第4話~狂って早漏~

「んああああ!!出ちゃう!!フードひっくり返ってフードが馬鹿になっちゃうううう」

 あの日からずっとフード女子と一緒にいる。もう何ヶ月過ぎただろうか。腹が減ればフード女子のフードから食材を引っ張り出している。乳を揉んでも何も反応しないフード女子が自分の中の女を爆発させる瞬間を見て何度も陰茎を磨き上げる。それをフード女子に見せつけている時は気分が良いが、淡黄色の液体を吐き出すと途端に死にたくなる。

 「はい、ご飯。ハムカツと千キャベツ。じゃがいもとわかめのお味噌汁」

 精液を拭った手も洗わずに飯を口に運ぶ。飯を噛みしめるごとに目の前のフード女子を自由にできない鬱屈が襲う。口内なら挿入できるのではないかと考えたが、それも拒否された。肛門性交ならばと考えたが、このフード女子は廉価版らしく肛門が付いていなかった。

「どうすれば僕の物になってくれるんだ?」

「何度も説明しているけど、それは無理なの」

「僕は君が欲しい」

「性行為以外のことはしてあげる」

 吹雪が強く窓を打ち付けバンバンと鳴る。僕の心もバンバンと鳴る。フード女子をメチャクチャにしたい気持ちが高まってきている。しかしやると死ぬ。死ぬからなんだというのだ。どうせ人間は僕1人。女性がいなければ人類を復活させられない。もう人類の滅亡は免れない。だから僕が生きていることに何の意味も無い。人類を守る装置を作ってしまっていたからか死ぬことを無駄に嫌悪してしまう。希望を見出して進む事も絶望して終わらせることもできない。ただただ無為に飯を食い、フード女子の全身を舐め、陰茎を磨き上げる。それだけの生活が続いている。

「僕に……出て行って欲しいとか言わないんだな?」

「言わないよ。フード女子だもん」

「僕は君のマスターじゃないのに」

「外に出ると死んじゃうよ。だったらいれば良いじゃない」

 少し話すとまた無言の時間が続く。フード女子はベッドに座り足をばたつかせている。足の隙間から下着が見え、またも自己解決するしかないリビドーが鎌首をもたげる。腹は減っていない。しかし、フードから食べ物を出す時の顔が見たくて何度も何度も何度も食べ物を引きずりだした。部屋には食べ物が溢れかえっている。絶滅の時代に飽食の空間。消費するのは僕1人という皮肉。発散しきれない感情。暖かな部屋。豪雪舞う世界。全てが歪つに感じる。


 僕はこの世界でどのように生きていけば良いのだろうか。どれだけ先かは分からないが死は免れない。そして人間の女が存在しない限り、人類の絶滅も免れない。いつ死ぬか分からない日常の中では頭の片隅に追いやることができた思いが大きくなる。人間、いや、男だからか最後の望みは「せめてセックスしたい」に集約される。全力で思い切りセックスをしたい。この可憐なフード女子とのセックスはどんなセックスなのかを夢想する。昨日なんて何年ぶりかもわからない夢精までしてしまった。


 フード女子はフードから食材を取り出す時以外は本を読んだり編み物をしたりと自由に行動している。ただ時間を過ごしている。セクサロイドには生きる意味もないだろうし、死ぬ理由もない。もう存在しないマスターを待ち続けるだろう。ただただ待ち続ける。フード女子の燃料は大気中に含まれる【フード女子素】だ。この星が滅ぶ瞬間まで生き続ける。

 この世界には他のフード女子もいるのだろうか?探せば僕のリビドーを受け入れてくれるフード女子はいるのだろうか?何度も窓の外に目をやる。外は恐ろしく吹雪いている。あの寒さの中、確証を持てない答えを探すのは無理だ。毎日がこの思考の繰り返し。結局動くこともなくフード女子のフードに腕を入れ、食材を出し、フードから溢れる汁を陰茎に塗りつけて磨き上げる。


 そんな時だ、ふと考えついた。フードに陰茎を挿れるのはセーフなのだろうか?アレだけぬるぬると液体が溢れるフードだ。挿れると膣と同じような感覚があるに違いない。以前発売されたオナホール、【スーパーリアル膣P4】と同じような物だろう。

「フードに……」

「なあに?」

「フードに……入れて良いかな?」

「お腹空いたの?」

「いや……ちんちん……」

 言うつもりは無かったのに言ってしまった。根本の願いというのは往々にしてそういう物だ。フード女子は表情を帰ることなく僕を見つめる。その唇に微笑みを感じられるのは僕の都合の良い妄想なのかもしれない。

 フード女子が僕に背中を向けた。やはり妄想だったようだ。そしてフードを外す。首の後ろには真っ赤なフードが口を開けている。その口は僕を誘っている。これも都合の良い妄想だ。しかし、その妄想を今はただ信じたい。

「うおおおおおお!」

 ズボンを下ろす。もちろん下着と同時に。求めた穴がここにある。フード女子の前面に周り、乱暴に頭を下げさせ土下座体制にする。フードを両手で掴み、陰茎の位置にセット。右手でフードを引っ張る。そして陰茎を、陰茎を、陰茎を差し込む。何も感じない。陰茎は腕より短く、腕より細い。冷や汗が止まらない。童貞を捨てるというのはこういうことなのか?どうすれば良い?まず、圧迫感、必要なのは圧迫感だ。

 フードのトップ部分を陰茎に置く。本当にテントが張られたようになる。そしてフードの上から陰茎を握る。思い切り、思い切りだ。フード女子がビクンと動いた。フードが陰茎を包み込んでいる。フードの温もりを感じる。ゆっくりと前後に動かす。右手じゃない。僕の腰をだ。だってこれはセックスなんだから。セックスなんだ。これはセックスだ。フードからいつもの液体が、液体が溢れてきた。フード女子も感じているのだろうか?しかしフード女子の顔は僕の股下だ。陰嚢に柔らかなフード女子髪が優しく触れる。子供のころ、親と一緒に河川敷に出かけて草むらの上で寝転がった。あの時の感覚に似ている。何度も何度も腰をフードに、陰茎をフードに打ち付ける。ヌチャヌチャと粘液をかき混ぜる音が聞こえる。


 1つになった。1つになったのだ。僕はフード女子と1つになったのだ。フードの温もり、陰茎の熱さ、心の沸騰。全てが1つの命となり、このフードの中に数億の命をぶちまけたい。陰嚢には相変わらずフード女子の髪の毛が当たる。いつもは食材が出て来るフードが今僕の陰茎を包み込んでいる。人類が滅びた世界で僕はフード女子のフードに陰茎をねじ込んでいる。男を喜ばせるだけのセクサロイドの髪が僕の陰嚢に触れている。万能感。これこそが万能感。全ての感情と触感が万能感に紐付き、世界は僕だけの世界になる。

 今、陰嚢から上がってきてる。淡黄色の僕自身が上がってきている。今までは引き摺り出すだけだったフードの中に注入する。僕でフードを満たす。僕とフードが1つになる。陰嚢が上に引き上げられる。放出は近い。


「楽しいですか?」


 フード女子が喋った。ただ、ただ1つの疑問を当たり前に言う。だけど、僕にはそれが凄く突き刺さったんだ。


「うるさい!」

「世界にはあなた1人なのよ」

「うるさい!」


 ただガムシャラに腰を振った。ただ強く陰茎を握った。獣みたいな叫び声が聞こえる。フード女子が叫んでいるのかと思ったが、それは僕の声だった。

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