第5話男の娘ルートを選択するのは間違っている。
放課後。俺はお昼休みのことを思い出していた。
『ありがとう…』
彼女(男の娘)が涙ながらに言った言葉。
そして、俺の胸に顔うずめる彼女(男の娘)
冷静に考えましょうか…これって…
完璧に男の娘ルート進んでますよねぇぇええ!
何!自分から男の娘ルート選択してるの?!その場の流れに流されすぎだろ俺!
確かにシリアスな雰囲気だったし、仕方ないかもしれないけども、他にやりようがあったでしょぉぉおお!
はぁ。最近ため息ばっかりついてるよなぁ…俺は。
でも、もう終わったことはしょうがない。ルート変更できるように頑張るしかない!
というか、ルート変更できますよねぇ?すでに詰んでしまったってことないですよねぇ?
もう不安でいっぱいだよ…
「航。一緒に帰ろうぜ!」
いつも通り智也が誘ってくる。
その言葉に反応して、こちらを気にするリービー。彼女の方からスゴイ視線を感じるんだけど。
その視線に気付いた智也が話す。
「あっ!航。悪い!お前にはリービーちゃんがいるもんな!今日は俺は他の人と帰るから!」
「智也…おれにとってはその対応、ただのありがた迷惑なんですが…」
「まぁ照れるなよ。お昼休み何があったか知らないが、航達が教室に入ってきたとき、すごい二人だけの雰囲気出てたぞ!まぁ…一応、学生なんだし、ほどほどになっ!」
親指を立てて、ものすごい良い笑顔でグッドポーズをする智也。
「ほどほどって何っ!?智也の中では何があったと思ってるの!?」
「言わせるなよ。恥ずかしい」
「違うからっ!智也の思っているようなことなかったからねっ!?」
「ウソだろ…俺が思っている以上のことをやってたのか…航は…大人の男に…なったんだな…」
慈愛に満ちた目で見てくる智也
「なんでそうなるんだよ!そういう意味じゃねーよ!それ以上もそれ以下も、やってねーよ!」
「えっ?社交ダンスの練習してたんじゃないの?」
「へっ?」
「だから、体育の授業の社交ダンスのテストがあるから、リービーちゃんとペアを組んで、二人だけの雰囲気になるくらい練習してたんでしょ?俺には恥ずかしくて社交ダンスの練習なんてできないけどさ。そして、難易度の高い最後の決めポーズお姫様抱っこができるくらい大人の男になったんだよね?だけど、他の科目の小テストもあるから、ダンスの練習もほどほどにしとけよ!ってことなんだけど?」
「まぎらわしい言い方すぎるでしょぉぉぉおおお!」
「ということで、俺先帰るから、じゃ!」
そう言い残して、教室を出ていく智也。
俺は教科書をカバンに入れて、帰る準備をする。
まぁ、今日は彼女と帰るか。
「リービー。そろそろ帰るぞ。」
「パートナーなんだから、当然だよねっ!」
ニコッと笑いながら言うリービー。
なんでちょっと嬉しそうなんだよ。あくまで、彼女の目的の為に一緒に帰るだけだから。他意はないから!
「私も一緒に帰っていいかな?」
そう言ったのは、星空くるみだった。
住宅街を歩く俺たち三人。
「航と帰るのは久しぶりだね?」
くるみが俺に尋ねる。
「まぁ、くるみは吹奏楽部があるし、帰る時間がバラバラだからな。」
「だから、久しぶりに一緒に帰れて…嬉しいよ!」
「そんな大げさな。話したいことがあれば近所なんだから、話せるんだしさ!」
「…そうだね!話変わるけど、航とリービーさんは仲いいよね!航が転校生とこんなに早く仲良くなるなんて思わなかったよ。」
「と、特別仲良いってわけじゃないよ。ただの友達だよ。そ、そう!転校初日の朝、わけあって困っているリービーを助けたんだよね…」
リービーが女神だってことは言えないから、ここはうまい理由を付けないと!さらに、リービーとは男女の仲でもないってことを明確にしておかないと!そもそも
ここで、リービーも会話に参加する。
「航がその日ボクを助けてくれたんだ。」
彼女が目で俺に訴えかける。
(ボクに任せて!うまくばれないように対処するから)
そして、ウインクをする彼女。
そうだ!俺とお前はパートナーなんだから、協力するんだ!
俺は心の中で意気込むと、話し始める。
「そうなんだよ!朝、通学する時、道で彼女が倒れてたんだ!それで彼女を学校まで一緒に連れて行ったんだよ。だ、だから今日遅刻しちゃったんだ!」
「そうなんだね!ん?…でも、今日の朝、魔法少女の格好した男が倒れていたって…」
くるみは不思議そうな顔をする。
「そ、そうそう。魔法少女の男も助けたんだよ。いや~春になると、いろんな人が道に倒れてるからね。よくあることだよ!」
「よくあることなの!?春の気候がそんな影響を与えるなんて聞いたことないよっ!?」
「ボ、ボクも聞いたことあるよ。春は人を倒れやすくさせるって!なんやかんやでそうなるって!」
「それ、知らないの私だけなの!?一般常識的なことなの!?というか、なんやかんやって何!?そこが一番気になるんだけどっ!」
「俺の母さんもよくご近所さんとこう話してるよ。”人が倒れてますねぇ~”、’ほんとですわねぇ~’、”春ですねぇ~”、’風情がありますわねぇ~’って」
「そんな会話聞いたことないよっ!というか、井戸端会議する前に、まず救急車よんであげてぇぇええ!」
息があがりながらも、ツッコむくるみ。
呼吸を整えると、また話しだす。
「…まぁ二人がそういうのなら、そうなのかもしれないけど…」
納得できないという顔をするくるみだが、最終的にはこの考えを受け入れたようだった。
(くるみ…ごめん)
全くのデタラメを言った俺は、心の中で謝罪するのだった。
「それにね。ボク血圧低くてさ。朝は弱いんだ。さらに転校初日だったから、緊張もあって、倒れてしまったんだと思う。」
「そうなの…リービーさんも大変だね。もし何か困ったことがあったら、私に言ってね。」
くるみは彼女に優しく微笑みかける。
なんだかんだでうまくいったか?二人の仲もよさそうだし、リービーが困っても、くるみがいれば安心だな。
俺はホッと息をはく。
すると、リービーが俺に尋ねる。
「ねぇ航?明日の弁当はどんなおかずがいい?」
「いや、もう別に作る必要な…」
…ってそんな悲しそうな表情しないでくれ。そんな表情されると、作らなくていいって、言えないじゃないですかぁぁああ!
「…お前が大変だったら、作る必要はないよ。」
「全然大丈夫!じゃあ、おかずは?」
「お、お前に任せるよ」
「わかった!おいしくできるように頑張るねっ!」
…ってなんで彼女はそんな嬉しそうな顔するんですかねぇ!
男の娘なんですよね?男が男に手料理してるってことですよねぇ!
それに、なんで”初めての彼に弁当作る女の子”みたいな可愛い表情するんですかねぇぇええ!
やはり男の娘ルートを選択するのは間違っている。
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