帰宅部活動記録
マムルーク
後輩
「さあ! 今日も部活だ。盛田」
「はい! 先輩!」
俺の名前は喜多久須流(きたくする)。地方の自称進学校に通う高校2年生である。
俺は帰宅部に所属している。いつも髪がピンクで身長が低めの女の後輩の引子盛田(ひきこもりた)とともに部活動に励んでいる。
俺は高校一年までバスケ部に所属していた。
しかし、監督のウザさと部活のブラックさに耐えかね退部……いや、転部した。
俺は帰宅部を作った。残念ながら正式な部活じゃないが、地道な活動を続けた結果、盛田を帰宅部に勧誘することができた。
帰宅部の部員は俺と盛田の2名である。部費なし顧問なしの部活である。
「今日の部活は何をするんですか?」
「まずは俺の家にどっちが早く着くか勝負だ」
すると盛田は目を丸くした。
「えー! 先輩より早く家に行くなんて無理ですよ」
「安心しろ、ハンデをやる。ちょっと来い」
俺は盛田を自転車置き場に案内した。
「俺の自転車を貸す。俺は徒歩で帰宅するからお前は自転車で行くんだ。これならいいだろう?」
「た、確かに……これなら行けそうです!」
「あと、負けた方はジュースを奢るってのはどうだ?」
「いいでしょう! 負けません!」
盛田はペダルの位置を調整し、スタンバッた。
そして、校門のところに行き、準備態勢に入った。
「5、4、3、2、1……スタート」
俺がカウントダウンを言い終えると盛田はスタートダッシュを切った。
「事故起こすなよー!」
張り切る盛田に忠告を送った。
さて……帰宅するか。高校は山の上にある。
俺は斜面が急な山道をダッシュで駆け下りた。ここは自転車では降りられない。
次に一人通るのがやっとな狭い通路を通り、最短距離で家を目指した。
通路を抜け、田んぼの通り道をダッシュで走ると家に着いた。
盛田は俺が到着した三分後に着いた。
「はぁ……はぁ……先輩、帰宅するの早すぎじゃないですか?」
「近道を使えばこんなの造作もない。それよりもジュース」
「く……!」
盛田にジュース(アサヒスゥーパ……ではなく、コカコーラ)を購入してもらい、俺たちは家に入った。
「今日は家で何をするんですか?」
俺はあるDVDを手にとった。すると盛田は顔を赤くした。
「せ、先輩! まさか、私とアダルティックなDVDを見ようってんですか!?」
盛田は壮大な勘違いをした。
「うん。違う。これは名作のアニメ映画だ」
「へーなんてタイトルですか?」
さして興味がなさそうに訊いた。
「クレヨンしんちゃんの映画で大人帝国の逆襲って言うんだ」
「あーなんかみんな名作って言いますよね。私、まだ見たことないんですけど」
パッケージにはハンカチを用意せよという謳い文句が書いてある。
「俺は小さい頃一度見た。もう一度見ようと思う」
「私はあんまり興味がありませんけど、とりあえず見てみますか」
俺はDVDを再生させた。
およそ1時間半後、映画が終了した。
「うわーん! 感動したぁ。ひろしの回想シーンとかしんちゃんが東京タワー登るシーンとかやばかったぁ……」
盛田は涙を浮かばせながら映画の感想を述べた。
「そ、そうだな……」
俺も映画を見ていてうるっときた。ひろしの回想まじやばい。BGMだけで泣けそうだった。
「あれ? 先輩も泣いてません?」
俺は恥ずかしさのあまり体温が上がりそうだった。
「な、泣いてない! ゴミに目が入っただけだ!」
「それを言うなら目にゴミが入ったでしょ……」
盛田から至極真っ当なツッコミを受けた。
その後、俺たちはライアーゲームの再放送を見たり、トランプをしてるとあっという間に暗くなった。
「もうこんな時間か。近くまで送っていくよ」
「ありがとうございます」
歩きながら俺はこんな質問を盛田にした。
「なぁ、盛田。俺から勧誘しといて何だが、お前は帰宅部でよかったのか?」
「もちろんです! 帰宅部は練習もないですし面倒な顧問や先輩もいない最高の部活ですよ!」
盛田が可愛らしく微笑んだ。
「けど、お前バスケ部から勧誘があったんじゃないのか?」
実は盛田を中学時代から知っている。同じ地区であり大活躍していたのを覚えていた。
「ありましたよ。ありましたけど……」
盛田が顔を俯いた後、顔をあげて答えた。
「先輩と遊ぶほうが楽しそうだと思ったんです!」
はっきり言われて少し照れくさかった。
「そっか。なら良かった。明日もよろしくな!」
さて、明日の帰宅部の活動は何をしようかな。
帰宅部活動記録 マムルーク @tyandora
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