chapter 16/?
059. 撤収
地上に上がると、地下採石場の入り口から、かなり離れた森に出た。ラトドさんと合流する為に、地下採石場への入り口へと引き返す。合流後は、四人で野営地に向かうと警備兵さん達に事情を話し、馬車に乗ってワセデイへ戻った。ワセデイに着いた頃にはもう、夜が深くなっていた。
ギルドの前で馬車を降りると、取り敢えず今西をタイナちゃんと外で待たせ、俺とラトドさんで受付に向かう。
ギルドは夜でも機能しているようで、職員さん達は昼勤と夜勤の交代制で、二十四時間ギルドを動かしているらしい。ギルド長は緊急時に備える為、ギルド内に居住区が用意されている。エリタイを退治したと受付に伝えると、すぐに上階からトノバさんが下りて来た。格好が朝から変わっておらず、寝ずに俺達の報告を待っていたと、草臥れた表情で分かる。
「ああアライ様……! ラトドさんも! 皆さんが馬車で移動してくる間に、警備兵からも報告を受けました。よくぞ魔物を……!」
声を震わせて喜ぶトノバさんを、ラトドさんは軽く手を挙げて制する。
「それより今は、地下採石場の掃除だ。捜索隊の遺骨と、魔物の死骸の回収を頼みてえ。俺達の怪我は軽いから、心配は無用だ。捜索隊の生き残り共の回復を早める為にも、殺したエリタイから早急に、
トノバさんは警備兵さん達からの報告に誤りは無いか、ラトドさんと野営地からの伝書を確認すると、すぐに地下採石場へ、清掃と捜索隊の遺骨、エリタイの回収の為に部隊を派遣する準備に向かう。
俺達は取り敢えず、部隊からの報告が上がるまでは街で待機となり、それまでしんとしていたが、慌ただしくなってきたギルドを後にした。外で待っていた二人と合流すると、ラトドさんとタイナちゃんが取っている宿に向かう。
ラトドさんはいびきが煩い、タイナちゃんは寝相が酷いという理由で、二人はそれぞれ別の部屋を取っていた。俺はラトドさんの部屋、今西はタイナちゃんの部屋にお邪魔する事になり、部屋を別れる前に俺は、タイナちゃんにシスターから持たされた霊薬を渡す。
「これ。怪我に使ってくれ」
「えっ。いいんすか?」
タイナちゃんは、目を丸くした。
「うん。俺を助ける時に負っちまった怪我だし」
「そんな気にしなくていいっすよー。持ちつ持たれつっす。まあでも、貰えるものは貰っとくっすね」
タイナちゃんはにししと笑うと、俺の手から霊薬を受け取って、ひらりと身を翻す。その先にある廊下の角を曲がり、取っている部屋へ向かおうとした時、タイナちゃんの後ろにいた今西が振り返った。
「あっ、そうだ荒井君。後でちょっと話さない? お風呂入ってからでいいからさ」
「いいけれど……。疲れてねえの?」
「まあ平気かな。後で部屋に呼びに行くから。マジで緑だから、しっかり洗った方がいいよー。じゃ!」
にへっと今西は笑うと、小走りでタイナちゃんに続いて角を曲がり、すぐに見えなくなる。
「おお……」
取り残された俺は軽く手を挙げたまま、間の抜けた返事をした。
何だか修学旅行みたいな雰囲気だなと、どこか浮かれた事を思う。
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