第15話 能力の掛け合わせ

【火星:訓練施設】

《戦闘訓練:第3期生 対 2機の獣型》


 重装甲の獣型を負傷させ、頑丈なドームで覆った4人は一先ひとまず安堵する。すると、久しく聞いていなかったアナウンスが流れる。


  「残り6機。撃破者・桜庭 梨花さくらば りか


 近衛このえ先輩のアナウンスを聞いたえんじゅは梨花の方を見やる。そこには、小型ナイフに光源こうげんの能力を付与したであろう眩いほどの光を纏った刀を持つ梨花の姿があった。その梨花の後ろには、先ほどまで俊足の獣型であったものが何等分にも刻まれ転がっていた。すると、梨花のことを眺めていた槐と目が合う。


 「こっちは終わりましたよ。あれ?あの獣型は?」

 「あ、この中ですよ」


 ドームを目視で確認すると、梨花が光の刀を持ったまま近づいてくる。すると玲一れいいちが焦ったように槐の前に出てくる。


 「槐さん!! 仕上げしないと!!」

 「やべっ!! 教えてくれてありがと玲一君」

 

 玲一の作戦では、ドームで覆った後に槐の侵略者インベーターの能力で押し潰すというものだった。槐の直接侵略の能力を間地かで見た玲一ならではの作戦だ。もしそれが失敗しても、美大みと怜雄れおの能力を掛け合わせによって岩の棘を強化し、ドームの中で串刺しにするという手筈になっている。

 槐はドームに近づき、片手で触れる。そこには未だ中で抵抗している重装甲の獣型による振動を感じた。あの重装甲の獣型の重いパンチを食らってもドームは依然耐えている。これならいけると確信した槐は能力を展開する。


 「侵略インベート……」


 機械でありながらも最期まで必死に抵抗している獣型に対し敬意を表し静かに展開された。するとドームの中でミシミシと音を立て何かが潰されていくのが聞こえた。

 これで終わりと思ったその瞬間予想外のことが起きる。ドームが槐と重装甲の獣型の圧に耐え切れずに破裂する。


 「ええぇぇぇ!! 私の最高傑作のドームがっ!!」


 破裂したドームから一つの大きな塊が跳ばされる。それは勿論、重装甲の獣型だった。重装甲の獣型は全損は免れたようだったが、いくつか分厚い装甲が剥がれている。そして、まだ動ける右足を地面につき起き上がろうとする。


 「まずい、まだあいつ動けるのかっ。美大!!」

 「ド、ドームはもうないけどやるだけやるよ~☆」


 すぐに重装甲の獣型の状態に気が付いた怜雄が美大に強化ストレングサンを付与する。美大もすかさず創造者クリエイターの能力を展開し、急速に光を集め地面に打ち込む。

 危険を察知した獣型は両手と右足だけで跳ねとび、強化された棘を躱す。


 「なにこれ、すごい体が軽いし思った通りに作り出せる」

 

 すると美大は打ち込んだままの手に光を集め、そのまま地面へ一気に流す。


 「んんんっ!! そりゃあああぁぁぁああ」


 一度飛び出した棘の先端からみるみる追加の棘生え、それはまるで棘の付いた縄となり、空中で重装甲の獣型の腹から背中へと突き刺す。


 「俺の強化は、他者に付与した場合は能力者の自体の能力を強化になることもできるのか……」


 怜雄は、自身の能力への新たな発見に気づき驚く。

 腹を貫かれた重装甲の獣型は必死に棘の縄を掴み、引き抜こうとする。だが美大が次々に創造者の光を注ぐと棘の縄が球体になり、重装甲の獣型の前進を覆う。そして、光を一気に溜める。


 「串刺しになっちゃえー!!」


 その声と同時に地面へ思いっきり打ち込むと、棘が鋭く伸びて重装甲の獣型を串刺しにする。その光景はウニの様だともいえるが、どちらかというと遠い昔、拷問器具として使われていた鉄の処女アイアン・メイデンに近いものを感じた。

 すると、ようやく待ちわびたアナウンスが流れる。


 「残り5機。撃破者・鴻崎 美大」


 第3期生たちは近衛先輩のアナウンスを聞き、初のチームとしての勝利の味をかみしめる。




【解 説】

〇能力:強化

 新たな発見 / 他者にしようすると能力自体の力を底上げする

〇能力:侵略者

 新たな発見 / 生き物だけでなく物(今までだと機械など)でも間接侵略可

〇能力:創造者(強化時)

 新たな発見 / 一度作り上げたものを自在に操る

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