行間4-2 -切り札-
「チェシャ、
「あなた、何でそんな場所でくつろいでるの?」
♥のキング――チェシャのその声は通信越しでも呆れているのがよくわかる。しかし
「木を隠すなら森の中って言うじゃないですか。あなた方と違って私は直接戦闘向きではないですから」
「隠れようとする人間がそんな目立つ格好をしていいのか?」
もう一人。♠のキング――
「大丈夫ですよ。多様性を重んじるこの国において、私程度に奇異の目を向ける者などいません。それに……もうすぐ祭りの時間だ」
辺り一面に充満する異様な熱気を感じ満足げに微笑みながら、
「そんなことより首尾はどうなの? わざわざ連絡を寄越したくらいなのだからそろそろ私の出番なんでしょ?」
「えぇ、
「
それもそのはず。彼はようやく『本来の存在意義』を全うできるのだから。
「……ジョーカーが創り上げた対メアリー戦の切り札か」
「フン、金勘定だけの小賢しい参謀よりは幾分マシよ」
「ハハ、今回は誉め言葉と受け取っておきましょう」
「どうかしくじることの無いように。でないと消えてしまうかもしれませんよ? 私と同じように、もしかするとあなた方も
車道に出た彼は最後にそう言い残し、携帯端末をごみ箱に捨てる。そして熱気渦巻く人混みの中へと消えていった。
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