偽りの王と太陽の巫女

「が、ガルジュ‼」

「久しぶりだな、エリック」

「「ええええ‼」」

ウィルとガーネットは、俺以上に驚いていて、「え!?な、なんで?」というふうに、驚きを隠さず、対してガーネットの方は、唖然として動く様子がない。

「そんなに驚くなって。騎士なんだから鎧を着けてんに決まってるだろ」

(まあ普通ならばそうだろうが、ここは一応自分の住まいだろ。鎧を外して楽にすればいいのに。)

「まあいいや。とりあえず中に入れよ」

ガルジュはそういって扉を開けて俺たちを招き入れた。

「す、すごいな」

ガルジュの家は、俺の住んでいたぼろぼろの家とは違い、貴族かそれ以上のような(貴族の家なんて見たことないが。)高級感があった。

「座ってくれ」

ガルジュの指差した方向には、大きなテーブルと四つの綺麗なソファがあった。そこに俺たちは腰かけた。

「それで、用件ってなんなんだ?」

「実は......」

そう言いかけた時、大きな爆発音がした。そしてつんざくような悲鳴と、怒りの雄叫びが聞こえる。

「な、なんだ!?」

ガルジュはそう言って、扉を開き、外に出た。

「どうしたんだ、ガルジュ?」

俺はガルジュの絶望の顔を見た。そして、ガルジュの見ていた方に目をやると、俺も言葉を失った。

「ギャー‼やめてく......」

「お、お願いしますお願いしますお願いしますウウウ‼」

「ひやひゃっひゃっひゃー‼死ね死ね死ね‼」

そこには、逃げ惑う住民と、それを追い殺すようにする殺戮者たちの姿だった。

「ど、どうすんのさ?」

少し慌てながらも、ウィルが口を開いた。その言葉を聞いたガルジュは即答した。

「助ける‼その一択だけだ」

ガルジュは今まで以上に真剣な表情になり、兜を着けた。そして、サブウエポンの片手半剣バスターソードを手に取り、歩き出した。

「待てよガルジュ。俺も......」

俺は一呼吸置き、ウィルとガーネットの方を見る。俺が言おうとしていることを察したのか、二人とも頷いた。

「いや、俺たちもいくぜ」

「頼むぞ」

ガルジュは素直にそう言って駆け出した。

「まずは大聖堂に向かう。襲撃者が狙うとしたら、一番に思い付く」




大聖堂の扉を開けると、中央に一人の男が立っていた。

「お前たち、誰だ?」

そいつは一見人のようだが、感じる魔力は、俺たちとはかけ離れている。

「お前こそ何もんだ?」

互いに睨み合う。戦闘での基本中の基本、先に動いた方が負ける。敵が先に動いた。

「我が名は[偽王ギルアード]。王の名において、汝らの偽りを解放する‼」

奴の言った意味は全く理解出来なかったが、奴がただの人間ではないことが分かる。

「お前ら気を付けろ‼そいつの出す波動に当たると、今までの偽りの言動行動の分だけ、生命力を吸いとられるぞ‼」

奴はガーネットとウィルに向かって波動を放った。だがそれに反応して、魔法を発動した。

「生命よ。死よ。我が呼び掛け、我らの時を固めよ‼」

ウィルの魔法の発動により、波動を退けた。

ウィルの魔力はライフスタイル。デバフ効果や、バフ効果を完全に無効果するものだ。

「ッ!」

そして奴はガーネットに向かって蹴りをいれようとしたが、ガーネットの魔法により返り討ちとなった。

「喰らえ‼そして死ね‼」

「太陽よ。溶岩よ。我の熱く燃え上がる魂に応え、破壊の限りを尽くせ‼サンスポット・プロミネンス‼」

ガーネットの手から紅い紅い焔が解き放たれ、完全に油断していた男を燃やし尽くした。

「す、すごいなお前」

俺とガルジュの出番はなかったようだ。

「なあガルジュ。さっきの男ってよ、幻魔アルマだよな」

「少し違う。あれは幻魔アルマを取り込んだ人間だ」

ちなみにアルマとは、様々な力を扱う魔法を元に創られた生命体で、特に力の強大なものを、[王]と呼ぶ。

「何話してるの?他にもいかなきゃいけないとこがあるんだから急ぎなさいよ‼」

「はあ。とりあえずこの話は後だな。次はどこに行くんだ?」

「そうだな。じゃあここに行こう」

ガルジュは持っていた地図の斜め左上を指差した。

「遺跡‼?!」

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