某大賞、二次落ち。

 居合の如く抜き放ったのは、別の短機関銃。西ドイツの警察に採用されたプレス加工式フレームのワルサーMPK。両手に一丁ずつ構える。大戦と大国に翻弄されながらも脈々と受け継がれたワルサーの情熱が今、現世に蘇るのだ。



 樋熊にも似た背丈の魔物が頭部に三発分の弾丸を受けて絶命し、背中からどうと倒れる。引き金を絞ったのは、一回だけ。一度に三発を撃ち出す機構――三点バーストと呼ばれるシステムを可能としたのは、専用ストックが装着された自動式拳銃、H&K社のVP70だ。グロック式よりも先にプラスチックフレームが採用された銃器だ。三点バーストの反動は強く、実戦には不向き。ただし、それはあくまで人間の範疇だ。ストックを肩に当て、がっちりと外骨格の代わりにすれば心地良い反動である。少なくとも、彼にとっては。


今度は四五ACPを扱う自動式拳銃、パラオードナンスLDA。側面の手動安全装置を解き、グリップを握ることでグリップセーフティも解除する。

 立て続けに四発発砲。内部の特殊機構により、撃鉄を起こさずとも引き金は軽かった。

狭い廊下に亜音速独特の伸びが悪い銃声が響き渡る。


『説明臭いから駄目』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る