第2話 僕にだって、君にだって飽きはくる
「新入生のみなさん、おはよう。入学おめでとう。今年一年間担任で、社会科担当の海藤だ。さて、恒例行事はさっさと終わらせるに限るので、そうだな、1番と30番じゃんけん。勝った方から自己紹介。」
時間は全然余ってしまって、僕らは退屈だった。
木崎さんが立ち上がって、こんなことを言うまでは。
「そうだ。リアル鬼ごっこしようよ。」
当時、バカ売れした小説、『リアル鬼ごっこ』はどんどん人が殺されていく。
それをまねして、当時の暇で、刺激が欲しかった10代は、リアル鬼ごっこと言って、「鬼」が1日交代で変わるゲームを考案した。ルールは、各自追加していって、とても平凡なものから過激なものまでバラエティーに富んだゲームだった。
誰からともなく、同調の声が上がると、そこからゲームは始まっていた。でも、誰一人、僕でさえ、木崎さんの本当の目的を気づかなかった。
そう、これはただの『ゲーム』ではなく、小さな問題を起こすレバーでしかなかった。
その日は、ルール決めで終わった。
ルールは簡単。
1つ、『鬼』は一日交代とする。
2つ、『鬼』は放課後、黒板のまえで交代する。
3つ、『鬼』に捕まった人は2日間、捕まえた『鬼』に服属する。
4つ、『鬼』は捕まえた人に対し犯罪行為の助長また、強要をしてはならない。
5つ、以上のルールを破った者また、そのことの隠蔽に手を貸した者にはその都度、罰則が与えられる。この罰則は当日の『鬼』に決定権が属するものとする。
簡単さ。僕らは一日『鬼』から逃げる。
『鬼』は一日僕らを追いかける。
そう、思ったのはつかの間、1ヶ月が過ぎようとした頃、最初の事件は起きた。
その日の鬼は、木崎さんだった。
そして、その日捕まったのは小日向けんと君、小向ひなたさん、そして、日向ひゅうご君だった。
男2人と、女1人。この状況で周りは木崎さんを囃し立てた。
でも、木崎さんは、思いもよらないことを言った。
「ねぇ、このゲーム飽きて来たからさ、小日向君と、小向さんと、日向君でさ、次のゲームを決めてよ。」
「でも、どうやってだよ。」
「日向君、それは君が決める事だよ。だって、これが僕の『お願い』なんだから、さ。」
「で、でも、木崎さん、私達はこのゲームを続けたいわ。」
「あ、ルール破りがひとーり。罰則規定は僕が決定できるんだよね?」
「ま、そうだね。」
「じゃあさ、みんな櫻井さん、小向さんと喋るの1週間禁止ねー。」
「お、おう。」
これがきっかけだった。
次のゲームでも、イジメまがいな罰則規定が課されていった。
そして、誰もが逆らえなかった。
自分も巻き込まれたくないから。
どこかで聞いた。イジメが蔓延する根本的な理由は、「自分も巻き込まれたくない。」「彼らが悪い。」そんな自己保身の言葉。
ここでも、またイジメは広がっていく。
感染の歯止めが効かないウィルスみたいに。
でも、僕らは、無関心だった。
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