episode:9【街角に立つ黒ずくめの男】


 ある交差点。ここでは、毎日のように小さな事故から大きな事故まで起きている。


 なぜなのかは分からない。見通しが悪いわけでも、信号機がないわけでもない。それなのに、毎日事故は起き続けている。


「またか……」

「嫌だねぇ。事故ばかりで……」


 近所に住む住民たちは、この交差点を【死神交差点】と呼ぶようになっていた。誰がいつから言い始めたのかは分からない。


 軽い接触事故に遭った者がこんな証言をしていた。


「十字路の左上の角に全身黒ずくめの男が立ってて、たぶん信号待ちしてたんだと思う。俺がバイクで右折した時、まだ赤なのに男が向かって走ってきたんだ。それで避けようとハンドルを切ったら、赤信号で停まっていた右折車のタイヤに突っ込んでしまった……。信号変わるギリギリで横断していたらと思うと恐ろしいよ。右肩の骨折だけじゃすまなかっただろうな……」


 事故に遭った者から同様の証言がいくつも上がった。しかし、どこを探せども男は見つかっていない。手がかりすらもない。


 幽霊か?とも噂されたが、自分達と同じ人のなりをしているという。


 この交差点を通る際は、くれぐれもお気をつけて……。

 角に全身黒ずくめの男が立っていたら、要注意。



街角に立つ黒ずくめの男【完】


 

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