空の光はすべて長門有希

 マーチンゲール法というものをご存知だろうか。

なにやら賭け事における法則で、無学な俺では到底理解も及びつかないものであるのだが、部室に着くやいなや今日はちょっと違った戦略を試してみたい、と言った古泉が採用した理論がこれであったという。

 簡単に長門に説明してもらったところ、マーチンゲール法というのは、賭け事に負けた場合前回の賭け金の2倍を賭ける、という法則に従って賭け続ければ、絶対に負けることはない、という法則であるらしい。そもそも必勝法などが存在したら世のギャンブルはすべて胴元が潰れて存続しているはずがないだろうし、どうも胡散臭い理論である。

 という訳でジュース一本分で始めた俺たちの勝負は古泉が一回戦から27回連続で負け続けたことによって、掛け金は倍々ゲームで13,421,800,000円というとんでもない桁に突入していた。もし古泉に無限の支払い能力があると仮定するならばこれはとんでもないことだ。そして俺の手元にはすでに勝ち分の数十億円が積み上げられている。

 長門は「わかる!経済学の本」という本を黙々と読んでいる。

 それから78回古泉が連続で負け続けたところで、長門が本を閉じたので部活はお開きとなった。

 俺はビルのごとく積み上げられた紙幣を眺めて呆然としていた。

 金というものは、ありすぎるとなんだか何に使えばいいのかわからなくなるものだ。

 ハルヒは「そんなおもちゃのお金邪魔だから明日までに片付けといてよね」と言った。

 そうしてハルヒの願望実現能力によって消滅した大量の日本円によって翌日日本は壊滅的なデフレに陥り、デフレの影響でハルヒは死んだ。



「空の光はすべて長門有希」完

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