夜:ファミレス
「やっほー、宮野君」
「やっほー……じゃねぇよ、二時間も遅刻してんじゃねぇか」
「二時間遅刻しても待っててくれるんだから、宮野君は優しいね」
「待ってないと……あとで、てめぇに何されるか分からねぇからな」
人をファミレスの喫煙席で二時間たっぷり待たせた、この女……望月あかりは、何を悪びれた様子もなく、そう俺に声を掛けてきた。
ボックス席の正面に腰掛けて、学校のそれとは似ても似つかない、シニカルな笑みを浮かべて、俺の顔を見てくる。
今の望月は、どこか抜けているが、博愛溢れた生徒会副会長サマではない。
それはあくまで、コイツが学校にいる間だけの話だ。
学校から遥か離れた数駅先のこのファミレスでは、関係がない。
「何か食べる宮野君? どうせドリンクバーだけで、二時間粘ってたんでしょ?」
制服のスカートはしっかり膝下まであるくせに、今のスカートはちょっと足を組み直すだけで、正面から下着が見える超絶ミニ。
育ちに育った太腿を惜しげもなく見せびらかし、たわわな乳房も、薄着一枚覆うだけ。
パーカーを羽織っているお陰で、まぁ何とかギリギリ外に出れる格好になっているが……それだって、清楚だの貞淑だのといった形容からは、まるで遠い。
最早、かつての名残は、濡羽色の綺麗な黒髪ロングだけだ。
「そんな金どこにもねぇよ。それとも、二時間待たせたお詫びに、何か奢ってくれんのか?」
「冗談。女が同い年の男に奢るわけないでしょ」
そう言って、にこやかに笑う。
キラキラとか、ふわふわとか、そういう擬音が似合う、見てくれだけは良い笑顔で……懐から煙草を取り出して、手慣れた手つきで一服。
勿論、俺も望月も、何処に出しても恥ずかしくない、立派な未成年だ。
お互いに校則違反で、お互いに不良千万。
俺と同じ銘柄の煙草で紫煙を燻らせながら、望月は笑った。
「それじゃ、今夜も一晩よろしくね。宮野君」
今夜も俺と望月の……別に、これと言って特筆する事もない、長い夜が始まる。
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