ブウォシチェイェフキ日誌(2月10日)

〇日本で買えるのか?(二回目)

 タクティカルカービンコース2日目、昨日ドライファイアで行ったクロックコードでターンしてからの射撃が一通り完了し休憩時間となった。シューティングレンジからキッチンに向かうと、このコースから参加となった髭を蓄えた陽気なベルギー人が私に話しかける。「それブラックライフルコーヒーじゃねーか」私も忘れていたがチェストリグのチェストパネルにブラックライフルコーヒーカンパニー(以下BRCC)のパッチを付けていた。丁度、同社ロゴ入りのトラベルプレス(コーヒー抽出が可能な魔法瓶)とフリーダムヒューエルブレンドを持っていたので目の前に突き出した。「それ日本で買えるのか?」と数日前と同じ質問をされた。イエスと答えると「おお、マジか。ヨーロッパじゃ売ってねーからな。アメ公、ヨーロッパ嫌いだからよお」とのこと。やっぱりアメリカとヨーロッパとの確執はあるのだろうと思った。


〇痛いんだった、忘れてた

 AKで膝撃ち(ニーリング)や伏せ撃ち(プローン)を実施。プローンの射撃はリコイル(反動)を100パーセント肩で受け止めるため非常に痛い。立射、ニーリング、プローンと各ポジションで2発ずつ撃つことをしたが、プローンは肩が痛い。そういえば、AKを使い慣れていた友人が「プローンは反動を逃がせないから肩痛いんだよ」って言っていたのを思い出した。


〇色んな国の人を教えてみて

 我々のコースを担当するインストラクターは二人いて、メインインストラクターとサポートに長身の若いインストラクターである。若いインストラクターは「レバノン人は旅行気分だ。ハンドガン撃たせても、『え?どこ撃ったの』って感じで、撃った本人も気に留めてない」とのこと。訓練生たちは色々と質問する。ポーランド陸軍は?と聞くとメインインストラクターは「あいつらはブルシット(牛のクソ)だ」と答えた。メインインストラクターは続ける。「バングラディシュはね、あいつら英語は流暢だが何度いっても駄目だった。5回ぐらいいっても『なんでしたっけ?』って返してきた。レバノンはほら、アバアバアバってうるさいし」とのこと。インストラクターも大変だと思った。


〇ピール

 ムーブオンシュート(歩きながらの射撃)が終わると、訓練生たちは縦列に並ばされる。先頭の人間は前方に銃を向け、後ろに並んだ数名はハイレディ(銃口を上空に向けたままの構え)で左手を前の人の左肩に置いて並ぶ。先頭の人間が5発撃ったら最後尾へ行き、2番目の人間が射撃を開始する。先頭の人間が撃ち終わり最後尾向かう際にくるっと回まわるところがリンゴの皮むきに見えることからピール(皮むき)と呼ばれている。このピールの訓練を行った。訓練生たちは「おお、ネイビーシールズみたいだな」などといって並び始める。左手を前の人の左肩に置くとインストラクターがいったが、国内のインストラクターからは『ピールは火力を途切れさせないことが重要なので交代に時間が掛かってはいけない。左手は前の人の左肩に置くのではなく右肩に置く。そうすることによって前の人と密着しやすくなり、銃を構えるとき左手がすぐに銃に届くので素早く射撃ができる。交代する時間を短くすることが出来る』と習っていたので、前の人の右肩を左手で掴み密着した。他の訓練生よりは素早く交代できたはずだ。

 ピールが終わり、デンマーク人と色々話す。先ほどのピールでの手の位置やムーブオンシュートでの足の運び方などについて教えた。その様子を若いインストラクターがずっと見ていた。


〇アッラーが間違えたんだ

 訓練も終わりに近づいてきたころ、腹部の調子が急に悪くなってきたが、休憩時間にトイレに行って少し楽になった。訓練が終わりAKのクリーニングが終わるところまでは問題なかったが、インストラクターが武器を武器庫に返却している間の待機中にとうとう臨界点を迎えトイレに駆け込んだ。急に来たな…、小林源文作品なら『魔女のばあさんの呪いだ』とかになるが…まぁ昨日のタクティカルディナーで肉食い過ぎたからかななどと考えながら用を足した。トイレから出ると武器庫への返却が終わったらしく訓練生たちは野外に出ていた。すると髭を蓄えた陽気なベルギー人が「お前、さっきトイレに行ってたか?」と聞いてきた。そうだと答えると「まぁ、日本とは食い物違うから仕方ねーよな」と笑いながらいう。武器庫は頑丈なレンガ造りで密閉性が高く、トイレの扉は足元と天井側はあいており、ご丁寧にドアには覗き窓まである。どうやら用を足しているときの豪快な炸裂音が相当響いていたらしい。私はすかさず「待て、アッラーが間違えたんだ。昨日見ただろう?レバノン人がポークを食おうとしているのを。それでアッラーは怒ったんだ。アッラーはレバノン人たちに天罰を下すつもりが私に下したんだ」と言ったら受けた。

 腹を下したおかげで訓練生たちと大分打ち解けることが出来た。不幸中の幸いである。ベルギー人もなんだかんだで、薬持ってるかと心配してくれたし、ルームメイトのセルビア人も心配してくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る