第200話 番の偽神 -The mighty one-
・1・
全方位から襲い来る紅の
逃げ場などない。この空間そのものが
「ッ……あいつ、何で私らを攻撃すんだよ!?」
さすがに動揺を隠せない
「わからない! けど、どう見たってまともな状態じゃない!!」
ユウトは蒼い瞳を見開き、
どんな生命にも魔力は宿る。だが、魔力があれば魔法が使えるかといえばそうではない。
その魔力で自分の心象を定義し、現実に
(何が……)
元々、彼女に魔法使いの素養はなかった。ルーンの腕輪のような矯正装置でもあれば話は別だが、そもそもあれは海上都市という特異点だからこそ十全に機能する例外中の例外。だとしたら他に――
(あれは……魔力パス? まさか……)
ユウトの目に映る細い線のような力の奔流。そこで外部から無尽蔵の魔力が
「アリスの眷属になってるのか?」
「眷属!? あー、そういう……」
無論、
ユウトはそう推論を立てた。
「……あいつの、血を……浴びるな……ッ」
「!?」
気を失って倒れていた
「血を浴びるなって、どういう意味だ坊主?」
「言葉通り、だよ……あの女の、血を浴びると……力が、使えなくなる……」
その言葉に
「厄介な……ッ」
「
「しまっ――」
弾幕のように飛び交う血刃が彼女の右脇腹を僅かに抉る。咄嗟に身を翻したのが功を奏したが、フランが声を掛けなければ確実にもっと深手を負っていた。
「いっ……ッ」
問題はこの一撃が
本来であればこの程度の傷は何の問題にもならない。彼女には受けた傷を遥かに上回る再生能力があるからだ。だが今、その能力は死んでいる。
「傷が塞がらない……どうやらマジみたいだ」
「ハッ! 最初から言ってるだろ? 勝てる見込みがあるってな!!」
不敵な笑みを浮かべる
「それは、
彼女の手にあったのは
「
彼女は
『Chaos on ......
『
耳をつんざく
「ベルヴェルークまで……」
「アリスと繋がることで、ようやく我々もこの槍を制御できるようになったのさ」
それだけではない。
天蓋から無数の黄金樹の根が伸び、絡まり、二人を覆い隠す繭を形成した。
『Distort ...... Omega Extended!!』
次の瞬間、
繭の中で装着者たち自身も一つに溶け合い、胎内で新たな生命が産声を上げた。
『フフ、フフフ……ついに私……いいえ、私たちも神の力を手に入れてやったわ! アハハ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!』
光の繭が花開き、その中から
目元を塞がれた女神のような出で立ちの異形。そしてそれを守護するように巨大な腕で抱きしめる雄々しき男神。
「ッ……!?」
「でか……ッ!」
『金も! 権力も!
『もう誰にも舐めた口は利かせねぇ! 私が、この翠の叡智こそが! 唯一無二の
「「「ッ!?」」」
声を失うユウトたち。
直後、
『かつて100万の軍勢を使役したソフィア・フラムベルグの『
彼女が召喚した猟兵の数はかつてのそれを遥かに上回る。その数およそ3億。全ての個体が凄まじい練度を誇り、なおかつ
『どうだ、大国を敵に回す気分は? 恐ろしいか? 頼むから簡単に死んでくれるなよ? せめて肩慣らしくらいにはなって――』
突如、
『ッ……!?』
何が起きたのか?
彼女には全く理解できなかった。
気付いた時には猟兵の数がごっそり削られていた。それだけは変えようのない事実として認識できる。
「……恐ろしい? そんなわけないだろ」
『何……ッッ』
それをやった張本人――ユウトの傍には二匹の神獣がいた。
灼熱の鬣を持つ赤獅子。そして陰に潜みし翼の黒豹。いずれもユウトの魔法――
「お前なんかより
そう言い切るユウト。
その後ろで
「惚気……なんて言うようなヤツじゃないから、まぁ本心なんだろうけど……」
「
「はぁ……知ーらね」
「?」
それが乙女にとってとんでもない
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