行間2-4 -絶望的平和論-

 この世界から『争い』を無くしたい?

 誰もが願うその夢を、絶望たつもが叶えましょう。

 『平和』。いいですよね。絶望たつもも大好きです。


 え? 具体的にどうするのかって?


 そんなの決まっている。

 特効薬は一つしか存在しない。それは、



 ——全ての人間にとびきりの『絶望』を味わわせる。



 ただそれだけ。

 だから絶望たつもは武器を売る。人が生み出した『争い』の象徴を。


 東の国に銃を売れば、西の国にはミサイルを売りましょう。

 北の国に戦車を売れば、南の国には戦闘機を売りましょう。


 悲劇は延々と繰り返され、我関せずの傍観者オーディエンスすら巻き込んで、全てを絶望に染め上げる。行きつく所まで行って、もうこれ以上戦いたくない。奪われたくない。全ての当事者が泣いてそう懇願するまで終わる事はない。

 そのための犠牲は必要経費だ。金はもちろん、人の命さえも。

 実際の所、何人死んだって構わない。むしろ多い方がいい。殺すの、得意でしょ? だってこの世界は時計の針が一回転する度に、どこかで誰かが命を落とす仕組みになっている。

 誰かが闘争に敗れ、誰かが勝利する。そうして生まれる敗者の憎悪は周囲に伝染し、勝者の欲望は新たな火種を生む。

 人間だけが持ち得る絶望の連鎖。

 絶望こそが人の本質であり、人に変革を促す唯一にして絶対の兵器くすりなのです。


 強者を圧倒する力を求めるならそれを与えましょう。

 弱者を蹂躙する愉悦を得たいのなら標的えさだって用意しましょう。


 だから絶望たつもの武器でもっともっと戦ってください。

 もっともっと奪ってください。

 もっともっと泣いてください。

 そうやってお互いの血肉を限界まで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで削いで――









 例えその果てに何も残らなかったとしても、そこに『争い』さえなければ、これってもう立派な『平和』だと思いませんか?

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