第214話 偶然という名の必然 -Things take place as if it were predetermined-
・1・
「フランちゃん、大丈夫かな?」
ユウト達がいる会議室の外では、レイナとカイン、そして
「さぁな、まぁなるようにしかならねぇだろ」
「それはそうだけど……」
「……」
ユウトが
彼らが出てくるのを待っていた3人だが、おもむろにカインが腰を上げた。
「どこへ行くんですか?」
「……あいつを待つのに3人もいらねぇだろ」
カインはそう言うと、会議室の扉を背にして歩き始めた……のだが、
「あだっ!?」
曲がり角で誰かにぶつかり、その誰かは素っ頓狂な声を上げた。
「いたた……って何だあんたか」
「おい、人様の顔見て何だとは何だ」
ぶつかったのは
「うっさいわねぇ、こっちは傷心中なのよ……空気読め、空気」
「……」
一番読まないテメェに言われたくない、というような表情で返すカイン。
「
「何かあったじゃないわよ。おおありよ! あーもう、何なのよあの
なんちゃってメイド娘とは言葉の通りで、彼女は何故かメイド服を着ている。ちなみに他の魔神たちも彼女に負けず劣らずの奇抜ファッションを好んでいた。
「
「私の十数年に及ぶ錬金術の研究……それをあの女、指先一つでやってのけたのよ!!」
「「「……」」」
一同、沈黙。
彼女は小さく溜息を吐き、こう続けた。
「……はぁ、例えばよレイナ」
「は、はい!」
「あんたが死ぬ気で一日かけてやった仕事を、隣で1秒で片付けられたらどう思う?」
「え、あぁ……す、すごいなぁって……」
「そうそう凄いのよ……って違ぁぁぁぁう!!」
相当きているのか、珍しく乗りツッコミする
「悔しいでしょ!! ムカつくでしょ!! 私の努力何なのよって思うでしょ!!」
錬金術は失われた魔術体系の一つ。
平たく言えば物質を原子レベルまで分解し、別の物質に作り変える魔術だ。土くれを黄金に変えるように、分解の具合次第で全く性質の異なる結果を導き出すそれは、魔術でありながら無から有を生み出す魔法に最も近い術式と言われていたらしい。
しかし
「アプローチが違う。あれはそもそも錬金術じゃない。だから比べる事自体がおかしな話……でも、結果が同じでしかも精度負けてると……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
一人でぶつぶつ言いながら、
「確か、
「えぇ、そうよ。
「あぁ、隊長のこと『パパ』って呼んでた子ですね……」
「……」
気のせいか、レイナと
「フン」
「ちょっと、どこ行く気よ?」
そそくさとその場を立ち去ろうとするカインを
「シーマ達のところだ。連中の様子でも見に行ってくる。ここにいると延々と愚痴を聞かされそうなんでな」
「あ、なら私も行くよ。マキにゃん、ここよろしくね」
「はい」
そうしてカインとレイナは
・2・
「黒い
「……」
ユウトの問いに
「君の悪い癖だよ
「……はぁ、分かった。話す」
二人に問い詰められた
「ッ……!?」
あるはずのものが無くなっていた。
「
「見ての通りだ。完治してる」
ワイズマン研究の副作用。その影響で彼の体に入った
「あいつは……アートマンは、俺の
「アートマン……それが黒い
それはユウトも同感だ。普通に考えて絶対に何か企みがあると見るべきだろう。
「ファンなんだと、俺たち3人の」
「「ファン?」」
ユウトと
「どこまで本気かは知らねぇが、少なくとも俺と会ったあの時点でのヤツの目的はたった一つだった。俺とユウト、そして
「その結果、彼女は全能の果実を口にし、全盛期の力を取り戻した」
「正直、選択肢はなかった。あのまま眠り続けていたら
ユウトを見る
「……」
実際、手段はどうあれ、ユウトだって
問題はそれが正攻法で為し遂げられたものではないということ。
「となるとユウト君が
「偶然じゃ、ない……」
黒い
「ユウト君、君が力を取り戻したきっかけは知らぬ間に君の眷属になっていたリュゼ・アークトゥルスだったという話だよね?
「あ、あぁ」
そこから先はユウトにも容易に想像できた。
つまり――
「
「あるいは彼が
いずれにしても、確かめなければならないことができた。
「
「あぁ、分かってる。見世物になるのは俺だってごめんだ」
悪行の限りを尽くした
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