意味のないマスターピース

zero

第1話 死んだ後の世界へようこそ

「・・・・・・・・・・・ここはどこだ?」ユータは気が付いたら地面に寝っ転がっていた。



仰向けに寝ているせいか見渡す限りの星が一面に輝いていた。


星をこれだけ長く見ていたのはいつぶりなのだろうか?




・・・・・・・・・・生きているのか?




『死人には何をしてもいいんだぜ!』




あの日、俺は校舎から飛び降りた。それはいつも通りの日常だった。いつも通りクラスメイトからいじめを受けていた。死ぬのは怖かった。痛いのだろう。そして怖い。だが、明日になるのが怖かった。今日がまた続くのが怖かった。何もかも捨てたかった。



生きるのが怖かった。



そして、その日俺は飛び降りて死んだ・・・・・はずなんだが。




生きているのか?星を眺めながらユータは少しずつ自分の体を確認していった。腕の感覚、足の感覚はオーケー。そして今度は立ち上がり、触覚、嗅覚、味覚、視覚、聴覚の確認を行った。



どれも正常通りである。そして、あたりをゆっくりと360度見渡すとそこは見渡す限りの砂漠だった。きっとエジプトが似合う場所なんだろうとユータは不思議な感覚だった。



喉は不思議と乾いていなかった。すこし歩いてみることにした。



ここはきっと死んだ世界なのだろう。死んだ世界はもっと何もない場所なのだと思っていた。そしてすべてがぼやけている世界なのだろうとユータは想像していたが、感覚もあり、体もある。まだ生きているような感覚だった。ユータは1時間ほど歩いていたが、何も近くには見当たらなかった。見渡す限りの砂漠だった。



そして、歩いていたらいつの間にか太陽が出てきた。



その太陽は真っ二つに割れていた。そして二つの物体が交互に赤い光と青い光を同時にだしていたのである。ずっと見ているとクラクラしてきそうなものだった。



その光で昨日は星だけの光で見えなかったものも見えてきた。ユータが踏んでいる砂漠の砂もユータが知っている砂とすこし形が違っていた。そして、その砂の色もどこか黄色ではなく赤っぽい色だった。いやどちらかといえば血の色にも見えた。


陽が出た後もユータがまっすぐ進んでいった。そしてようやく街らしきものが見えてきたのである。



街が見えたあたりからユータは喉がカラカラになっていた。



どこかで水が飲みたい。そう思いながらユータは街の入口のほうまで行った。



街の入口に着くとそこには白色と黒色が交互に交わった大きな大きな門があった。ユータは誰かいないのか見てみたが、近くには誰もいなかった。


門は閉まっていたし危ないかもしれないと思った。だが、喉がカラカラですぐにでも水を飲みたかった。ユータは扉を開けようとしたらすんなりと開いたのである。


ぎいーーーーー、と門が開くとそれはまるでおとぎ話に出てきそうなほどの幻想的な街並みであった。中世のヨーロッパのような建物だろうか。日本ではない感じの建物がそこら中に立っていた。見渡す限りの豪華な建物だったが、人が見当たらなかった。ユータはどうしようか考えようと思っていたが、本能的に疲れと喉が渇いていた。近くの建物にいってチャイムを鳴らしたが誰も出なかった。ほかの所もすべて同じだった。



ユータは開いている家があったのでその家に勝手に入って水を貰った。



生きかえった。ユータは水だけでなく食べ物も冷蔵庫から貰った。




・・・・・・・・・・・・・起きろ!起きろ!


はッ!!と目が覚めた。どうやら寝ていたらしい。


「てめえいい度胸してるな!勝手に人の家に入って物を食べやがって」



ユータは縄で体を縛られ椅子に座らされている。



ゴフッ!とその状態からその家主はユータのお腹を思い切り殴った。


グエ!とユータ自身自分で初めて聞いたような声を上げた。


「いい声で鳴くなあお前。いったいどこから来たやつだ?」


「・・・・・・・東京です」



「トウキョウ?どこだそりゃ?どっかの田舎か?田舎からここALICEに来たのか?」



「わからないです。自殺したらいつの間にか砂漠で寝ていてそれで歩いていたらここに着いたんです。勝手に入って物を食べたのはほんとにすいません。ですが、喉もカラカラで・・・・」


「フン、そんなのはいいわけなんだよ。明日にはお前を6番テーブルまで行ってもらう。そこで審判をもらいな」そう言って家主は出て言った。




そして次の日、ユータは家主に連れられて、6番テーブルに向かった。街の外は昨日とは全く違っていた。いたるところに人がいた。



「ほら、さっさと歩けのろま」



ユータはロープで縛られたまま街の中を歩いた。


しばらく歩いていくと大きな数字で6と書いてある城が見えた。

「城になんのようだ?」

城の門番が家主に聞いた。

「族が私の家に入りとらえさしてもらいました。つきましては女王様にこいつの罪を決めてほしいと思い連れてきました」


「・・・・・入れ」門番は女王の所まで案内してくれるようである。


中は広大でそして華やか、貴族の人間が住んでいる世界はこんな世界なのかもしれないと感じた。廊下の壁には世界地図のようなものが大きく貼ってあった。それはユータの知っている世界地図とはかけ離れていた。学校で習った世界地図とは違い、そして聞いたこともない国、見たこともない言語で書かれていた。


そして、門番は女王の部屋に着いた。門番が扉を開けると中央に見たこともないような美しい女性が座っていた。

「女王陛下、族を連れてきました」女王陛下は静かに本を両手で持ちながら読んでいた。その目はすべてを知っているような澄んだ目をしていた。そして本を静かに閉じ、ユータを両の目でしっかりとした。



「ありがとう、お二人とも下がってください。私は彼と二人で話したい。あと彼のロープの取ってください」



「はっ!」そう言って家主はユータのロープをほどき、門番と共に外にでた。



「さて」女王陛下は静かに立ち上がりユータのほうに近寄った。



「始めまして」女王陛下はユータに笑みを浮かべユータに話した。



「ようこそ死後の世界へ、そして壊れた世界へ」



壊れた世界、始まりの鐘が静かになった。そして死んだ後も楽園などはなかったとユータは静かに感じた。







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