第6話
主神を家に招き入れたクロウは、一人暮らし特有の物で溢れた部屋を、とりあえず断りを入れてから素早い動作で片付け、どきまぎしながらお茶を入れてお出しする。
ここまで約3分。我ながら、自己新記録だと思う。
その様子を面白そうに見ていた主神は、クロウが同じく席に着いたのを見計らって声を掛けた。
「ふふ、神力も使わずこの早さで済ませるとは。対した奴だの。…さて、そろそろ落ち着いたか?」
「は、はい。…だいぶ落ち着きました。それで、私に頼みたい事と仰られていましたが、御用件は何でしょうか?」
同じく席に着いて、もてなしがあまり出来ないことを始終心配そうにしていたクロウ。だが、先程のおろおろした雰囲気を感じさせない、しっかりとした顔付きで訊ねてくるクロウに満足したように頷き、主神は今回の要件を話始めた。
「そうだな。その前に、お主は邪神についてどれ程知っておるかの?」
「えっと…邪神様ですか?そうですね、邪神様といえば、僕ら新人の神より遥かに強大なお力を持ち、思慮深く、様々な知識に精通し、己の為さりたいことを全力で実現しようと時には悪と言われようとされる御方です。まぁ…皆、邪神様の事を嫌いますが、僕はその直向きさを尊敬してますね」
クロウの邪神に対して意外に好印象なのに驚く主神。これで蛇蝎のごとく嫌っていたらどうしようかと思っていただけに、何とも嬉しい誤算であった。
「そうか、そうか。お主は邪神を嫌ってはおらなんだか。…良かった。これなら、安心して任せられる」
「はい?」
不思議そうに首を傾げるクロウに嬉しそうに頷きながら、主神は一枚の紙を差し出す。
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