第26話 心身同期型戦闘機:専用機体~その3~

【地球:中央都市軍基地:開発部門】

《研究所》


「最後の機体は槐君。 君のものよ」


 ミカがそういうと一番奥にある機体を指さした。

 そこにあったのは今までとは変わった機体で、真っ黒い機体の腰あたりから白と黒が交互に混じった模様をした4つの触手のようなものが生えていた。


「な、なんだこれは……」


 あまりの異形さに声に出てしまう槐。その機体から生えていた触手は1本あたり2mはある大きさで、先端は手の形をしていたり、電子プラグのような形をしていたりと様々な形をしていた。

 するとミカは咳ばらいをし、説明を始めた。


「槐君。 君はとても特殊な能力故にこちらでも試行錯誤して機体を一から設計し、開発したわ。 それで、取り付けられたのがあの4本の新たな腕。 あなたに足りなかったのは長いリーチと、手の数。 その結果があれよ。」

「あんなものどうやって動かせば……?? 僕には触手や尻尾なんてものは生えてないですよ??」


 槐たち第三期生が扱う心身同期型戦闘機はその名の通り、全身を同期させるものであり、それ以外の機能については同期をしていない。


「その点については問題ないわ。 心身の同期……つまりは身体ではなく心。 心で思った通りに動かせるはずよ。 美大、あなたは創造主の能力を展開する際にどうやっているのかしら??」


 突然話を振られ少し考える美大。だけど、いくら考えても分からないようで、頭が左右に揺れ、傾けたまま止まる。


「う~ん。 何となく?? 私ったら感覚でやっちゃうことあるから~えへへ☆」

「それでも多少はイメージしたり、あっちに向けるぞ~みたいなことは思うでしょう??」

「あ、うん。 それはよくするかな」


 流石、美大の母。フォローが美大に分かりやすいようにしている。


「美大もそうなように、能力を展開するような感覚に近いわね。 まあ、そんなに深く考えずに徐々に慣れていけばいいわ。 そうすると自ずと自分の腕の様に動かせるようになると思うから。」

「分かりました!! 頑張ってみます」

「あぁ、それと4本の腕の先端はちょっと工夫がしてあるから、実戦でのお楽しみよ☆」

「は……はぁ……」

 

 お楽しみと言われても教えてくれればいいのにと思いつつ、槐は自分の機体が今後どのような動きをするのか楽しみだった。

 そして、ミカがすべての機体の説明が終わり、第三期生を一旦解散させる。


「は~い!! それじゃあ今日の楽しい楽しい専用機のお披露目はここまで~☆ ここからは各自解散ってことで、まだ自分の機体が見たいっていう人はここに残ってもいいし、帰る人は一緒に私と帰りましょ~う」

「も~、ママ。 キャラ変わりすぎ」


 さっきまで丁寧に説明をしてくれたミカさんはいったいどこに行ったのか、仕事が終わると素に戻るタイプなのだろう。

 結局、誰も研究所には残ろうとはせずにミカと一緒に研究所を出るのであった。


◇ ◆ ◇


【地球:中央都市軍基地】

《槐の部屋》


 専用機のお披露目があった日から次の日。槐のもとに紙でたくさんの資料が悪られてきた。それに軽く目を通すと、これから第三期生が侵略をしに向かう惑星“アーウォース”の詳細に加え、出撃命令書が添付されていた。

 それによると、出撃は2日後の明朝。それまでに各自準備と、専用機による基礎訓練を済まし、を考えてこいとのことだった。


「侵略案……って。 んっ?? これは……!!?」


 侵略案を任せてくることにも驚いたが、それ以上に驚くべきことが資料の中にあった。それは、水の惑星・アーウォースに人に近い生命体が多くいることだった。

 全く予想していない訳ではなかったが、生命体がいる星となるとどうしたものか。

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