第20話 覚醒と2つの脅威

【火星:訓練施設】

《戦闘訓練:槐・玲一》


 獣型は玲一に向かい振りかぶった左腕を縦に振り下ろす。だが玲一はそれをいとも簡単に避け、ライフルで1発左肩と胴体との駆動部分に撃ち込む。

 すると、右腕が壊れた時のように爆発する。


 「やはり」


 槐は目の前で起きていることが理解できず立ち止まる。本能で、自分がどうにかできるものではないと察したからだ。

 そして、急激に変わった玲一に質問を投げかける。


 「玲一君。 君、能力に変化が??」

 「はい。 この獣型の全て、いや……。

  を見れるようになりました」

 

 玲一は、未だ動きを止めない獣型に対し、1発1発確実に弱点となる部分を射止め始める。

 獣型も必死に抵抗し、脚や牙を使い攻撃を仕掛けてくるが玲一には一向に当たらない。


 「両足もらいです!!」


 大きく空振りした獣型の後ろをとった玲一は、膝の部分を後ろから1発づつ撃ち込む。すると、獣型の膝は無残にもライフルの弾を貫通し、曲げることは愚か、立ち上がれないほどの損傷を与える。

 すると、聞きなれた声が聞こえた。


 「おーい!! 槐くん大丈夫~??」

 

 それは美大の声だった。槐が後ろを振り返ると3人が光速でこちらに移動してきているのが見えた。


 「大丈夫だけど、そっちは終わったの??」

 「とっくの前に終わりましたよ」

 

 そう即答するのは梨花だった。3人が槐の所に着くと、銃弾でいたるところを撃たれ倒れている獣型を見て驚く。


 「これ、玲一がやったのか」

 「そうですよ。 彼、能力がしたみたいで」


 怜雄が再び驚き、玲一に駆け寄る。すると、怜雄は玲一の背中を思いっきり叩き、功績を称えた。

 

 「やるじゃねぇか玲一!! 男として見直したぜ」

 「えへへ、とんでもないです」


 満更でもなさそうに答える玲一を見て、一同は安心する。後から来た3人は玲一の能力の覚醒について、何か聞きたいようだったが、まずは獣型の処理に入る。


 「玲一。 お前の獲物だ。 さっさと仕留めちまえ」

 「はいっ!!」

 

 玲一は、獣型を凝視し、俯けになった獣型の後ろに移動し、ライフルから小型ナイフに得物を切り替える。

 獣型の首の付け根にゆっくりと一刺し入れると、獣型は静かに機能を停止した。


 「残り2機。撃破者・真道 玲一」


 近衛先輩のアナウンスが流れ一同は勝利を確信する。そして、美大は玲一に駆け寄り、質問攻めにする。


 「ねぇねぇ玲一君!! どうやって倒したの?? 覚醒ってどんな感じなの??」

 「え、えぇ~っと……」


 動揺する玲一を誰も助けようとはせず、温かい目で見る。玲一は深呼吸し、その場で観測者の能力の覚醒について語りだす。


 「まず、この獣型に当たったら死ぬような攻撃を受けそうになった時に、間違って能力を全開で展開しちゃったんです。

  そしたら、頭の中に色んなデータが流れてきて、映像を通し可視化できるようになってまして…。」

 「可視化!! すごいじゃ~ん☆」

 

 話を遮るように美大が褒めると、玲一は焦る。すると、怜雄が咳ばらいをし、続きの話をするように催促する。


 「可視化できるものは、相手の情報や攻撃の予測位置・軌道など全て先読みすることができたので、あとはそれを躱してライフルで攻撃しただけです」

 「なら止めを刺した時は、どうしてそこで機能が停止するってわかったの??」

 

 美大が疑問を投げかけると、玲一は困ったように考え始める。


 「なんででしょうね……。 可視化されていた訳でもないのですが、そこは感覚でやってました」

 「恐らく流れてきた情報のどこかにあったのだろう」

 

 怜雄が素早く指摘する。すると、今まで黙っていた梨花が動き出し、空を見上げる。すると、そこには2つの黒い影が振ってくるのが見えた。


 「奴らが来るわ」

 

 梨花の重々しい声を聞くと、4人は同時に空を見上げ、彼らも黒い2つの影を確認する。

 

 「奴って……まさか……」


 槐は最悪の事態のことを考える。そのまさかだとしても、どうやって侵略の円陣を突破してきたというのか。槐には理解不能だった。

 すると梨花が、想像していた通りの答えを言う。


 「そのまさかよ。 二刀流と女形の獣型が来た」

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