第3話 現実世界に戻る
ユータは雨の中全力疾走で城がある街までかけていた。街は雨と炎でめちゃくちゃだった。誰かが何かを叫んでいたが、それを雨がかき消すように、炎がすべての悲鳴を飲み込むように、カオス状態になっていた。
街の住民が逃げている中で、ユータは城に向かった。城に着いたときはすでにあたり一面が火で覆われていた。この世界には救急もレスキューもいないのか?
誰も城の人間を助けようとしていなかった。
ユータはためらいながらも火で覆われている城の中に飛び込んだ。中は煙で充満していて、目が痛い。煙を吸わないように服の袖で口を覆ったが、あまりの煙で長くはもたない。
「女王陛下!!女王陛下!!!誰か!!!誰か!」ユータは必死に叫んだが応答はなかった。女王陛下と話をした時計台まで何とかたどり着いた。女王陛下は時計台の下で倒れていた。
女王陛下の所まで行くとおびただしい血を流していた。それは明らかに刃物で刺された後だった。
「ゆ、-、た?」女王陛下は目を閉じたまま、ユータの手を握った。その手は血で染まっていた。ユータはその手を握って「そうです」と彼女に力強くいった。
彼女はすこし笑みを浮かべた、ように思えた。
「ごめんね、ほんとにごめんなさい」彼女は謝った。
ユータは彼女を担いで何とか城から出ようとしたが、すでにすべてが遅かった。さっき通っていた道が炎で覆われていた。
「これを」彼女はユータに懐中時計を渡した。
「これはあなたが現実とこの世界をつなぐものです。きっとあなたにはこれからも必要になります。お願い、これを持って・・・・・ごめんなさいほんとにユータ」
「女王陛下?」
「もうわかっているの。私はここまでよ。あなたには謝ってばかり。頼んでばかりね」彼女はもう一度ユータの手を握り返した。
「ユータ、これからこの世界で生きていくには名前を返さしてもらいます」そして彼女はユータの頭の額に血で名前をつづった。
「ベンジャミン、あなたはこの世界ではベンジャミン・オリバと名乗りなさい」
「ベンジャミン・オリバ?」
「そう、そしてベンジャミン。あなたはこれからジグソーパズルの完成させるために神の記憶を持っている人間を探すことです」
女王陛下はユータにキスを軽くした。
「そんな顔をしないで、ユータ、あなたは一人じゃないわ。私がいつもそばにいます。だからこれから何が起ころうとしてもやり遂げれます」
そして彼女は静かに目をつむった。城の中は炎で真っ赤に燃えていた。ユータはその中で女王陛下を抱きしめながらずっと座っていた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はっ!
ここは?????
ユータが目を覚ました時最初に見えたのは真っ白な天井だった。痛い。体中が痛かった。
・・・・・夢?だったのか?ほどなくしてここが病院だとユータは理解した。そして、医者と看護師、そして、そのあとに父親に連絡が入ってユータは自分の現状を理解した。
自殺したはずだった、だが、未遂で終わった。それが現在の状態だった。医者から言われたのは1か月ぐらいで退院できることだった。父親は「よかったな」それだけ言った。
ユータが自殺未遂したことは一切触れなかった。
1週間ほどで担任の先生、学年主任が病室に来た。
「ユータ君大丈夫?」担任の木の葉先生はユータのことを前から気にはかけてくれる良い先生だった。まだ20代前半で教師生活も短く、ユータのクラスが初めての担任になっている。
「ユータ君、やっぱりこれっていじめがあったからなの?」木の葉先生はユータの目をしっかりと見つめながら言った。
そこへ学年主任の先生が木の葉先生の言葉をさえぎった。
「木の葉先生、ユータ君もまだ意識不明の状態から戻ったばかりですし、そういう話は退院してからでも良いのでは?」
「ですが・・・」
「ユータ君、君もまだ疲れているだろう。今日は私たちはこの辺で帰ります」そして二人帰った。木の葉先生はユータを心配そうに最後まで見て帰った。
わかっていたが、学年主任、そして校長、教頭などはいじめの問題を隠したいのだろう。ユータの学校は歴史のある高等学校である。東京大学にも10名以上は毎年出すほどの歴史ある学校だ。そんな学校でいじめなんかあったらそれこそ学校のイメージが崩れるだろう。
それはユータ自身も知っていた。
また、学校が始まるのか・・・ユータの退院まで1週間になった。
病室でテレビもつけず、電気もつけずに一人静かに自分の体に刺さっている点滴のポタポタしているものを見ていた。
ユータは点滴を抜いた。そしてゆっくりと部屋からでて、病院の屋上まで登った。運がいい、屋上のカギは開いていた。
ユータは屋上の外に出ると真っ暗の中星と月がキラキラと待っていた。
今日ここで死んだらきれいなんだろうなあ。そう思いながらユータはゆっくりと、そしてまっすぐフェンスのほうに向かった。
病院は6階建てである。ここから飛び降りれば今度こそ死ねる!そう思った。
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