第2話女の子ですか?いいえ。男の娘です。

高校二年生の俺こと佐久間航さくまこうは走っていた。風を切るように、そしてしなやかに。

なぜ走っているのか?

それは、学校に遅れそうだからである。


そして、その原因は、アイツが空から降ってきたからである。


30分前の話に戻ろう。

俺はいつものように、いつもの時間に家を出発した。もちろん、いつもなら、遅れずに学校に着ける。


だが、今日は違った。歩いていると、突然空がカメラのフラッシュのように光った。そして、その数秒後には、空から美少女が降ってきたのだ。着地に失敗したのか、俺の目の前にうつ伏せに倒れる美少女。


もちろん、俺はその美少女に手を差し伸べる…ことはせず、学校に遅れるので、気にせず歩くことにした。

うん!無遅刻無欠席は大事だよね?


「ちょっと、航!倒れている人を無視しないでよ!なんで何事もなかったかのように行っちゃうの!」

可愛らしい声で俺を呼び止める彼女。

俺はびっくりしながらも、冷静に応える。


「えっ?!あぁ…空から落ちてきて、死んでるから、べ、別に良いかなと思って。」

「余計ダメだよ!寧ろ死んだと思ったら、警察くらい電話しようよっ!」

朝から変なのに巻き込まれちゃったなぁ。俺は少し頭が痛くなる。それにこういう美少女はあんまり得意じゃないんだよ。


「まぁ、いいよ。とりあえず自己紹介するよ。ボクは恋愛の女神リービー。航の恋愛を成就させるためにやってきた。」

「えっと…意味が分からないんですが…それになんで俺の名前を知っているんですか?」


「だ・か・ら、航に恋人を作ってあげると言ってんの!名前を知っているのはあたりまえだよ。女神だからね!あと、敬語はやめようよ。これからはパートナーなんだから!」

「なんじゃそりゃ!」

「とりあえず、よろしく航。」


そう言うと彼女は、手を差し伸べて、握手を求めてきた。

僕は彼女の手を握り返す。白くて柔らかい小さな手。彼女からは甘い良い香りが漂ってくる。


その瞬間、僕は美少女と握手していることを実感して、頬が熱くなるのが、自分でもわかった。

「…こちらこそ、よろしく…」

朝から変なことに巻き込まれたけど、こんな可愛い彼女となら、楽しい青春が送れるかもしれないな。


「えっ!?可愛い?」

しまった!どうやら、心の声が漏れていたらしい。

「えっ…その…」

俺はオドオドと、うろたえていると彼女が話し出す。


「あのさ。航。言い忘れてたけど、ボク男の子だよ?」

「えええぇぇぇっ!でも、そのフリルのついた魔法少女みたいな格好してるじゃん!」


「これは恋愛の女神のコスチュームの一つなんだよ。この格好結構気にいってるんだ!」

「紛らわしい格好してんじゃねぇぇぇ!」

「別にいいじゃないか!男の子が女神に憧れたって!」


彼女が頬を膨らまして怒る。なんか可愛い…ってアイツは男だからっ!

彼女じゃなくて、彼だからっ!

俺は男に対して、頬を赤くしたり、柔らかい手の感触で異性として意識したり、俺はソッチの方じゃないからね?!違うからね?!


無意識では受け入れているとかないよね?


俺の頭の中で「俺はソッチの人間じゃない」とフレーズをリピートさせる。


そして、彼つまりリービーは俺に尋ねる。


「恋愛の女神が男の娘でもおかしくないよねっ!」


だが、自分にBLじゃないと必死に言い聞かせていて、心ここにあらずだった俺は、その質問さえも、耳に入らなかったのだ。

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