第19話 観測者のもう一つの能力

【火星:訓練施設】

《戦闘訓練:槐・玲一》


 3人と別れた槐と玲一は、最初に戦った時と同じ型の獣型のもとへ走っていた。


 「もうすぐ奴の所に着きます」

 「了解。んじゃ、前と同じように戦ってみようか。

  今度はちゃんと相手の駆動部分を狙ってね」


 今回は玲一がちゃんと支援種としても活躍できるよう動く為、玲一の精密な射撃が必要とされる。それができないと、槐の方が負担が大きくなり侵略する隙がなくなりやられてしまう。

 そして、2人は獣型を目視する距離まで近づくと攻撃を始めた。


 「脚を狙います」


 玲一はそう槐に告げると、足を中心とし、ライフルを放った。玲一の射撃センスは思ったよりも高く、撃って戦う度に制度を増しているようで、今回はほとんどが命中した。だが、相手を怯ませるほどではなかった。

 獣型のヘイトが玲一に向くと、槐はすかさず後ろを取り、侵略を開始する。


 「侵略っ」


 右腕を伸ばし、脅威となる尻尾の直接侵略にかかる。梨花の光源の能力の付与のおかげかすんなり獣型に届き、尻尾の動きを封じる。


 「OK!! 尻尾は何とかいけた」


 槐は獣型が右腕を振りかぶるのを見ると、透かさず退避する。獣型の攻撃は空振りし、大きく隙ができた。

 玲一はその瞬間を見逃さず、振りかぶった右腕と体の隙間を単発射撃で狙い撃ちする。


 「当たった!!」


 玲一は上手く駆動部分を破壊し、獣型の腕の付け根で小さな爆発を起こす。

 獣型は自分の右腕が使い物にならなくなったことを確認すると、怒り狂い自分で自分の右腕をちぎり周りを見渡す。


 「(あいつにも感情みたいなものがあるのか??)」


 槐が不思議そうに獣型を観察していると、獣型は玲一の方を向いた。獣型が何をしようとしているのか理解するのと同時に獣型は行動に出た。


 「玲一君!! 躱せ!!」


 その言葉を放つときには獣型は自分のちぎった右腕を槍のようにし、玲一に向かって放っていた。当たればまず確実に貫かれる程の威力を持ったその腕は、一寸の狂いもない。

 

 「えっ……」


 玲一は急いで躱そうとするも、光源の付与がいつの間にか切れているのに気づく。そして、当たるのを覚悟したその時、玲一は不思議な現象を見る。

 それは、向かってくる腕の情報が頭の中に全て入ってくるのだ。角度・速度・軌道に予測衝突位置。その他の情報さえも頭の中に入ってくる。

 すると、玲一は今から最小限の動きだけで腕を躱せることに気が付き、行動にでる。腕は玲一の頬の数mm先を通過し、遠い地面へ激突する。


 「やるじゃないか玲一君!!」

 「今、すごい情報量が頭の中に……」


 獣型は、次の攻撃に出るために玲一に向かって走り出す。獣型にとっては、玲一が一番脅威になると踏んで先に排除しようとしているのだ。

 槐も透かさず後を追うが到底追いつかない。


 「見える……。 見えますよ!!」


 槐は玲一の言っていることが理解できず、困惑する。

 そして、獣型は玲一に向かい左腕を大きく振りかぶる。


 「玲一君!!」

 

 玲一は一切動こうとせず、ライフルを獣型に向け構え始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る