第2話master-piece
「自己紹介がまだだったわね。私の名はALICE CLIMB。この6番テーブルの女王です」ユータに自己紹介をした後、彼女は「あなたの名前は?」と聞いてきて「ユータ、神谷ユータです」ユータはすこし詰まりながら彼女に言った。
「ユータ・・・・いい名前ね。母親がつけてくれたの?」
「・・・・・・・・母は自分の出産のせいで死にました。名前は父親がつけてくれました」
「そう、ごめんなさい。悪いこと聞いたわね」
「いえ、もう慣れています。それに写真でしか見たことないので母親のことはよくわからないです」
そして女王陛下はユータの手を両手で握って軽く抱きしめた。
「あなたのことはメモリーツリーから見さしてもらいました。辛かったわね」女王陛下の体は温かく、そして何か懐かしいにおいがした。
ユータは何故か涙が出てきた。そして少しの間、抱きしめあった状態が続いた。
「・・・・・・・・・・ごめんなさい」そして女王はユータの耳元で言った。
「あなたはきっと現実に限界がきて自殺したのでしょう。ですが、この世界は現実よりもずっと厳しい世界です」
女王陛下はユータを立たせた。
「すこしこちらに来てもらってもいいかしら?」二人は城の窓から外を見た。
「・・・・・・・・・・・・これは????」見るとそこには空には太陽がないのである。
だが、空は明るい。不思議だ。
「この世界を作った神様は壊れてしまったの」ALICEは空を見上げながらユータに言った。
「壊れた?」
「そう、この世界はあなたたちでいうところの天国、もしくはあの世なのかもしれないわね。だけど今の世界は天国でもなくあの世でもない不安定な世界になっているの」彼女の話しは続いた。
「理由はこの世界を作った神様というべきなのかしら。それともシステムというべきなのかしらね、それが壊れてしまったからなの。こっちへ来てもらえるかしら」そして女王陛下はは城の中央にある大きな時計台を見せた。それはまるで星屑をちりばめたようなきれいな時計台であった。
「これは?」
「これはあなたたちの世界でいう時間を見るもの。時計というのかしらね。この世界が壊れてしまってからこの時計はずっと止まったままなの。そしてこの時計が完璧に動いたときに世界が修復されるの」その時計は長針の針しかなく、長針の針は6をさしていた。
「今度はこっちを見てくれるかしら」女王陛下はユータを時計台にあるドアの扉を開けた。そこにはジグソーパズルのようなものがパラパラとちりばめられていた。
園ジグソーパズルはとてつもなく大きな大きなパズルだった。正方形で10メートルは1辺はあった。
「これは神様といえばいいのかしらね。この世界を作った人の記憶のカケラ。master-peaceと呼ばれているものです。このパズルが完成したときはじめてこの壊れた世界は完璧なものになります。そして時間も元に戻ります」そう言って女王陛下は外を指さした。外はいつの間にか夜になっていた。
「わかりますか。いまこの世界は時間の概念さえもめちゃくちゃです。いつ夜になるのか昼になるのか朝になるのかさえ分かりません」
そして女王陛下はユータの手を握った。
「簡潔に言います。あなたにはこの世界を修復してほしいのです。ユータ」
「修復?」
「そう、きっとまだよくわからないわよね。死んだ後いきなりきた世界がこんなになっているし、めちゃくちゃよね」そう言って女王陛下はユータから手を離した。
「・・・・さ、今日は疲れたでしょう。いったん私がとっておいた宿屋がありますからそこで今日は休んでください」
「・・・」
「ユータ、これはあなたにしかできないことなの」そして女王陛下はユータを宿屋まで番人に案内させた。
宿屋に着いたユータは服を脱いでシャワーを浴びた。宿はホテル並みに大きく部屋もユータが生きてきた、今はもう死んでいるが一番大きな部屋だった。
「疲れた」ユータはシャワーを頭から熱湯に近いほどの熱い湯をかけていた。たった1日、2日ではまだ何もわからないことだらけだった。
ユータは目をつむりながら生きていたことを思い出していた。
『最初から間違っていたのかもしれないな。お前を育てたのは』
どうでもいいことだ。死んだ人間からしたら。今のこの世界などほんとにどうでもいい。あの女王陛下が何をいおうと何をさせようとしても俺にはどうでもいい。
ほっといてくれ、それがユータの本音だった。静かに暮らしたい。誰かに干渉されるのはまっぴらだ。生きているのがきつくて、つらくて、耐えられなくて、味方も支えもないなかで俺は必死に生きてきた。だけど限界だった。だから、死んだのに。何で死んだ世界がこんな風になっているのか?
ユータはシャワーのお湯と一緒に涙を数滴出した。
シャワーを浴びてユータは寝間着に着替え、彼は外から女王陛下がいる城を見た。この宿屋から見える城は美しくきれいだった。すこし前まであそこで女王陛下と話をしていた。そう思うとやはりまだ現実感がなかった。
ベットに寝転がって天井を見ながらウトウトし始めた。いつもならスマートフォンを見ながら動画や漫画を見て寝るのだが・・・・どうやらスマートフォンもない。
・・・・・いつの間にか眠っていたようだ。ユータは時計を見ようとした。がないことに気づいた。
外を見るとまだ夜なのか真っ暗だった。だが、雨がまるで地面に襲い掛かるような勢いで降り注いでいた。これもユータから見たら初めての光景だった。
雨が滝のように降っている中、女王陛下のいる城が燃えていた。
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