銀の魔力といかずちの力

「俺はガルジュ、リオミスの騎士だ。とりあえず話を聞きたいんだが、着いてきてくれないか?」

エリックは静かに頷いた。

ガルジュは、街に入る前に作ったテントにエリックを案内した。

「そこに座ってくれ」

そう言うと、エリックは何も言わず静かに座った。エリックは相当腹が減っていたようで、少し不機嫌そうな顔をしていた。

「この街に何が起きたのかを聞きたいんだが、いいか?」

そう言うと彼は頷き、話してくれた。

「俺は、この街に住んでて、幼馴染みがいた」

エリックが言った幼馴染みとはなんなのかと聞くと、それはさっきの広場にあった遺体少女が、そのようだった。

「その幼馴染みが、街長に殺された。そして俺は......」

エリックは口をつぐんだ。多分その街長を殺してしまったのだろう。

「そうか......。なんとなくわかったよ。だけどなぜ街長は君の幼馴染みを殺したんだ?」

「それは......」

エリックが少し間をあけて言った。

「俺の幼馴染みが......ソニアが街長の大事な秘密を知ってしまったからだ」

その幼馴染みはソニアというそうだ。

「じゃあそのってなんなんだ?君は知っているのか?」

エリックは頷く。彼は話してくれた。その街長が半機人ミオスだということを。

「そうか。聞いてばかりで悪いけど、最後に一つだけ聞いてもいいか?」

「ああ」

「......。君は、街長が君の幼馴染みを殺したといったね。それは間違いないんだな」

「ああ」

「じゃあ、君はどうやって街長を殺したんだ?そして、その死体は何処にあるんだ?」

ガルジュは最初からエリックのことを疑っていた。何故血で深紅に染められた街に未だにいるのか。何故この街に死体が少女のものしかないのか。何故エリックがソニアを庇うのか。

「わからない。気付いたら街が血だらけで、ソニアを殺した街長あいつもいなかった。街に住んでた奴等もいなかった」

彼が嘘をついていないことはひとめでわかった。経験というものだろう。普通の人間だったら、そんなことはあり得ないと、即座に切り捨てていただろう。

「わかった。信じよう。それじゃあ話してくれたお礼として、飯を食べていってくれ」

これはガルジュなりの謝罪でもあった。疑ってしまったことにたいしての。だがエリックは首を横に振った。

「その前に......。その前にソニアの死体を火葬でも埋葬でもいいから、頼むよ」

エリックは泣きそうな顔で言った。そりゃそうだ。誰だって身近にいる人が死んだら、泣きたくなるものだ。

「わかった。じゃあ広場に行こう」




そこにはまだ死体があった。鋭利な刃物で......。いや、殺したのが半機人ミオスならば、硬化した指や何かだろう。

「じゃあ、埋めようか。何処に埋めればいいんだ?」

広場に向かう途中で彼と相談して決めた。

「じゃあ......。俺の家の側に埋めてくれ」

彼はソニアを身近に感じていたいそうだ。

ガルジュはソニアを軽々と持ち上げ、エリックの家まで運んだ。そして遺体を埋めようとしたその時、銀色の光が風のように舞い、エリックを包み込んだ。

(ま、まさか。そんなことが。)

ガルジュは驚きを隠せなかった。普通は、人は一つしか魔力を持つことが出来ない。だが、彼は、その銀色の風をまるで自分の力のように扱った。

「え、エリック。君は」

彼は言葉を失った。当然の反応だ。エリックは風といかずちの二つの魔法を使っていたのだ。

「エリック、その魔法は......?」

「この風は......ソニアの魔力、[風神フェンシェン]だ?!」

彼も驚いているようで、彼の傷がすべて銀の風によって癒された。




「ねえエリック?いく宛はあるの?」

「ああウィル。一つだけある。昔な俺はそいつに命を助けられた」

「ということは、その方はエリックの恩人ということですか?」

「んまあそうなるな」

「じゃあ行きましょ‼」

そういってウィルとガーネットが駆け出した。

(そういえばあれ以来あってなかったっけなあ。ガルジュ。)

「おーい、エリックー‼おいてくわよー‼」

「何処にいくかわかってんのかー?」

(さあてと、やっとだ。俺は必ず手に入れる。)

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