ブウォシチェイェフキ日誌(2月11日)

◯SIG516

 タクティカルカービンコース3日目からはAR系のライフルを使用する。SIGSAUER社が製造するM4ことSIG516である。SIG516はM4のように直接ガスでボルトを動かすストーナー方式ではなく、通常のライフルと同様にガスピストン方式である。ストーナー方式は、ガスピストンがないため軽量化できる利点があるが、作動部品にガスが直接掛かるので汚れやすく作動不良を起こす可能性がある。そのためか、ガスピストン方式を採用している銃が多い。M4系でガスピストン方式を採用している銃で有名なのはHK社のHK416と思うが、ガスピストンのせいか、ハンドガード上部およびアッパーレシーバーが大きくなっており重くなっている。それに比べSIG516はガスピストン方式であるはずなのにM4と同じような形状をしており、HK416よりも軽量である(クリーニング時にSIG516のガスピストンを見たが非常に細くて驚いた)。セレクター(切替金)とグリップ(銃把)はSIG社最新のアサルトライフルであるMCXと同じであった。マガジンはマグプル社のPMAGを使用していた。

 開発経緯を考えてもSIG516の方が優秀であることは間違いないと思うが、米軍特殊部隊に採用されたHK416のほうが知名度があり隠れがちになっている。SIG社としても新型のMCXを推していくのかもしれない。MCXは良いという話を聞いているため、いずれは撃ってみたいものである。


◯タクティカルリロード

 1日目、2日目とAKを使用していたため、操作(安全装置の掛け方etc.)の異なるARに最初は戸惑いつつも基本的な射撃をしていき、AKでは出来なかったタクティカルしぐさをやっていく。例えばスピードリロードであったり、タクティカルリロードなどがそれに当たる。スピードリロードとは、弾を撃ち切ったときにマガジンリリースボタンを押し、マガジンを落として、弾が入っているフレッシュなマガジンを挿入することだ。そしてそのまま射撃を続ける。タクティカルリロードとは、そろそろ弾が無くなりそうだなと思ったら、フレッシュなマガジンを取り出し、フレッシュなマガジンを持った手で弾が無くなりそうなマガジンを握り、マガジンリリースボタンを押して弾が無くなりそうなマガジンを引き抜き、フレッシュなマガジンを挿入する方法をタクティカルリロードという。若い長身のインストラクターがタクティカルリロードの展示をしたが、フレッシュマガジンと弾が無くなりそうなマガジンの位置が平行状態(マガジンを差し込む方向が揃っているやり方:https://www.youtube.com/watch?v=6LH-2Pd6ZDcの0:36からのmethod#2の方法)であった。このやり方は手の大きい人は良いが、小さい手の人には向かない。また練度が高くないとスムーズに出来ない。私は国内のインストラクターから習った方法(マガジンの向きが90度で握るやり方:https://www.youtube.com/watch?v=6LH-2Pd6ZDcの0:09からのmethod#1に近い方法だがさらに安定したやり方)で実施した。小さい手の人間でも無理なく出来、練度が高くなくてもミスなくスムーズに出来るやり方だ。この方法でタクティカルリロードをやっていたら、メインインストラクターがずっと私の方を見ていた。するとメインインストラクターが「2発撃ってからリロードだぞ」という。私は1発撃ってリロードしていたのをインストラクターはちゃんと見てくれていたのだ。弾が余っていたのでインストラクターが「じゃあスピードリロードやって撃ち切ってしまえ」というのでスピードリロードをやって弾を撃ち切った。

 タクティカルリロードが終わると、ルームメイトのイギリス人がタクティカルリロードは難しいという。彼は私と同じぐらいの身長で大柄ではなく手も大きくなかったため、若い長身のインストラクターがやっていたタクティカルリロードはしんどいだろうなと思っていると、大柄なオランダ人が「簡単だろ」といってやってみせる。いや、そりゃ手が大きいから楽に出来るよねと思って眺めていると、メインインストラクターが寄ってきて「それもイマイチだな、こうやるんだ」といって、私がやっていた方法と同じやり方のタクティカルリードをやり出した(!)ちょっと待って、さっき近くで見てたのは安全管理の面ではなくて、私がやってるタクティカルリロードを見るためだったのか?もしかしてスピードリロードをさせたのも何か別のやり方を見るためだったのでは?など訝しんでしまった。私はタクティカルピストルコースで変形SULをしていたし、変わったテクニック見られるかもと思われていた可能性は高い。


◯ちゃんと確認しないと

 タクティカルピストルコースでの最初の座学でも言われていたことだが、インストラクターから「お前ら衣服や装備品に弾か薬莢が入ってないか、ちゃんと確認しろよ。前にな、スペイン人が袖ポケットに弾を入れてマガジンに装弾していたことがあってな。装弾し忘れていた弾が袖に入ったまま空港の金属探知機に引っかかってとんでもないことになったんだ。ポーランドは厳しいからな。色々裁判所に行って大変だったぞ。次は裁判所で会いましょうなんてことはないように」と口酸っぱく言われていた。

 訓練が終わってから、宿舎に入る前にプローンなどで装具や衣服に付いた砂を払っていると、メッシュダンプポーチの網目から眩い輝きが見えた。まさかと思ってダンプポーチをまさぐると薬莢が出てきた。おそらく誰かから排莢された薬莢がインしたんだろうけど戦慄を覚えた。ちょうどメインインストラクターが来たのでその薬莢を渡して回収してもらった。危うく自衛隊のとある部隊のように―(以下検閲削除


◯え?スピーチ?

 すべての課程が修了し、タクティカルピストルコース同様にレクチャールームに集まり、修了書を貰うだけとなった。するとメインインストラクターが、最前席に座っていた訓練生にどうだったと聞きはじめる。え?なにこれ?一人ずつスピーチするの?とゾッとする。そして、後ろの席に座ろうとする控えめな性格でよかったとしみじみ思った。英検3級所持、2級は筆記でギリギリ落ちて、TOEICは300点台をうろつくような英語が全くできない人間にスピーチとかオワタと思いつつ、ひたすら何をいうのか考える。他の訓練生のスピーチとか全然入ってこない。でも断片的にグッドエクスペリエンスとか言ってたのを聞いてそれ採用とか思いつつ必死に文章を考える。そして私の番が回ってきた。

「ここに来るまでは、日本でエアソフト(エアガン)を使って様々な訓練をしてました。セーフティルールなど色々やってきました。今回、実銃を使ったトレーニングは初めてでしたがエアソフトでやってきた訓練が役に立ちました。エアソフトはカジュアルで便利です。ですので、私はエアソフトを買うことをお薦めします。今回は非常に良い経験でした。そして自分の人生の中で最高の時間でした。有難うございました」

 何とか言い切ることができた。エアソフトを薦めたところと最高の時間でしたのところは受けた。よかったよかった。

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