第2話 氷菓:黄金の林檎 ソリューション・クッキング
黄金の林檎。それは、かつては不老長寿の薬の材料の一つとして挙げられていた、究極の食材。
一つ食すれば、若さが取り戻せる。と言わしめられたほどの、貴重な品。
それが今や、ナザリック地下大墳墓・第六層にて、たわわに実っている。
「マーレ、行くよ~!」
「ま、待ってよ。お姉ちゃん!」
たわわに実った黄金の林檎の樹に、身軽に登頂したアウラと、樹の根元でマントを広げて待ち構えるマーレ。
断じて、スカートではない。アウラであれば、ほど良く投げ込める、受け止められる。だが、一つ二つではないので、今回はマントである。
「アウ
「いっくよ~!」
ぶち、ぽい! ブチブチ、ポイポイ!
「わっ! わわっ!」
咄嗟に投げ込まれた黄金の林檎をマントで受け止めては、リュートが持つ籠にゴロゴロと転がし入れる。
程なく籠が一杯になると、「お姉ちゃん、もう良いよ~!」
「とうっ!」 スチャッ! と樹から飛び降りるアウラ。
「こんなに沢山あるけど、食べ切れるかな?」
リュートがすっぽり収まってしまうほど大きな籠に山盛りにされた黄金の林檎。
「んっとね、
「へぇー、どんなのかな?」
「ど、どんなのだろ?」
「出来たら持ってくるね!」
「うん、楽しみに待ってるからね~」
「うん、待ってる」
アウラとマーレに見送られ、第六層を後にしたリュート。
・・・ ・・・ ・・・
ナザリック地下大墳墓・第五層
「ママ~!
「はい、お疲れ様」
ソリュシャンはリュートから籠を受け取ると、両手で軽々と持ち上げると、ざらざらと深い谷間に流しいれた。
あっという間に一つ残らず、谷間に呑み込まれた黄金の林檎。
アレだけあったというのに、もはや影も形もない。
ソリュシャンはその場で瞑目したまま数分、立ち尽した。
じっとしているかと思いきや、突如として腰を回し始め、ウネウネと【蕩ける踊り】を踊り出したソリュシャン。まさに、男性を蕩かす
リュートもそれに合わせて、ぴょんピョコぴょこピョンと、好きなように踊り出す。
大人を蕩かす踊りでも、子供なリュートには未だ何だかよく分からない?
リュートが踊り疲れた頃(=約30分)、ソリュシャンは
全てを並べ終わったと思しき頃、リュートは汗を掻いて冷えて来たのか、ソリュシャンの胸元から顔を出していた。
「これで一晩待ったら、出来上がりよ」
「え~、まだ食べられないの?」
「ええ、明日のお楽しみ」
・・・ ・・・ ・・・
翌日、コキュートス配下の
当然、埋めた時に付けた目印なんてモノは雪の下に埋もれたわけで、どこに何があるのかなんて、皆目見当がつかなくなった。
ドコだどこだと宝探しの様に掘り返してはみるものの、中々に【当たり】が見つからない。
兎にも角にも、捜す手立てを増やすしかない。そんなわけで、ルプスレギナと、エクレアが連れて来られた。
「え~っと、ここ掘れわんわん」
ルプスレギナがごわっと〈ブロウアップフレイム/吹き上がる炎〉で大まかに雪を溶かす。雪が溶けて表面が硬くなったら、エクレアがその氷の上を滑りながら「ここですぞ! ここもですぞ! こっちもですぞ!」と違和感があった所に
その印が付いた所を、リュートが《暴食》で掘り返すと、そこには冷たくなった皮の無い
「あった~!」
・・・ ・・・ ・・・
ナザリック地下大墳墓・第六層
「アウア姉、マーエ兄。はい、これ!」
「わっ! つめた~!」
「冷たいけど、美味しいね。お姉ちゃん」
丸ごと一個口に入れたアウラは、余りの冷たさにビックリ!
割って、一房ずつ食べているマーレは、ん~! という具合に冷たさを楽しんでいる。
「うん、甘くて冷たくておいしい!」
「えっと、これって冷凍ミカン?」
「ん~ん、ミカンじゃないの。ムカンだって、言ってた」
「あ~、剥かんで食べられるからか~」
「え、そうなの!?」
【ムカンは実在します】
多分、ですが。この工程は、みかんの缶詰を作る際の工程とほぼ同じ。
ミカンを丸のまま、皮ごと酸で処理【=
缶詰の場合は、更に薄皮の房ごと再度、酸で処理して薄皮だけを溶かす事でバラバラにしたものを、シロップに漬けて密閉。
黄金の林檎=
蜜柑は、今でこそ極当たり前に手に入るが、かつては超が付くほどの高級品。今でこそ栽培方法が普及し、在って当たり前になったが、かつては同じ大きさの黄金と引き換えにされるほどだったとか。
リンゴは知られていたが、蜜柑は当時は名前すらなかったので、【黄金の林檎】と称えられていたのだとか。
豆知識
ミカンを剥いた時の白い筋、アレって【アルべド】というらしい。
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