第4話 教えてリンネちゃん!!

 赤髪ツインテツンデレ顔アネゴ肌な女の子って、何も言わなくても可愛いよね!


 104歳だけどな!!


「さぁ、そんじゃお話しよっか♪リーフたん♡」


 どうしよう敵にボッコボコにされた後にデレられても嬉しくなぁーい。


 しかも相手が、ついさっきまでおんぶして運んでたはずのリンネ婆さん(美少女)。理解が一ミリも追いつかねぇぜ。


「まずはこの辺りについてだけど……その前にアタシだね。」


 リンネさんがしみじみと頷きながら、その大きな瞳をカッ!と見開く。


「アタシはリンネ!この獰猛な霊山バーサーク・マウンテンの主であり、紅蓮灼熱猫オーバーヒート・キャッツの大将さ!……ってのは、つい80年前の話さね。あの頃は私も、いろんな男を引っかけてはブイブイ言わせたもんよ。」


 おお!なんかすごいファンタジーっぽい!あとリンネ婆さんの今が80年前の外見なら、俺は間違いなく引っかけられてた気がする!


 というのは言わないで、ここは黙って年長者の話を聞こうじゃないか。


「……んで、リンネ婆さんは何でこんな山奥に?」


「なんでって、そりゃあここがアタシたちのアジトだからだよ。村にいた全員が団員さ。今じゃもう、しわくちゃだがね。」


 リンネ婆さんは懐かしむように、どぶろくからお猪口に酒を注ぐと、それを一気に飲み干した。


 そういやリンネ婆さん、お酒は大好きだっけ?BBA時代もちょこちょこ飲んでたなぁ。


「ま、街中じゃ住みにくいって事さ。特に王国なんてのは、縛りがきつくてねぇ~。あたしらみたいな自由奔放に、あいつらの威厳はウザかったのさ。」


「へぇ~。……で、なんで若返ったの?」


「知らん。知らねぇし、気にしても仕方ねぇ。アタシは第三の人生を満喫するさ!!今度こそいい男捕まえて、になる夢を叶えるんだ!」


 張り切って拳を掲げるリンネ婆さんは、意外と幼稚園児みたいな夢を抱いていた。ってか独身かよ。こんな美人放っとくとか頭おかしいだろ大昔。


 そして間違っても「じゃあ俺のお嫁さんになってくださいよ」なんて言えない。絶対明日から酒に潰れる毎日が始まる。


「さて……そんで?リーフしゃんはお姫様のところにいくのかい?」


「あ、ああ。お姫様が困ってるなら、助けに行かないと!」


 虚勢を張ると、リンネちゃんはにしし、と笑って見せた。


「よーし!そんじゃ、冒険の始まりだ!頑張れよリーフしゃん!!」


「……あれ?リンネちゃんは来てくれないの?」


「ばっかやろう!!アタシが行ったら全部それで終わっちまうだろうが!こんな時に男見せないでどうするんだよリーフしゃん!」


 えええええええええええええええええええええええええ!!?一緒に来てくれるんじゃねぇのかよ!?さっきまであんなに強そうな肩書き自慢してたのに!?


「さ、そんじゃ説明するぞ。一回しか言わねぇから頭に全部叩き込め!!」


「お、おっす!!」


 気合十分な返事とは裏腹に、俺の口はとっきんとっきんだった。


「この山を真っ直ぐ東に下っていくと、この世界の最も東にある王国「イースタン」にたどり着く。あいつは王城秘伝の脱出兵器、お姫様は王城にいるはずだ。」


「なんでそんなのリンネちゃんが知ってるのさ?」


「昔かっぱらってやったからだよ!!」


 しれっとすげぇことやってんなリンネ婆さん!!


「それはいいのさ。で、このお姫様には直属の部下、「聖騎士」がいる。こいつが強い。マジで強い。出会ったら速攻逃げろ。いいな?」


「逃げられない時は?」


「死んでも逃げるのさ。そのぐらいヤバい。」


 それ以外選択肢ないんですか!?


「最近の聖騎士がどうだったか知れんが……一昔前は、山一つぶった切るバケモノだったぞ。いやー本当に……もうやりたくねぇな。あんなのとは。」


「やりたくないって……リンネちゃん聖騎士と戦ったことがあるのかよ!!」


「ある。だから言える。あいつが相手なら絶対逃げた方が良い。聖騎士なら間違いなくバケモノだ。」


 聖騎士もバケモノだけど、それと互角のリンネ婆さんもバケモノだよ!!


「次に「魔元帥」。こいつらは総じて性格が悪い。そのくせ頭もキレる。気を付けろ、平気で兵士を生贄に魔法を使ってくるからな。」


「マジかよ……めっちゃ外道じゃん……。」


「こいつらは全員女だ。だからすぐわかる。偉そうなローブ着てふんぞり返ってたらそいつだ。ちなみに、これが性格良くなると「聖魔導セイント・パラディン」って言って、意味わからんほど強くなって、意味わからんほどデカパイになる。」


「デカパイの情報要りますか!?」


「ばっかやろう!!もしお姫様の事で困ったらそいつを探して頼れってんだ!!一万年に一人の逸材だからいるかどうかもわからねぇが、ほぼ確定で力になってくれるはずだ!!いいな、デカパイだぞ?アタシの倍はあるからな?覚えとけ!」


「サー!イエッサー!」


 リンネちゃんの倍なら、たぶんスイカ通り越して冬瓜とうがんですね!


「……今エッチな事考えてなかったか?まぁリーフしゃんならいいや。とりあえず、この二人にさえ気を付ければ、お姫様と合流はできるはずだ!頑張れよ!」


 背中をバシバシと叩かれながら激励される。


 が、正直あんまりノリ気じゃない。


「……どうした?不安か?」


「いや……だって俺弱いし。さっきもめっちゃボッコボコだったし。」


「リーフしゃん……。」


 正直に、俺は心のどこかでこういう展開を望んでいたはずだ。だって転生だよ?ちょっとは楽しい人生にしたいじゃない。


 だけどさ、持って来たのはピコピコハンマー、2年と言う歳月を農業に費やした俺が、いきなりお姫様助ける冒険の旅になんて出られると思う?まっすぐ山下りるだけだけど、絶対そうはいかないじゃん?


 またさっきみたいに、すぐやられるのがオチだよなぁ……。


「……仕方ない。アタシは一緒に行ってやれないが、アタシの相棒を貸してやるよ。」


「リンネちゃんの相棒!?マジで!?」


 よっしゃ来たチートアイテム!!これで勝つる!!


 聖騎士と互角にやりあったリンネちゃんの愛刀なら間違いないぜ!!


「ほい。これがアタシの切り札、その名も【灼熱のかぎ爪サラマンドラ・スラッシュ】。大事に使えよ!」


 リンネちゃんから渡された、熱々のオーラを纏った短剣から歴戦の勇を感じる。


「ありがとうリンネちゃん!!大切にするよ!!」


「おう!!さぁ行ってきな!冒険の旅へ!」


「一繋ぎの大悲報を求めて!」


「ワン○ースは存在しねぇけどな。」


「余はまさに!大後悔時代!!」


 こうして俺は、どこか釈然としないお姫様を救う度へ出発したのだった。

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