考えること

@sugishita

第1話

 私には何もない。これといった長所は思いつかない。目立つ短所も見当たらない。計画を考えるやる気もないし、行動を起こそうなどという気は増してない。過去にはそんなものも持っていたかもしれないが、とにかく今は何も持っていない。

 

 毎日仕事をして家に帰る。翌朝目を覚ます。また仕事に行く。休日が来る。そしてまた仕事に行く。なぜ皆(いわゆる一般人)こんなことが出来るのか私には皆目見当がつかない。もちろんこれは批判や中傷のために言っているのではないし、そういう生き方を否定しているわけではない。

 

ただ単に私には理解できないということである。賢しいふりをしているわけではない。多くの人間がそういう生き方を選んでいるのだからそういう生き方が一つの「正解」である可能性が高いということは察しがつく。私は「不正解」だ。

 

 何のために毎日同じことを繰り返しているのか。そんなことを考え始めたらずぶずぶとはまってしまうから考えていないのか。それとも今の生活に十分に満足しているのか。単に何も考えていないのか。理解できないのは私が何も持っていないからなのか。


 であれば私以外(ほかに同じことを考えている人間がいれば私かぎりではないが)は皆なにか持っているということか。私にも熱意がひとかけらあれば理解できるのだろうか。


 思うに人生自体には意味なんてないのではないか。だから何をしても意味は生まれないのではないか。それなのに毎日好きでもないことを繰り返すなんて馬鹿げたことなのではないか。私はそのことを深く考えるあまりすべてを手放してしまったのではないだろうか。皆はそこからどうやってか抜け出したから私とは違うのだ。


 どうやって抜け出したのか教えを乞いたい。私だけが頭の作りが根本的に異なっていることを疑いたくなる。意志の強さか?大いにあり得る。私の意志は弱いと言って差し支えない。というよりほとんどないと言ってもよい。情熱の温度か?これも全く否定できない。私が持っている熱なんてものはせいぜいが体温くらいのものである。いやそもそも本当に皆そこから抜け出したのか?


 私以外の人間がすべて情熱と強い意志をもった人間なのだろうか。ここのところがどうもしっくりこない。私のような人間は社会には一人もいないのだろうか。一人くらいいてもいいような気がしてならない。いないと言われれば「そうか」と納得できそうな気もする。


 

     わからないことが多すぎるが考え続けることがやめられない。

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