
陳粋華の脇を真逆に駆けていく。
総大将の李鐸に連絡に行ったのだ。やがて時を経ずして戦鼓がどーん、どーんと長音が二度鳴った。
全軍停止の合図だ。
「ここらが、限界でしょう。もう一里(400メートル)か二里進むと、十万の数では
そう尉遅維が言った。
李鐸は総大将だが性格か授者としての挟持か派手な鎧は着ていない。質実剛健。本当に真面目な人である。見ていて陳粋華も見習いたいと思うことがたくさんある。
全員下馬しているが、自分で轡を持っている。敵は目の前だ喫緊が感じられる。
斥候隊長の下司軍、
「見たところ、全軍棄明の城外に出ています」
「天幕や、炉の数は?」
「夜にならんとわからんが、ざっと、六千から七千人分程度と見ます」
「数は合うな」
土工隊の司軍、
「攻城戦になるや。と、思ひて材木を運んできたのだが、、」
「わからんぞ。棄明の手前で陣を張らせるための策やもしれぬ」
違う陳粋華の知らない司軍が言った。
尉遅維が言った。
総大将の李鐸はずっと押し黙っている。
「相手はの主力は胡族です。馬を使いたくて仕方がないはず。攻囲戦や攻城戦は望まぬはずです」
「しかし、数では、連中のほうが圧倒的に少ないはずだが」
「援軍のない籠城戦は飢え自滅あるのみ。それぐらい北陽王もわかっていよう」
「やつはもう王を廃された」
「すいません」
「いや、構わん、陣立ては以前決定したとおり、鶴翼の陣で両翼に同数の騎馬隊を配す。
李鐸は全司軍に話させたのちに最後の最後に話した。
「
「
「
「
「
司軍達の複数の
軍議を兼ねた司軍たちの北伐軍最高幹部会議は終わった。
普通、敵が見えると脱走したり逃げ出す卒が出たりするがこの遠征ではほとんどない。なにせ、数は禁軍のほうが十倍多いのである。優勢はこちらである。
卒は棄明での略奪を李鐸が許すかどうかが話題の中心になっている。
しかし、その前に禁軍は夕闇が迫る中、陣立てに合わせて大土木工事に取り掛かった。
正面に馬防柵を造り、その背後に杭を建てた空掘りを掘る。通常土工隊が土塁や馬防柵など制作するのだが、全兵科動員しての大土木工事となった。
もう数里、棄明に向かって進めば矢の届く距離である。それに今この瞬間、敵の騎馬突撃があってもおかしくない。
掘った土を掘りの後ろに盛り上げ土塁にする、それでも土が余る。その土でと真ん中の後方にちょっとした丘を造りそこを総大将、李鐸の本営とする。さらに余った土で最後方に一番見晴らしのいい丘というより小山を十万人で作る。
そこには軍師、尉遅維が陣取る。
陳粋華は改めて十万という数でのありとあらゆる行いが桁外れなのに驚かせれつづけた。
堀は、あっという間に緩ぅーい半円状に掘られていく。胡族の馬が例え馬防柵を越えたり除けても必ずこの堀に落ちる。
堀の縁をてくてく陳粋華が歩ていると、堀の底で人一倍掘っている見かけた人影を見つけた。
「おーい、御同輩」
頭の出血は止まったらしいが、たんこぶが三つ出来て、髷が四つある風に見える。
大喧嘩をして石で殴ったあとで、ちょっと陳粋華は話しにくかったが、この辺体育会系ですぱっとしているところが、羅梅鳳らしい。
「見ろ、ここから、あっちのはしのはしまで、全部オレが掘ったんんだぞ、あの
「勘弁してくだせぇい、
「勘弁してもらいたければ、もっと掘れ」
「へい」
羅梅鳳が掘から登ってきた。
陳粋華が小さい声で誤った。
「ゴメンね。まだ痛い?」
「親父に殴られたときより痛かったけど、もう平気だ。ちょっと表情変えると、痛いけど。とうとう来ちゃたんだな、お前マジでどうなっても知らないぞ、城があるのに外に出てるなんて普通じゃないぞ、あいつら」
「らしいね、ウッチーも不気味だって言ってた。ぐず」
「それより、早く風邪を直せ、もう面倒見てくれる夏侯禄さんいないんだぜ」
「うん、大丈夫、だいたい治りかけ」
「
「うん、書くわ」
「よし。この戦、終わったら、もうひと勝負喧嘩しようぜ、御同輩、負けたままっての嫌だからさ」
こういうのが、体育会系は面倒くさい。なんでもすぐ勝負にしたがる。
「それ、無理だわ」
「勝ち逃げなしだよ」
「お互い、生きてたらね」
陳粋華が憚られるように小さい声でいった。
「そうだな、生きてたらな」
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陳粋華の男性レポ。
イケメン度 在 不在
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