第16話 侵略の円陣
【火星:訓練施設】
《戦闘訓練:第3期生》
俊足の獣型と重装甲の獣型を撃破した5人は残る獣型5機の行方を捜索していた。
「3機は見つけたんですけどね。残り2機がどこにいるか……」
とりあえず分かったことは、
槐に関しては残念なことに特に変わった様子はなく、強化を付与しても単に身体能力の向上だけという結果となった。
「これだけわかれば次の戦いは楽勝だろう」
「そうね。これで私ももっと暴れられるわ」
「ほ、ほどほどにね梨花ちゃん」
梨花が妙に上機嫌で、活き活きしている。いや、彼女は元々上機嫌だったか。
怜雄と梨花、美大が能力について話している間、槐はなぜ自分だけ強化の恩恵があまり受けれなかったのか考える。だがいくら考えても理由は分からず、元々異例な能力故に仕方ないという結論に至った。
すると、向こうで話し合いが終わったのか、3人は玲一から共有されている映像を見る。槐も映像に目を落とし、映し出されている3機を確認する。
「まだ成長していないのが1機に俊足が1機、重装甲が1機って感じよね」
梨花が映像を見ながら確認を取るように言う。すると梨花は何かを決めたのか光源の能力を展開する。
「3機しか見つかってないですけど戦いに行きますか?」
玲一が捜索の手を止め梨花に確認を取る。
「そうね。試してみたいこともあるし……」
そういうと梨花は、怜雄に強化の付与をしてもらう。そして、そのまま槐の方に歩いてきて光源を付与してくれる。
「槐君。こいつら結構狭い範囲に集まっているからさ。
「……あぁ、そういうこと」
槐は梨花が言ってきたことを何となく理解した。それは、光源の付与により光速で動ける槐が、直接侵略を使い3機の獣型を囲ってしまおうということだ。
こうすることにより、3機は出れなくなる。それにまだ見つかってない2機も侵入することができなくなり不意打ちを受ける心配もいらない。
「(3機の獣型が、知らぬ間に侵略されていた時どう対処するか楽しみだ……。 おっと、いつの間にか俺も梨花のような考えをしているな。危ない危ない)」
頭の中でいろいろと妄想していた槐は、我に返り早速行動に出る。
「いてら~。気を付けてね~☆」
「頑張れよ」
「任せて。
美大と怜雄に応援された槐は光速でとび出した。そして侵略者の能力を展開すると、まずは3機の獣型がいる方向に向かう。ある程度近づいたら徐々に右に逸れ、半円を形作るように動く。
「すっげ。もう追い越しちまったよ。さすが光の速さって感じだな」
「あと半分ですね槐さん。その後は円の淵の方で待ち伏せするので、ここに来てください」
玲一が共有してきた映像にはすでに槐を除く第3期生4人の姿があり、美大と玲一が手を振っているのが見えた。時間的に、槐と同じく光源の能力を付与されて移動してきたのだろう。
「わかった。すぐ行く」
返事をした槐は急いでみんなのもとに戻った。とりあえず、何も起こることなく作戦は進み、各々戦闘準備を進める。
5人全員に光源と強化の能力が付与される。そんな中、玲一が困ったように聞いてくる。
「あのー、僕これ意味あるんですかね」
「男なら全力で戦え」
勿論、戦闘にあまり向いていない能力を持つ玲一にも能力の付与がされており、彼はそれが疑問に思えたのだ。
だがそこに、ドカッと怜雄が玲一の背中を叩き喝を入れる。如何せん槐の直接侵略の円陣のおかげで周りを警戒する必要もなくなったので、索敵係だった玲一も戦闘メインで活動してもらうこととなる。
すると美大が全員の準備が整ったタイミングで提案してくる。
「ねぇねぇ!! 私、あの速いのと戦ってもいい?」
それは意外といっちゃ意外な提案だった。なぜなら美大の右腕をやったのは紛れもなく俊足の獣なのだから。でも今の彼女なら何とかするかもしれないと思い、槐は了承する。
「いいよ。でもヤバくなったら言ってね。
他のみんなはどうする?」
何気ない質問に梨花は即答した。
「私はあの固いのと一戦交えてみたい」
うちのチームの女性陣はなんて戦闘好きなんだ!!っと思いつつ、彼女に断りを入れても無駄だろうと判断しこれも了承する。
すると、余ったのは槐と怜雄、玲一の男3人。戦力的には成長のしていない獣型相手なら申し分ない編成だ。
「俺はみんなの支援をするぞ。強化の付与が切れたら言ってくれ」
怜雄が全員を支援するため戦闘からは一歩引いたところから戦うようだ。となると、最終的には槐と玲一の組み合わせとなる。
覚悟を決めた玲一は手に持っていたライフルを固く握りしめる。
そして、第3期生達は各々の獣型のもとへ向かって走るのだった。
【解 説】
〇能力:光源(強化時)
新たな発見 / 付与した場合の継続時間が伸びる。
光を扱う場合は、これ以上の速度・威力を上げられない為に恩恵は比較的少ない。
〇能力:守りし者(強化時)
新たな発見 / 展開範囲の広域化。
新たな発見 / 強度が増し、耐久性に優れたものとなる。
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