焔の闘神と轟嵐の勇姿

「さあてと、もう少しで封印が解かれる。くっくっくっ。せいぜい頑張りたまえ。封印が解かれれば我らはsy」

バタン‼と大きな音がした。遺跡の最後の扉が開いたようだ。

カッ、カッ、と、高価な靴で歩く音がする。貴族か王族、あるいは......。

「俺はこの国を守る騎士、アスロアだ‼」

アスロアは男の眼前に立ちはだかり、そう叫んだ。そして柄にはまっていた自分の愛剣を抜き、魔力をあらわにした。

「ほう、炎と水の双属性を扱うとは。だが、双属だけでは我には勝てぬぞ。小わっぱよ」

男は左手から冷気を、右手を盾に、左足を剣に変えた。その男は、まるで「武神ワッシュ・アイシー」のようだった。

「な、なんだその姿は‼?!」

「くっくっくっ。驚くのには無理はない。この魔力の名は、[氷神の武功]。体の一部を武具に変え、体から冷気を発する最強の魔力。さあ、いざじんじょうに」

男は走りだし、扉を氷山で塞ぎ退路を消した。そして剣と化した左足で、アスロアの体に蹴りを入れる。手応えはあった。だがしかし。

「ば、馬鹿な?!」

アスロアの腹部を守るように氷の膜が覆い、炎が男の左足を赤々と燃やしていた。

「グッアッ。な、なぜだ⁉」

「たとえそれがどんなに強靭な魔力でも、騎士の誇りはそれに必ず打ち勝つ。相手が一騎でも大軍でもそれは変わらない。騎士の誇りは、全ての魔力に勝る‼」

そしてアスロアに触れている部分から炎と、男の冷気によって冷やされた水が侵食し、男の体を蝕んでいった。そして男は動きを止め、静かに笑いだした。

「くく、くく、カッカッかっ。貴様らは何も分かっていないようだ。私がなぜこの国の遺跡の最奥部にいると思うか?それは、貴様らを滅ぼす本当の武神、いや、闘神の封印を解くためだあー‼」

そう言って男の体は灰となって燃え尽きた。そして、アスロアも燃え上がる。

「グハッ‼な、なぜだ‼」

空から焔が上がる。いや、地に降り注いだ。まるで体にこびりついた汚れを洗い流すように。




「お、おいなんだよこれ‼」

空から紅い光が降り注いだ。次いで隕石なども落ち始める。まるで世界の終わりを告げるように。

「わからん。だが、やはり遺跡が関係していたようだ」

遺跡を中心とした大地が裂け、地の底から巨人が現れた。

「な、なぜあれがここに?!」

ガーネットは叫んだ。あの化け物を見たことがあるかのように。その声に反応して、巨人が光る。いや、激しく点滅した。

「何の合図なんだ。......。まさか?!」

エリックが叫びながら全魔力を解き放つ。

「クソ‼この国をまるごと吹き飛ばすきだ‼」

そして嵐と雷が舞い、収束した。

「おい‼来るぞ‼」

ガルジュの叫びとほぼ同時に、巨人の口から焔が吹き出した。「ぶっ飛べ‼レーン・ライトニング‼」

巨人の焔と、エリックの轟嵐がぶつかる。火花をあげ、煙が舞う。巨人の足元の地面が割れる。そして大穴があき、巨人が大地に沈み混んだ。

「さてさて、戦争の幕開けだ」

遥か遠くで、そんな声がした。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る