雷焔の嵐と二体の闘神

「さーてと、やりますか」

そう男は呟き、魔力を解放した。辺りに砂ぼこりが起きる。

「魔力解放‼ハアアアア‼」

大地が裂け、地中から巨人が現れる。

「代償召喚術、俺の魔力を喰らい、出でよ‼断崖の闘神‼」

[断崖の闘神]と呼ばれる巨人は、魔力を使ったのか、大地を槍に変え、左腕に持った。

「クク、クハハハハ‼これで断崖と焔が揃ったぜ‼王国をぶっ潰してやる‼」

そして、巨人は歩き出した。向かう先には......。




「す、すごい......」

ガーネットは驚く他なかった。あのエリックが、天空から焔を降らせていた巨人を倒したのだ。

「いや、まだだ」

ガルジュは遠方から、もうひとつの巨大な魔力を感知していた。それは、エリックたちに接近していた。

「おい!もう一体来るぞ‼今度はさっきよりも魔力が......」

時すでに遅し。大地の槍を携えた巨人が眼前に迫っていた。そして、エリックが倒したはずの燃え上がるような巨人は、何もなかったようにその巨人の隣に立っていた。

「ぜ、絶体絶命だ......。どうすれば......」

絶望した。焔の巨人一体にエリックがあれほどの魔力を使ったのだ。そして今はもう完全に蘇生している。あと二発以上放つことは出来ない。

「方法は、まだある‼」

エリックが立ち上がった。

「で、でも、どうすればいいのでしょうか?」

皆疑問に思った。あんな巨大な生物にどうすれば抗えるのか。どうすれば殺れるのか。どうすれば生き残れるのか。

「これは、成功する確率が物凄く低いが、やる価値がある作戦だと俺は思ってる。手伝うなら諦めるな‼」

エリックの言葉にはなぜだか説得力が感じられた。そして、その言葉を聞くと、やる気が、元気が溢れてくるのだ。

「私はもちろんやるわよ。だってやらずに後悔するよりやって後悔した方が後味がいいじゃない」

ウィルはエリックの方に歩み寄った。

「でしたら、私もやります‼」

ガーネットも歩み寄る。

残されたガルジュ。

「どうするんだ?」

「お、俺は......」

ガルジュは黙り混んだ。

「そうか、わかった」

エリックはそう言って、ウィル、ガーネットと共に、遺跡に向かった。

「クソ‼俺はどうすればいいんだ‼」




~遺跡にて~

「ゴホッゴホッ!これもう遺跡跡地じゃないの‼」

崩れた遺跡はぼろぼろで、残骸が残っていた。

「エリック、作戦とはなんなのですか?」

「簡単に言うと、お前らの魔力を俺が使う、って感じだな」

「そんなことできるの?」

「ああ。ただし互いの信頼度が大事だ。これがないと、使う方の体が灰になる」

これは危険な作戦だった。つまり魔力を使われる方は、最後魔力がなくなり動けなくなる。すると敵からは格好の的だ。

「もちろんいいですよ。私、エリックのこと信じてますから」

ガーネットは満面の笑みで言った。頷いたウィルも同意見のようだ。

「じゃあやるぞ‼魔力解放‼」

周囲を暴嵐と雷が舞う。

「じゃあ私たちも‼」

『魔力解放‼』

紅く燃え上がる焔も舞う。

『ハアアアア‼』

三人の魔力が融合し始めた。

「今だ‼融合フュージョン砲撃バースト‼雷焔の暴嵐ライジング・クリムゾン‼」

エリックの雷と嵐、ガーネットの焔を、バランスよく保つウィル。それは凄まじい光景だった。それは、断崖の闘神と焔の闘神を穿ち、破砕した。二体の闘神はそれぞれクリスタルとなって、天から降ってきた。

「なんだこれ?」

一つは深紅に煌めく結晶。もう一つは黄金色こがねいろに輝く結晶だった。

「それは、大陸全土に伝わる魔力の結晶だ」

振り向いた先に......。

「ガルジュ‼」

「紅い結晶が焔の結晶、黄金色の結晶を断崖の結晶という。それぞれ強大な魔力が込められている」

「す、すげー‼」

「この世界にはその結果が全てで十二個ある。全て集めれば、大抵のことは何でもできる」

「それって賢者の石とかって創れたりするのか‼」

エリックは食いついた。もちろんソニアを甦らせるために。

「さあな。俺にもわからん」

ガルジュは問わなかった。詮索もしない。

(これでまた一歩進展があった。あと九個の結晶を集めて見せる‼)


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