第4話 地獄からの地獄。

僕は気づいていなかった。

彼女は、『僕』を溶かし「僕」としたてようとしているのに。

いや、気づいてた。かも知れない。

ただ、梅雨特有の雨の悲しさと寂しさとうれしさを混ぜた匂いが空気を覆い、僕らはだらける事を覚え始めた。


「なぁ、坂田さ、今日暇?」

「もちろんさ。なにする?」

「ゲーセン行かね?」

「いいよ!でも、バイトだから放課後電話してからでいい?」

「バイトとかしてんの!?スッゲー俺には絶対無理だわー。」

「そんな少しコツがいるだけだよ。」

「へぇー。」




「授業始めんぞー。」

「はーい。」

「にっちょーくー」

「きりーつ。きょうつけー。礼。」

「「おねがいしまーす」」

「はーい。じゃあ、教科書30ページな。じゃあ、福田読み上げてくれ。」

「あ、、は、、、は、い。え、えっと、伊達政宗は、、、」

「おーい。今英語の授業だぞー。ねぼけちゃってるー?」

「す、すみません。」

「じゃあ、いいや。坂田同じとこ。」

「はーい。完了形には、過去完了、現在完了、未来完了、過去完了進行形、現在完了進行形、未来完了進行形があり、いろんな場面で用いられている...」





「ねぇ、坂田君さ、一緒に面白いことしない?」

「は?」

授業が終わった後に木崎さんが僕に言って来た一言。

意味が分からなすぎた。

面白いこととは?

基準は?



「だーかーらー、一緒に福田君いじり始めよーよ。」

「あー、そーゆーこと。」

「そーゆーこと。ねぇ、やろ?そうだ、神田くんも一緒にやろー?」

「おいおい。そんなに無邪気に誘われたら断れねーじゃん。」

「やったー!じゃあさ、放課後教室に残っててね!絶対だよ?」

「分かった。ゲーセンは今度な、坂田。」

「そーだなー。ま、こっちの方が面白そうだし。いいんじゃね?」




「ねぇ、ねむちゃん何話してるのー?」

「えー?秘密のデートのはなしー。めぐちゃんも来るー?」

「いいのー?行きたーい!」

「もちろんだよ!じゃあ、また、放課後ね!」

「うん!」




「ねぇ、かっと、『秘密のデート』ってなんのこと?」

「は?あぁ、福田をいじろって話。」

「なーんだ。予想通りかよー。おもんなー」

「すみませんねー」

「ほんとだよー」




「なぁ、坂田さ、お前手塚と仲いいよな?なんで?」

「あ?あぁ。家横。腐れ縁以上。」

「へぇー。ほんとにそれだけ?」

「なに?お前好きなの?めーぐー。こいつが話あるってよー。」

「お、おい。」

「なーにー?神田君も放課後デート行くの?」

「ん?あ、あぁ、行くよ。」

「そーなんだー!ってかさ、かっと、今日バイトじゃないの?」

「そーだよ?電話するからいいの。」

「あーまた、そんな事言って!前のバイトでも休み過ぎだって怒られてクビになってるのに!」

「それは今関係ねーだろ!ばらすなよ!バカ!」


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