水の惑星・アーウォース
アーウォース侵略作戦・序章
第27話 第一期生の少女
【地球:中央都市軍基地:同期施設】
《水の惑星・アーウォースへ》
第三期生に今回の侵略する惑星についての資料が配られてから2日後。
「いよいよですね」
「そうだな。 今回の侵略作戦、絶対成功させるぞ!!」
話しているのは玲一と怜雄。この2人は、この前の戦闘訓練後に仲がより深まったそうで、毎日のように共に訓練をしていた。これも戦闘訓練で、怜雄が玲一のことを認めたことがあったからであろう。
「ねぇねぇ梨花ちゃん。 あの専用機の調子はどうなの??」
「んー、何とも言い難いけど結構じゃじゃ馬よ。 気が付いたら敵さん全員倒してるかも」
「え~!! それはずるいよ~」
美大と梨花は女の子同士ということもあり、仲がより深まっているように見えた。彼女らについては正直今まで何をしていたか分からない。部屋も違えば訓練施設を利用する時間帯も違ったためだ。
「(それに加え俺は……。 未だあの触手を上手くコントロールすることはできないままだ。 これのままじゃみんなに迷惑をかけてしまうかもしれないな……)」
そんな浮かない顔をしていると、いつの間にか槐の前にいたミカが話しかけてくる。
「まだ自信ないの~、槐君~??」
「わっ!! ミカさん!!」
「そんなに驚かなくてもいいのに、失礼しちゃうわ~」
半分からかったように頬に手を当てながら困ったような顔をする。ミカが心配するのも、昨日で付きっ切りで訓練に付き合ってくれていたからだ。
すると、ミカの存在に気が付いた美大が、梨花との会話を後にし駆け寄ってくる。
「ママいつきたの~?? ……ってその子誰??」
美大がミカの後ろにいた少女に気が付き、鋭い目つきで少女を睨む。そして、そんな娘の嫉妬交じりの顔をみたミカが、満面の笑みで答える。
「私の隠し子よ~☆」
その言葉を聞いたミカの後ろにいた少女が慌ててミカの前に飛び出す。その少女は、背が低く140cmもないぐらいで、茶色の長髪に髪と同じ色の瞳、それに加え今時かけている人が少ない丸眼鏡をかけていた。
「ななな、何言ってんのミカ!! 私はあんたの子になった覚えはないぞ!!」
「冗談よ、ジョ・ウ・ダ・ン♪」
「だからミカは嫌なんだ。 撫子呼んで来い!! なーでーしーこー!!」
「ふふっ可愛い♪」
「話聞いてんのかこいつ……」
ミカに対し堂々とタメ口をつく少女を前に、第三期生一同は唖然とする。
「んあ?? 何見てんだよヒヨッコ」
「え、あ、ごめんなさい」
ずっとその少女のことをガン見していた槐に急にやじが飛ぶ。そして、態度が大きく、ミカと対等に話している少女の方が自分より上の存在だと認識して謝る。
その少女は、ミカと一悶着し終えると皆が茫然とする中、早歩きで施設の奥の方へ向かった。そこには、心身同期型戦闘装備があり、どうやら彼女も自分らと同じ侵略者側の人間の様だ。
「おい、ヒヨッコ共何してんだ。 さっさと準備しろよな」
「その前に嬢ちゃんは誰なんだ」
怜雄が放ったその言葉が機に召さなかったのか、その少女の額に青筋が浮き上がる。そして、装着しかけていた心身同期型戦闘装備を置き、怜雄の前に立ち、指を指す。
「いいか筋肉マッチョ……私は嬢ちゃんじゃない。 言っておくが、私はあんたらよりも年上だし、今回の作戦の見さ―――」
すると、ミカが急いで怜雄と少女の間に入り、少女を落ち着かせる。その少女は機嫌こそ直ってはいなかったが、ミカが慌てて説明をすると再び心身同期型戦闘装備の装着に戻った。
ミカは、ため息をつきながら第三期生の方に向くと少女について説明する。
「私の後ろにいる少女は、
「第一期生……?!!」
怜雄が静かにだが第一期生という単語に反応し、冷や汗をかいている。さっきの綸大先輩との会話のことであろう。初対面とはいえ、失礼なことをしてしまったことに後悔しているようだ。
ミカは謝りながらも説明を再開する。
「急な話でごめんなさい。 彼女は今回の侵略作戦に同伴し、協力してくれる存在よ。 詳しい話は向こうで彼女がしてくれるはずだから、そっちで聞いてね!!」
ミカの後ろを見ると、もう綸大先輩は同期を始めており、体が宙に浮き始めていた。
すると、嫌味の様に呆れた声で玲一が一言放つ。
「ミカさん毎度毎度、サプライズが多いですね~」
いつもは突っかかるミカだったが、今回の件については本当に急な事だったようで、何も言ってこない。だけど、冷たい微笑みだけは玲一に向けていた。
そして、第三期生の各々は、まだ着慣れない心身同期型戦闘装備を研究員たちに着けてもらい、一斉に同期を開始し浮遊状態になる。
「みんな健闘を祈るわ」
そのミカの言葉を最後に第三期生は、水の惑星・アーウォースにある自分の専用機へと同期した。
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