お喋りは一番の肴

カゲトモ

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「いや~ほんと喋りっぱなしでごめんねぇ」

「いえいえ、お話しを聞かせてもらえて、私も嬉しいです」

「そんなこと言ってくれるのマスターだけだよぉ」

「ふふふ、ご冗談を」

「冗談じゃないって、マジマジ大マジ。仕事でも喋ってんのにプライベートでもどんだけ喋るんだうるせぇってよく言われるもん」

 うーん、めっちゃ想像できるそれ。絶対に飲み会の席とかでも一番喋ってそうだもん。

「もう喋るために生きて来たって感じだし、黙ったら俺、死んじゃうと思うもん」

「ふふ、マキノさんは本当に面白い方ですね」

「あったりまえじゃァないっ。面白くなくっちゃ、楽しくないでしょ? 聞いてくれている人が笑ってくれるように話すのが、俺のモットーだから」

「素敵ですね」

「ありがと。これでもラジオDJやらしてもらってるからね」

 ヒヒッ、と独特の笑い方をするのは人気ラジオDJのマキノさんだ。時々火曜の深夜に現れては楽しい話を聞かせてくれる。何でも火曜は夜の放送があって、次の日はオフだからだとか。俺と一緒だ。

「マスターはいつも夜の放送の時間お仕事だからね、ここで俺の美声を聞いてもらえたらって思ってさ」

「なんてリスナー思いのDJなんでしょう。私は幸せ者ですね。マキノさんのお声を独り占めできるだなんて」

「つい喋り過ぎちゃうけどね」

 声でお金をもらえる人なのに、俺だけに話してくれるなんてなんて贅沢なんだろうか。今日が落ち着いている夜で良かった。

比較的火曜の深夜は落ち着いていることが多いからいいんだけど。もしかしてそれも狙って来てくれている? なんてね。

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