第115話 混沌神機 -Chaos gear-
・1・
「ッ……あれはリサの!?」
そのうちの一つにカインは見覚えがあった。バベルハイズでリサ・ストラーダが使用していた
そしてもう一つは黄金のメモリー。形状から察するにこちらはおそらく
「チッ、
「随分彼女とは仲が良いようだ。だが機密まで漏らしているのであれば対応を考えなければならんな」
『Chaos on ......』
続いて黄金のメモリーを装填。
その直後、彼の背後で黄金の龍がとぐろを巻き、次いで現れた黒い影が同じ龍の形に変わる。光と闇、二対の龍が
「まだ調整段階だ。加減は期待するな」
「「……ッ!?」」
『Distort ...... Omega Extended!!』
次の瞬間、その全てが砕け散った。
「く……ッ、何が……!?」
あまりの眩しさに目が眩んだカインはゆっくりと瞼を開く。そこにあったのは黄金の鎧を纏った
「あれは……魔装、なのか?」
「大層派手な演出だが、結局は堕天の範疇って所か? 舐められたもんだねぇ」
「フン、
互いに素早く地面を蹴る。両者の武器が正面から激突し、その余波で隔絶された世界が震えた。
「ハッ、確かに
ドルジは
「残念、ハズレだ」
偽物は消失し、残る幻影が一斉に攻撃を加える。
「ッ!?」
「どうした? そんなものか?」
しかし
「チッ、さすがに見掛け倒しじゃねぇってことか」
しかしそれはドルジも想定内。彼は満身創痍のカインに狙いを定めると、一気に距離を詰め回し蹴りを放つ。
「ヒャッハーッ!!」
「く……がッ!」
カインは咄嗟にガードするが、魔装で極限まで強化された身体能力を適切に捌ききれずに吹き飛ばされてしまう。
「テ……メェ……ッ」
ドルジは彼のポケットからこぼれ落ちたロストメモリーを拾い上げた。
「お、いいモンみっけ♪」
彼の狙いは最初からカインの
『
刃は破邪の光を灯し、灼熱を帯びる。
「……アイツ、
「ヒャハハ! こいつでも喰らってろや!」
ドルジは剣を振り、カインよりも巨大な炎撃を放った。
しかし――
「フン」
『Injection ...... Locking Down』
次の瞬間、メサイアの炎撃が跡形もなく消失した。
「……ッ!?」
それだけではない。ドルジの
「おいおい!? そういうことかよ!」
封槍メモリーロッカー。
『摂理』を司る
それが意味するのはすなわち――
「これでこの
「ッ……、冗談じゃねぇ!」
ここに来て初めて明確な焦りを見せるドルジ。彼は幻影を纏い、その姿を再び闇と同化させるが――
「無駄だ」
『Messiah ......』
光は彼の周囲で四つのプリズムを形成する。
『Decoding Break』
電子音の後、プリズムは高速で四方に展開する。そして強烈な光で広範囲を余すことなく照らし出した。そのあまりの光量に全てが等しく白に染まる。そして闇に隠れた魔人が強制的に引きずり出された。
「そこか!」
「チ……ッ!」
すかさず
『Injection ...... Locking Down』
槍はドルジに直撃し、魔人の体を容赦なく吹き飛ばした。ドルジの体は幻影のビルをいくつも貫通する。
「ジャブダル……狙ったものとは違うか。器用なヤツだ」
封槍を手元に再召喚し、
「……あの野郎の気配が消えた」
「そのようだ」
「まだ立てるだろう?
「……アンタ、そんなおもちゃのためにリサを利用したのか?」
背を向ける
「……その通りだ」
「ッ――」
「勘違いするな」
「!?」
「私たちは敵同士。私を義母の仇と思うのなら、君が持つべきは言葉ではなく刃だ」
「要するに……文句があるなら掛かって来いってことかよ?」
「君に譲れない物があるように、私にも成し遂げなければならない使命がある、ということだ」
気のせいか、
「……教授」
そんな時、物陰から車椅子に乗った白髪の女性が現れた。
エトワール。
「あの女がその使命ってやつなのか?」
「……君には関係のないことだ」
エトワールはゆっくりと
(リサを利用した報いは必ず受けさせる。けど今は――)
カインは海上都市の中央にそびえ立つ黒き巨塔を見る。
「仕方ねぇからアンタを優先してやる。だからさっさとこのくだらねぇ夢を終わらせろ」
そこで戦っているはずのユウトに向けて、彼は独り言のように呟いた。
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