第5話
ひとしきり混乱したクロウだったが、いつまでもこのままという訳にはいかない。というか、手を差し伸べてくれている主神に対していつまでも固まっているなど不敬も甚だしい。
「し、失礼しました!」
疲れているのも忘れ、ばっと飛び上がって胸に両手をクロスさせて当て頭を下げるという、神々式の最高礼を取る。これは、こちらに攻撃の意思はなく、何かあれば直ぐ様自分が盾になるという意思表示だとかなんとか。
「ふむ。楽にしてよいぞ。いきなりの事で驚いたろうしな。すまないの」
「主神様…。」
やはり主神様は御優しい。今、護衛の者が側にいれば、確実に叱責と処罰必須位の事をしている自覚があるだけに、ジーンと来てしまった。
「疲れているところすまないのぅ。少し厄介な問題があってな。お主に手伝ってもらおうと思ったんじゃよ。…まぁ、ここじゃとなんだし、とりあえず家に入れてもらえるかの?」
そんなクロウの様子に苦笑しつつ、主神は立ちあがり家を指差して言った。それに対し、仰天したクロウが慌てて顔を青ざめさせる。
「ええっ!?主神様が、僕の家に!?どうしよ、最近のゴタゴタの所為で家の中、全然片付けてないよ!そんなところに主神様をお迎えするなんて…無理!でも、もう暗くなってきてるし、このまま帰らせるなんてそれこそ失礼だし…そうだね、他に良い場所は無いもんね…仕方ない、のかなぁ?」
ブツブツと独り言を言い、やがて決心がついたのか青ざめてはいるがキリッとした顔で主神に向き合う。
「え、えっと、こんな粗雑なところで宜しければどうぞ御入りください。ですが、何分、家の者は私しかおらず、一人暮らしなもので今は乱雑に物が置いてある状態です。主神様をお出迎えするような準備も出来ておらず…誠に申し訳ありません」
「いやいや、構わんよ。此方がいきなり押し掛けてきたようなものじゃしな。それに、お主も神に成り立てで色々と大変なんじゃろうし、気にするな」
申し訳なさそうにするクロウを慈愛の篭った眼差しで見つつ主神は気楽に言い、それにクロウが感動したのは云うまでもない。
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