第3話転校生が女の子だと思った?

俺はやっぱり遅刻した。だが、運が良いことに校門で生活指導の守屋先生にも見つからず、担任もまだ教室に来ていなかったため、大丈夫だったみたいだ。


教室に入って席に着くと、幼馴染の星空くるみが話しかけてくる。

「どうしたの?遅刻なんて珍しいね!」

もちろん恋愛の女神の件を言えるわけがない。だけど、ウソをつくのもなんか変な感じなので、事実を抜粋して言うことにした。


「実は、道に魔法少女の服装した男が倒れていて、その人と握手したら、パートナーになっちゃって」

「どんな状況?!意味が分からないよ!」

「わかりやすくいうと、”ボクと契約して魔法少女になってよ”的なことかな?」


「そもそも少女じゃないよね!?ただの変態だよね?それ!」

「そうだな。正確には”ボクと契約して変態男子になってよ”かな?」

「変態男子と契約したい人見たことないよっ!」


「まぁ、いろいろあったってことだよ!」

「なんか説明めんどくさくなって、そのセリフ言ってない?」


すると、教室の扉が開き、担任の桜井先生が入ってくる。朝のHRが始まった。

いつも通りのあいさつ、いつも通りの連絡事項を先生は話す。普段なら、これでHRは終わりだ。だが、今回は違った。


「最後にサプライズがある!みんな何だと思う?」

先生がみんなに問いかける。

「今日の授業はナシとか?」

「ちがうぞ!みんなにとっては嬉しいことだぞ」


「これから殺し合いをしてもらいますとか?」

「それはバトルロワイヤルだろ(笑)それを嬉しいと思う生徒がいたら、先生は躊躇なく留年させるぞ!正解は転校生がこのクラスに来ます!」

『おぉ~』


クラス中でワクワクするムードに包まれる。

クラスの女子は、女の子かな男の子かなと盛り上がっている。

俺はそこまで盛り上がることかと思う。まぁ、確かに気にはなるが。


すると後ろの席の秋風智也が俺に話しかける。

「女子かな?女子だったら気にならないか?」

「少しは気になるけど…」

「誰が来るにせよ。席が空いてるのは、航の隣だけだから、そこに座ることになるんじゃね?良かったな(笑)」


「何で笑うんだよ!」

「だって、航、女の子苦手じゃん!幼馴染のくるみは別として」

「…」

図星をつかれた俺は黙り込む。


「航が女子に話しかけられて、何回噛むか、つっかえるか数えるのが楽しいんだよ」

「何を楽しみにしてんの!?おまえ性格悪すぎだろ!」


すると、先生が話す。

「どうぞ!入ってきて。」

教室の中に入ってきた人物は、可愛い美少女だった。

クラス中が「わぁ~」と叫んだ。俺も同様に叫んだ。だが、叫んだ意味は全く違うものだった。


なぜなら、その転校生は…俺にとって最悪な思い出のある恋愛の女神リービーだったからだ。


「私はリービー・コルトネスです。これからよろしくお願いします。」

簡単な自己紹介が終わると、智也の言った通り、俺の隣の席に座るのだった。


そして、リービーはみんなに聞こえないように、手を添えて俺に耳打ちをする。

「ボク、航の恋愛を成就させるために頑張るからね」


そんな甘い声で、耳に息が吹きかかるような距離で話さないでもらえます?

男の娘なのに…男の娘なのに…なんでこんなに女の子っぽいんだよぉぉおお!


一瞬男の娘でも良いかなと思っちゃっただろ!


そして、智也が俺に話かける。

「良かったな。美少女で」

「美少女だったらね」

「お前彼女タイプじゃないの?」

「いや。ちがうよ!」

「恥ずかしがるなよ!」


「いや絶っ対!タイプじゃない!」

「おまえ…まさか…ソッチ系?」

「そうじゃねぇよ!」

「だって、こんな可愛い子をそこまで拒絶するなんて、お前が男好きだとしか考えられない…」


俺は男好き疑惑を払拭するため、しょうがなく言う。

「可愛いと思うよ。それに…少し気になるよ」

「だよな!」


男の子だと知っているのに可愛いと言う気持ちわかりますか?男の子だと知っているのに、気になると言う気持ちわかりますか?きっと江戸時代踏み絵をした人の気持ちはこんなんだったんだろうねっ!

あれ!なんだか涙がでてくるよ…


ふと、リービーの顔を見ると、頬を赤らめて、恥ずかしがる表情をしていた。

お願いだから、その表情やめてぇぇええ!あの発言は本心じゃないから!俺はソッチ系の人間じゃないから!そんな女の子らしい表情するのやめてくれぇぇええ!


毎日こんな感じになると考えると、俺は憂鬱な気分になるのだった。

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