第2話 時に少女は危険な発言をする
「あ、いや、これはだな…。そう、この手紙が、香月の机から落ちてきてだな、拾ったんだ。それだけだ。」
俺はテンパりながらも、香月の目を見て(殆ど見えないが)諭すように告げた。
「……………。」
香月は何も言わずにただ俺を睨みつける。
「本当にただそれだけだぞ?」
「なら神無月君は手紙の中身を読んでいないのね?」
「あ、あぁ、読んでない。」
「じゃあ、何故、手紙の封が破られているのかしら?」
やばい、完璧超人天才であるこの俺が馬鹿でも分かるような嘘をついてしまった。
いくらテンパっていると言ってもこれはあまりにもひどすぎる。
(くっ、正直に答えるしかないか。)
「わりぃ、今のは嘘だ。本当は手紙の中身読んじまったんだ。勝手に見たのは本当に悪いと思ってる。ごめん。でも、1つ確認したいことがある。この手紙をなんでお前が持って…」
「私が香響院 春姫だからよ。」
俺の言葉に被せるようにして香月がそう告げた。
そうかもしれないと思っていたとはいえ、あまりに直球過ぎる物言いにたじろぐ俺。
「まじかよ…。まさか、香響院先生が現役JKで、しかも俺のクラスに転校してくるなんて…。」
俺はまだ現実を受け入れられずに小さな声で呟く。
そして、そんな俺を見て香月が一言。
「貴方、私の次作のラブコメの主人公のモデルになりなさい。」
……………今、なんと?
「おせぇな、香月のやつ。」
衝撃的な「香月、実は天才ラノベ作家、香響院春姫でした!」事件から2日後の土曜日。
あの後、意味の分からない発言をした香月は俺に2日後の土曜日、朝の10時に駅前の本屋に来ること。と、それだけ告げてとっとと帰ってしまった。
次の日に、その真意を聞こうと思ったが、今まで無遅刻無欠席だった香月はその日に限って休み。
仕方なく俺は言われたとおり、駅前の本屋に来ていた。
と言っても時刻は既に11時過ぎ。
(自分から呼び出しておいて遅刻ってどういうことだよ…。)
俺の香月に対する見方は憧れのラノベ作家に対してというより、未だに、普通にクラスメイトに対して、という今までと変わらないものだ。
そりゃそうだろう、いきなりあんな衝撃的なこと言われても理解が追いつかない。
それに、まだ殆ど何も聞けていない。
(でも、あいつが香響院先生だという可能性は普通に高いんだよな…。)
そもそもあの手紙を持っている時点でその可能性は大いにある。
だが、もしかしたら、香月の姉が香響院先生で、なんとなくファンレターが気になって姉から貸してもらった
………なんてことは考えにくいか…。
と色々と思案していると後ろから声をかけられた。
「待たせたわね、神無月君。」
俺はその声にハッとなり、後ろを振り向く。
すると、そこにいたのは香月
…………ではなく、綺麗な黒髪ロングの超絶美少女だった。
「えっと……どちら様でしょうか?」
「……貴方は2日前に会話したクラスメイトの顔も覚えられないの?本当に低能ね。いっそ、一度死んで生まれ変わって、烏にでもなったほうが、まだマシになるのではなくて?」
その美少女は穏やかな表情で凄まじい毒舌をはいてきた。
「えっと……ま、まさか、香月……さん?」
「見れば分かるでしょ、このゴミクズ。」
「いや、分かんねぇよ!?」
これが…この美少女が香月?!
いやいやいやいやいや、あり得ないだろう!?
確かにいつも前髪で目が隠れているとはいえ、ヘアピンで前髪を留めただけで、目が見えるようになったってそれだけで…。
ここまで美少女になるか!?
「あら、その顔は、『香月ってこんなに超絶ウルトラスーパー美少女だったっけ!?』とでも言いたそうな顔ね。」
「その通りだよ!お前、本当に香月なのか!?」
「えぇ、そうよ。私が香月 遥歌よ。というかさっきから獲物を見つけた時のプロ痴漢師みたいな顔するのやめてくれる?」
「俺、そんな顔してますかね!?て言うかお前こそさっきから毒舌酷すぎんだろ!」
「あぁ、ごめんなさい。これは私なりのコミュニケーションの取り方なのよ。別に悪気があって言っているわけではないの。だから許してほしい、超絶変態テクのプロ痴漢師さん。」
「さっきより酷くなってますけど!?」
「まぁ、冗談はここまでにして、早速行きましょう。」
「行くって、どこにだよ?」
「勘違いしないでほしいのだけれど、今日は貴方が毎日イッてる天国ではなくて、本屋に行くのよ。」
「やめろ、その言い方!毎日はイッてねぇよ!!」
「じゃあ週に何回イッてるの?」
「そうだな、大体週に2、3回…って何言わせてんだお前!!!」
「なるほど。では、行きましょう、早漏君。」
「今、なんて!?!?」
一体なんなんだよこいつ…。
というか下ネタと毒舌多すぎるだろ…。
俺は言いようのない不安に押しつぶされながらも、香月と共に本屋へと入っていったのだった。
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