第二十三章 一か八か勝負!?
秋生の声で僕は覚悟を決めた。ナッティーが前に瘴気に当たって気を失った、あのパソコンに入るつもりだ。
しかし、大魔神深野の
ふと見ると、消し炭になっていた秋生のアバターから青いオーラが羽衣のように、ふわふわと漂いながら、ナッティーの身体を包み込んでいた。秋生の霊魂がナッティーと合体していくようだ。いったい、何が始まるんだろう?
僕を攻撃することに気を取られていた深野は、ナッティーたちの不穏な動きに気付いて、
「おまえら、何をやっているんだ?」
ナッティーのアバターの中に秋生がすっかり収まったようだ。
「この虫けらどもが、踏み潰してやる!」
ナッティーに向けて、巨大な脚が踏み付けようと下りてきた。
「ナッティー危ない!」
次の瞬間、信じられないことが起こった。大魔神深野がすごい地響きを立ててひっくり返ったのだ。見ると、踏み潰されたと思っていたナッティーがムクッと立ち上がっているではないか!
これは盗賊キャラが使える『やぶれかぶれの一撃』という技だった。どんな強い相手でも一撃で倒せる超レア技である。これには、さすがの大魔神も一本取られたようだ。
僕の耳に再び秋生の声がした《ツバサ! 今だ、パソコンを壊しに行ってくれ》それに応えて「よっしゃー、任せろ!」すごい勢いで二次元の壁をよじ登り、深野のパソコンの窓まで到達した「南無阿弥陀仏」念仏を唱えると「おりゃあああぁ―――!」と、掛け声と共に身体中に『気』を集めて、パソコンの中に飛び込んだ。
「うっ! なんだ? この黒い空気は息が苦しい……」
黒く渦を巻くトンネルのような所を潜っていた。頭の中に『憎しみ』や『恨み』や『嫉妬』など禍々しい感情が飛び込んでくる。きっと黒い感情を抱いたまま死んで逝った、浮かばれない霊魂たちが彷徨っているのだろう。弱い心だと憑かれそうだった。
次第に意識が遠のくようで……身体が硬直しそうになったが、守らなければならない仲間のことを想いながら、僕は必死で堪えていた。
――やっと出口が見えた!
窓の向うで、深野が腐った魚みたいな眼でパソコンに向かっていた。
スルリとパソコンから抜けた僕は、深野の身体に入り込もうとした。僕が入るためには深野自身の霊魂を追い出さなくてはならない。悪霊たちに依って弱小化していた彼の霊魂を恫喝(どうかつ)して無理やり肉体から放り出した。
どうにか三次元の肉体を手に入れたが、やはり他人の肉体は違和感がある。たぶんそんな長い時間は入っていられないだろう。
黒いパソコンを壊すために僕は道具を探した。深野の部屋は八畳のくらいの洋間できれいに片付いていた。見れば、ベッドの下に筋トレ用に使っていたと思われる鉄アレイが転がっている。
よし、これだ! 3キロの鉄アレイを握ると、僕は黒いパソコンに思い切り叩きつけた。
バキッバキッと音を立てて、パソコンから火花が散った!
なおも、鉄アレイを何度も振り下ろし叩きつけた。「ぎえぇぇ―――っ!」と、人の叫び声のようなものが聴こえて、閃光を放ち爆発してパソコンは粉々に飛び散った。
その瞬間、僕も意識を失って崩れるように、その場に倒れてしまった――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます