後日談
「とりあえずは、一件落着と言ったところかな?」
学園にある校舎のうちの一つの屋上から、エヴァ眼下の学生たちを見下ろしている。
学生たちが登校する時間帯なので、その数は多い。
「そうですね。国王にも釘は刺しましたし、ひとまずは安心でしょう」
エヴァの言葉に、カインは同意するように頷いた。
魔物の襲撃から数日が過ぎ、学園はすでに平穏を取り戻していた。
当事者であるカインたちを除き、学園で起こったことは誰も知らない。
国王が箝口令を敷いたためだ。
この箝口令は国王が自身の不祥事を隠すためという目的もあるが、それ以上に学園に魔物が侵入したという歴史上類を見ない大事件を隠蔽するためのものでもある。
「……すまなかったね」
「それは、何に対する謝罪ですか?」
「良かれと思って君をこの学園に招いたが、どうやら裏目に出てしまったことに対してだよ。結局また、君に迷惑をかけてしまった。本当に申し訳ないことをした」
深々と頭を下げるエヴァ。
「顔を上げてください、学園長」
カインに言われ顔を上げると、エヴァの瞳に映っていたのは、カインの笑顔だった。
「僕は学園長には感謝していますよ。おかげで、とても大切なことを思い出せました」
「カイン……」
久しく見なかった弟子の表情に釣られ、エヴァも口角を吊り上げる。
「これからも教官は続けるのかい?」
「ええ、もちろん」
そこでカインの視線を下の学生たちに向ける。
学生たちの中には、アルティとミリィの姿も見受けられた。
「それに、まだミリィさんとの約束も果たしていませんから」
「そうか。それなら頑張りたまえ」
「はい、頑張ります」
エヴァのエールを受け、カインは屋上から飛び降りる。
――アルティに謝罪するために。
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