第175話 猛る鬼神、疾走せし鋼 -Grendel and Regnant-
・1・
「ッ、この反応……あいつ、やったみたいね」
「カイン君ですか?」
計測器の前で笑みを浮かべる
「えぇ、あいつに渡したグレンデルの覚醒を確認したわ。大方あの右腕に取り込んで強制展開ってところでしょ」
「結局、カイン君の右腕って何なんだろう?」
「さぁ?
「へぇ……ゔぇ!?」
一拍遅れて
「これでよし」
明らかに膨大な作業量を僅か数分で片付けた
「これって……例の新型
「今のあいつの波長に合わせてレグナントを調節し直したわ。これで今度こそ起動するはず……頼むわよ~」
本来グレンデルはレグナントを用いて起動するという今と真逆のプロセスで設計されたもの。だからこのタイミングで今一度
「新しい
長剣型のトリムルト。
リボルバー型のシャムロック。
そしてレイナの持つランス型のレギンレイヴといったように。
しかし逆に言えば、腕輪状態からでは元の形を判別できない。
「無論、傑作よ。私の持てる技術の粋を集めたんだから当然でしょ?」
平静を装いつつも
「
・2・
「フン、チートじゃと? そんなものが何だというんだ?」
だがカインはその魔弾をいとも簡単に右腕で払いのけた。
「……ッ!?」
「遅ぇつったろ」
尋常ではない。それ以前にありえない。
魔弾の速度は通常のライフル弾の10倍を行く。戦闘機はもちろん、対空ミサイルでさえ追い付けないほどの速さだ。人間の動体視力でどうこうできる次元はとっくに超えているはずなのに。
「今度はこっちの番だ!」
「く……ッ」
カインの足に力が入ると地面が豪快に抉れ、彼の姿も消えた。
「ハァッ!!」
カインの右足が
「ぐは……ッ!?」
敵の速さに反応できなかったことはひとまずいい。体に開いた大穴も直に元に戻る。それよりも問題はカインの姿だ。
(右腕の装甲が……両足に……)
あの一瞬でカインの姿は目覚ましい変化を遂げていた。
彼の代名詞とも呼べる異形の右腕は人の姿を得ており、代わりに
(鎧ごと右腕の力を移動したのか!?)
己の
「ッ!?」
すると空間がよじれ、遅れて凄まじい衝撃の雪崩が
「チッ、妙な感覚だなこれ。右腕がスースーするっつーか……慣れるまでもう少し時間がいるか」
力を倍増し、完全制御するグレンデルの拡張権能。
「ッ!」
砂塵から弾丸の如く飛び出した
『
すれ違いざまの刹那。グレンデルの鎧がカインの意思に呼応し電子音を発すると、両足の装甲が再び元あった右腕へと移動する。
「何……ッ!?」
「おおおおおおおおお!!」
五本の指に再び魔力が凝縮して光の爪を成し、振り下ろされた一閃は
「ぐッ……が……ハハ、何をしようが……無駄だ。ワシは、死にはせん……」
「だろうな。今のあんたは無限に湧いてくる雑兵だ」
「フッ……言い得て妙じゃな」
確かに
見方を変えれば、それは『生かされている』ようにも取れる。
『カイン! 見つけたよ!』
その時、どこかの鏡の中からシーマの声が響いた。
『城の中心――魔力の心臓部!』
彼女がそう叫ぶと鏡から光が伸び、それは反射することなく別の鏡へと呑み込まれ、またどこか別の鏡から伸びてを繰り返す。そうして最終的にはカインの足元を照らした。
すなわちそれがこの城の心臓部への唯一のルートだ。
「まさか、ワシの相手をしておる間に……」
『フフ、潜入は私の
「そういうこった。もうあんたは敵じゃねぇ」
そう言ってカインは今まで使うことができなかった
「いよいよお前の出番だ」
グレンデルの完全制御能力。
その権能で今度こそレグナントは起動する。腕輪は眩い光を放ち、本来あるべき形へと変化を始めた。
「……ッ」
この場に生ける者全ての心臓を揺さぶる激しい鼓動――否、それは雷鳴の如く轟くエンジン音だ。
「へぇ、なかなかいい趣味してんじゃねぇか」
カインは『それ』に跨り、スロットルを回した。
「さて、仕上げは城攻めだ」
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