第25話 心身同期型戦闘機:専用機体~その2~

【地球:中央都市軍基地:開発部門】

《研究所》


 美大の機体の説明が終わり、次の機体の説明に入るミカ。

 次を指さした機体は、暗い青色と白を基調とし、人型という点では美大と形は変わらないが、目の所が歪だった。それはアイマスクというよりは、一昔に戦闘用で使われていた視界を拡張させる機械の様で、蜘蛛の目の様にいくつも赤い目があった。

 それだけでなく、その機体の横には人の伸長を超すほどの大きなスナイパーライフルがあった。それに、銃身の下にはブレードが付いており、近遠両方に対応できる形に改良されていた。


「この機体は、玲一君のものね。 戦闘訓練のデータを基に、こちらで分析した結果遠距離で戦うことを想定して作られているわ。 それにいざっていう時のために、銃が剣の代わりになるように工夫も施してる」


 すると、玲一がミカに自分の目のことに関して質問する。


「あの~……。 複数も目があるのは何ですか??」

「あれは、あなたの能力に合わせて色んな機能が盛り込まれている特注品よっ☆ 例えば、観察者の能力を展開させると、複数の場面を同時に見れたりとか、暗い中・明るい中での狙撃時に抵抗なしで見れたり、スコープの代わりとなったり…。 まあたくさんあるから実戦で試してみることね!!」

「す、すごい!! でも慣れるまで時間がかかりそうですね」

「それはどの機体も同じことよ。 フフッ♪」


 槐は玲一の機体の性能を聞き、どうせならみんなの機体にも付けてくれればいいのにと考えるが、特注で作っているので、予算的にも厳しいのだろうと察する。

 そして、ミカは玲一に向けた微笑みをやめると、資料を確認しながら次の機体の説明に入る。


「え~っと~、次の機体は……。 あったあった、怜雄君のね!!」


 そこにあったのは紫色と白を基調とし、今の怜雄と全く変わらない体型をした機体だった。みんなが見てこれだけはすぐに怜雄のだと判別できたであろうその機体は、攻撃面に特化した機体というよりは、防御面に特化した機体見えた。

 なぜなら、いたる所にシールドのようなものが付いており、まるで中世の甲冑ともいえるものだったからだ。


「怜雄君のは、一見防御に徹している機体に見えるけど、実は攻撃面もすごいのよ~。 あなた達も戦闘訓練で遭遇した重装甲の獣型がいたでしょ?? イメージとしては、それに攻撃速度と威力が増した感じよ。 機体の中にいくつもの細かなブーストとバネのようなものが入っているの」

「なるほど、それでこの機体か。 面白い。 暴れ甲斐がありそうだな!!」


 ミカが怜雄にグイっと近づき、また冷たい微笑みを浮かべ念を押す。


「あなたはサポート兼攻撃種でしょ~。 先にやられちゃダ・メ・よ☆」

「う、うむ……」


 その笑みを間近でみた怜雄は一歩下がり、冷や汗をかく。戦闘訓練で全員の支援をすると決めたことを、自分でも分かっており、立場を理解しているからこそ何も言えないのだ。


「分かればよし!!」


 ミカの冷たい笑みが、本物の笑みに変わり、怜雄はホッとする。

 そして、怜雄から離れたミカは、次の機体の説明に入る。


「次は梨花ちゃんのね」


 怜雄の機体の隣をみると、そこには黒を基調としたスマートな体系の機体があった。他の機体と違うところは主に足だ。

 手は普通に人の手の形をしているのだが、足は脛の途中からなく、鋭くとがった剣の形をしている。梨花は主に刃物や守護者の盾を使用した速度重視の攻撃を使用するためであろう。

 すると梨花は、この足のことに疑問を抱き、ミカへ質問をする。


「足がないようですけど、ちゃんと立てるのかしら??」

「その点はご心配なく!! 反重力でちゃんと浮けます。 でもその機関をやられちゃうと浮けなくなり、立ちにくくなるから注意してくださいねっ☆」


 ウィンクを梨花に向けて投げるものの、軽々しく梨花は避ける動作をする。それを見たミカが残念がるが、すぐに立ち直る。


「梨花ちゃんの機体の説明としては、高機動力を活かすために反重力の力を応用し、スムーズに移動・攻撃ができるようになっているわ。 それに浮いている足も剣になっているから上手く活用してもらえると、作ったこちら側としては幸いね。 本当に大変だったんだから!! この機体だけでもういくらかかったか……」

「(なら作らなければいいのに……)」


 そう思った槐だったが、落ち込んでいるミカを見て追い打ちをかけるよな真似は避けるべきだと思い心の奥底に閉まった。

 梨花に関しては、足を使えると聞き、弧を描くようにくるくる回りイメージトレーニングをしている。だんだんそれに慣れてくると、威力のある蹴りを繰り返し始めた。


「梨花ちゃ~ん。 ここは研究所で危ないのでトレーニングは後からにしてね~……」

「あ、すみません。 私ったらつい」


 顔を赤らめるその姿は可愛らしい少女そのものだったが、戦闘になると狂人のような姿になるのだと思うと、少し残念だ。前回までの機体とは違い、今回は顔があるので、実戦で拝むことになると今からでも怖い。

 そして、梨花がみんなの近くに戻るとミカは、最後の機体の説明に入る。

 そう、それは槐の機体についてのことだった。

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