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「マキノさんは本当に楽しそうにお話しされますよね。それで聞いているこっちまで楽しくなると言うか。木曜のお昼の放送、良く聞かせて頂いているんですけれど、お悩み相談のコーナーとか凄くタメになるお話しばかりで。しかも仏教やキリスト教、神話や昔話、はたまた近未来の話まで本当にいろんなことをお話しになっていて、教養が凄くおありと言うか。どれだけ勉強されているんだろうとビックリする時があります」

 宇宙論から半熟ゆで卵の作り方まで。一つの質問に莫大な知識量で答えてくれる。俺の知っていることなんて、マキノさんのほんのなん十分の一くらいだと思う。

「ヒヒッ、そう言ってもらえると嬉しいなぁ。勉強した甲斐があるっていうか、DJ冥利に尽きると言うか。いろんな宗教の話が出来るのはこの国だからだけど、ただ好きなだけだよ」

「好きなだけ?」

「知らないことを調べるのとか、知って行くこととかね。あとお喋りすることも好き。だからこの仕事を選んだんだ」

 かろん、と氷が鳴ったグラスを持つマキノさんは柔らかな笑顔だ。

「ここに来るまでは大変だったけどね。頑張って来て良かったよ」

「マキノさんが言うと説得力が違いますね」

「そうでしょ? こんな適当な見た目だけど、実はちゃんとしてるんだから」

「いえいえ、見た目も、とても知性的ですよ」

 アゴヒゲにオシャレ眼鏡、絶対に俺が着ないような模様の入ったジャケットをさらりと羽織るのとか、ベンチャー企業の社長みたいな感じがするし。

「またまたぁバーのマスターって口がお上手だから」

「マキノさんには負けますとも」

「ヒヒヒッ、まぁそうじゃなきゃ困るしね。俺にはこの仕事しかないから」

「それはとても素敵な事ですね」

「うん、そうだね。そしてそれはマスターにも言えることだから。素敵な仕事に就いてくれてありがとうね」

「こちらこそ。毎週楽しみにしています」

「ヒヒヒッありがと」

 そんなこと言ってもらえるなんて、俺もバーテンダー冥利に尽きるってこった。


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