封印と凍結の巫女
ここは王国だった。闘い、滅ぼす神との戦いによって犠牲となった。始めに、町を業火で焼かれ、次に大地の剣が突き刺さった。王国は、もう戻すことができなくなった。
「なあ、次はどこに行けばいいんだ?」
エリックは、戦いが一段落ついたあと、王国最強の騎士、ガルジュに聞く。
「次、か......。そうだな」
ガルジュは迷っていた。自分の故郷である王国がなくなり、どこにいるかもわからない闘神をどうやって探し出せばいいのかと。
「あの、私から提案があるのですが」
ガーネットが言葉を発した瞬時に、エリックとガルジュの二人が振り向く。
「提案って何?」
「えーと、闘神についてなのですが、いいでしょうか?」
ガルジュとエリックは静かに頷いた。ガーネットはにっこりと笑って話し出した。
「ある町について噂を聞いたのですが、グレテストという町があるそうです。その町には、扱うのがとても難しいとされる、封印系統の魔法と、凍結系統の魔法を扱うとても強い少女がいるそうなのです」
「それが闘神とどんな関係があるんだ?」
ガーネットは一呼吸あけて言った。
「実はですね、この噂を聞き付けた一人が、実際にそこに行ってみたそうです。もちろん少女がいました。その二人の少女をつけていくと、ある建物に入っていったそうです。そしてしばらくすると、中で大きな叫び声がしたそうです」
「ほうほう。つまり中には死刑囚がいて、その二人の少女が天罰を下したのか」
「は?」
「え!?いや、だから中にs」
「それはもう聞いたわよ‼あんたいきなりどうしたのさ‼」
「あ、あの~、その場所では死刑を行わないことになっています」
「な、なんだと‼」
エリックは驚く。その一言にウィルが大きくため息をついた。
「じゃあ次はそこにいくのね」
「まあそうなるだろうな。いくなら歩きよりももっといい方法があるぞ」
ガルジュはそう言って、ある呪文を唱え始めた。
「キャレッジ・コール・リザード」
なんとか聞き取れるほどだが、唱え終わった刹那、地面に魔方陣が描かれた。光が漂い、何かが現れた。
「こ、これは⁉」
そこに現れたのは、馬車のようなものに繋がれた、二体の大きなトカゲだった。
「キャッ‼何⁉」
ウィルはおののき、飛び退いた。そしてガーネットの後ろに隠れるようにして逃げる。
「今のは召喚魔法。使い方さえ分かれば誰でも使えるぞ」
「す、すげー」
エリックがそうい言った瞬間、二体のトカゲが早く乗れと言わんばかりに叫んだ。
「「ギワー‼」」
「鳴き声は少し微妙だが、意外と速いぞ。それに体力もあるしな」
「じゃあこれに乗っていくか。ガーネット、その場所ってどこなんだ?」
「えーとですね、ワミルエルという小国です」
ワミルエルは、闘技と魔法が盛んで、誰でも使える魔法の研究をしている。
「つ、着いたー!」
エリックが大きく背伸びする。
「ふう。結構かかりましたね」
「まあいくら速くても、これだけの距離があればな」
そう言って、ガルジュが指を振ると、トカゲが光の欠片となって砕け散った。魔方陣もそれに続いて砕ける。
「さてと、どうするんだ?」
初めて来た場所で一番最初にすることと言ったら勿論あれしかない‼
それは......。
「聞き込みだあ~‼」
そう言って彼らは国の人間に、二人の少女について聞き回った。すると、答える人全員がこう答えた。
「ああ、封印と凍結の巫女様のことね。なら広場にいくといいわ」
広場がどこにあるかと聞くと、
「広場は国の中心だよ。あの丘から見渡せばすぐ見つかるよ‼」
答えた男の子はそそくさと駆けていった。
「丘にいかせるぐらいなら最初っから連れてってくれよ」
エリックは深いため息をつきながら、みんなと共に丘を登った。
「うわー。いい眺め」
「そうですね~。あ‼ありましたよ。そこで......、二人の巫女さんが何かやってます‼」
「ナイスだガーネット。早速行くぞ‼」
そう言ってエリックは駆け出した。
「ちょ、ちょっと待てエリック‼」
それを見たガルジュたちはも駆け出していく。
・
・
・
そこでは何か話していた。
「どうも私は、封印の巫女、フウです」
「どうも私は凍結の巫女、トウです」
「「二人あわせて、封結の巫女、フウ&トウです‼」」
二人の巫女はそう言って観客たちに、爽やかな笑顔を魅せる。いや、見せる。
「きゃー。こっち向いて~フウちゃん」
「トウちゃんもかわいいよ~」
この二人のファンらしき人たちが声援を送る。
「しーっ」
フウが口元に指を当てて、観客を黙らせる。そして。
「それでは今月のイベントいってみよ~‼」
トウがそう言って大きく跳ねる。それに乗じるように観客も跳び跳ねる。
「さてさて今月は、あの闘技場のシングルマッチに参加したいと思います‼」
フウが言った刹那、その場が凍りつくように静かになった。それまで騒がしかった観客たちは、小声で話始める。
「フウちゃんとトウちゃんが闘技場になんていくのは危険すぎるわ」
「そうだそうだ‼」
観客の声は次第に大きくなり、
「反対‼反対‼」
講義を始める。だが、観客の怒りの声は届かなかった。
「ご、ごめんなさい‼皆さん‼この提案をしたのは私なんです‼」
トウが泣きながら観客に謝る。
「私たちはいつも皆さんに守られてばかりなので、自分達が強いことを証明すれば、皆さんが私たちの心配をしなくて済むと思いました。だから、この発表をするまでずっと特訓をしていました。皆さんどうか、どうか私たちを闘技場に、出させてください‼」
途中途中泣きながらの演説だったが、それに感動したのか、先ほどまであんなに騒いでいた観客が、今はおとなしくしている。そこで、観客の中から一人の男が出てきた。
「トウちゃんはそう思ってたのか。俺たちはお前らが弱くて心配してるんじゃねえよ。安心しな。お前らが俺たちのために毎日毎日働いてんのは知ってたさ。だから少しでも楽になれるよう心配してたんだ」
男は大きく息を吸い、声を張り上げる。
「なあ、おめえら‼」
『オオオオオ‼』
「み、皆さん」
トウとフウは、感動で泣き崩れた。この時初めて国民が一致団結した。
「そ、それでは皆さん。私たちは、明後日から始まるシングルマッチに参加します‼」
フウが言った。
「応援よろしくお願いします‼」
トウが先ほどとは違い、爽やかな笑顔で言った。
それを間近で見ていた男が一人いた。
「そうか、あれが封印と凍結の巫女か」
そう呟いた男は、仲間のもとへと戻っていった。
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