第3話 遺骨になった頭部と肉体が残る生きた胴体。

 改めて俺は水鶏奈くいなの頭部が火葬され、遺骨となった状態を拝見した。


 改めて拝見すると彼女の頭部の遺骨は凄く綺麗な状態で残されている。

 細かく割れる訳じゃないが、頭部の骨を丸々残る状態を見て、肉体が残る胴体と改めて比較してみる事にした。


「なぁ、水鶏奈くいなの胴体。」


 すると、水鶏奈くいなの胴体が手袋をした状態で彼女自身の頭部の遺骨をゆっくりと優しく撫でるかの様に優しくした。


水鶏奈くいな…。」


 水鶏奈くいなの胴体は喋るわけでもないので彼女の胴体が幾ら動いても手話をしなければ俺には伝わらない。


 けど、頭のない彼女の胴体の体温は頭があったころより凄く暖かくて癌細胞が生かす余地がない状態まで健康な身体になっている事を考えると、頭部と胴体が離れ離れになってから、彼女の胴体の生命力の強さに改めて思い知らされた。


「耕哉君…。」


水鶏奈くいなの母さん…。」


水鶏奈くいなの胴体はアンタの事が凄く好きみたいだね。」


「そうですね。水鶏奈くいなの母さん。俺は彼女に凄くなつかれると何だか大事にしたいと感じてきてホッとします。」


水鶏奈くいなには弟がいるけど、彼女の弟は小学生だったから凄く泣いていましたよ。耕哉さん。」


「そうだね。俺は高校生だから泣くのを堪えたけど、これが身内で小学生ならきっと頭が死んだら悲しむのは当然だと思いますね。何せ、からだの一部が死んでも身内が悲しむのは変わりないから…。」


 俺は水鶏奈くいなの母さんに話せるだけ話して、詳しい状況を彼女の胴体と共に聞こうと思った。

 そして水鶏奈くいなの身体の一部が亡くなって悲しむのは当然だし、ましてや頭部なら尚更そうなるのも無理もない。


「野町兄ちゃん。」


「どうした?兜太とうた。」


 兜太とうた塚口水鶏奈つかぐち くいなの弟で小学生だ。

 だから、兜太とうたは実の姉である水鶏奈くいなの頭部が死んだ事を未だに受け入れない状況が未だに続いている。


 現に、頭部の死とは裏腹に胴体は未だに残る状況に兜太とうたは現実味がなく受け入れない状況になるのも小学生だから十分にあり得ると感じた。

 だから俺は、兜太とうたに何か言おうと思いながら、彼に話しかけた。


「なぁ、兜太とうた。お前の姉ちゃんの頭が無くなったらお前はどうやって受け入れるんだ。」


「野町兄ちゃん。僕は姉ちゃんの遺影と生きた胴体を見るとどういう状況になのか、頭が混乱して分からないよ。」


「そうか。それで、兜太とうた。今のお前では水鶏奈くいな姉ちゃんの頭部の死を受け入れる事が、年を経る度に受けいれる事が出来ると思うから安心しな。」


 俺は兜太とうたに言える事だけを言い、兜太とうたに彼女の左胸にそっと手を当てる事にした。


兜太とうた。これが水鶏奈くいなの心臓の音だ。よく聞いて、鼓動を確かめるんだ・・・。」


 …ドックン。ドックン。


 頭部がない状態でも鼓動している水鶏奈くいなの心臓の音を、兜太とうたに伝わったのだろうか?


「うん、野町兄ちゃん。確かに僕の右腕から姉ちゃんの生きた心臓の音がして安心してきた。」


「あぁ、水鶏奈くいなの頭部は遺骨になってしまったが、胴体は未だに生きている状態で残っている事は凄く有難い事だと思わないとな。」


「うん、ありがとう。野町兄ちゃん。」


 兜太とうたが次第に元気を取り戻す事が出来た俺は、これから彼女の胴体の様子を感じさせながら、彼を元気にさせようと思った。


「野町さん。ありがとうございます。貴方のお陰で水鶏奈くいなの胴体や兜太とうたを慰めてくれて非常に助かっています。だから、私は、貴方には凄く感謝しております。」


「あぁ、俺が出来る事は非常に限られているが、それでも俺が出来る事なら極力、水鶏奈くいなの胴体を補助してあげようと思うからな。」


「ありがとうございます。野町さん。」


「あぁ…。」


 俺はこうして水鶏奈くいなの胴体とこれからどうやって暮らして行こうかと思いながら、俺は水鶏奈くいなや兜太、更には水鶏奈くいなのお母さんと話しながら、彼女の胴体をどうやって大事に生かして行くか考える事にした。


兜太とうた水鶏奈くいな姉ちゃんが例え、身体だけ生きていてもそれを異常と思わず、受け入れる様にすれば良い。そうすればお前は、凄く幸運を呼び寄せてくるから、水鶏奈くいな姉ちゃんをぞんざいに扱うなよ。」


「うん、ありがとう。耕哉兄ちゃん。」


 俺は兜太とうたにそういいながら、これから水鶏奈くいなの膝枕で、彼女の身体の感触を確かめる事にした。


「なぁ、水鶏奈くいな。お前の膝で膝枕しても良いかな?」


 俺は言葉が喋れない水鶏奈くいなに何か説得しようと思いながら、これから彼女に膝枕の味を楽しませようと思った。


 すると、水鶏奈くいなが手話して俺はその内容を聞き取った。

 どうやら水鶏奈くいなは喋れないけど、聞く耳は持っているようだ。

 頭部はないけど、身体は耳に代わるもので聞いていたから、何よりも安心出来ると俺は思った。


 だから、彼女が胴体だけの存在になったとしても俺は彼女が無事で何よりも安心できたと感じた。


 だから、兜太とうた水鶏奈くいなの母さんにも大事な事が言えたのでこれから俺の父さんや母さんにも彼女の胴体の事をこれから話しておきたいと思った。


 例え、俺の両親から非難されようとも、俺は説得させて見せるから。

 だから、水鶏奈くいな

 俺はお前の頭がなくても大事にしてやるから安心しろ。

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