第3話 肴:頑なな天使 デミウルゴスは天使を食す

 デミウルゴス好みの肴は、かたくなな天使である。


 天使は、世界で最も頑なな存在。その思考は、勧善懲悪。悪と定めたならば、何があろうと滅ぼすまで。それが身の破滅を招こうと、周囲が滅び去ったとしても、それは決して変わらない。

 たとえ、それが間違っていると理解出来たとしても、げる事はない。


 それと比較して、悪魔はと云われる。頑なな一面も持つが、解釈のに関しては、他の追随を許さず。

 要は、都合の良し悪しで解釈を取捨選択する知性。都合が良ければ受け入れ、都合が悪ければ忘れるほどにはな解釈を常に。




 では、デミウルゴスは【頑なな天使】を如何に責めさいなむのか。


 無表情ともとれる、あの頑なに澄ましたアルカイック笑顔スマイルが、拷問具クラッカーによってゆっくりとひしゃげ砕けゆく様をつぶさに眺め、中身を損なわずに取り出し易くなる、ギリギリまで責め込む。

 取り出したるは、おうとつはあれど皺一つない脳髄を如何に調理するのか、ジックリと考えるのが楽しみの一つ。


 甘いカラメルを絡めて、カリッと頂くプラリネ=カラメリゼも好し。ドロリとした黒く光沢のある油脂に潜らせたジャンドゥイオッティーヤも好し。塩炒りローストしてそのままで頂くも好し。


 それに合わせるとしたら、燻煙されたスモーキーな蒸留酒が中々に合う。


 いや、ケーキに混ぜてしまって、食べさせるのも一興。幾つも並べてタルトにするのも良いかもしれないな。

 いやいや、細かに砕いてしまってトッピングにするのも良いだろう。コキュートスも好んでいる事だ。

 り潰して、【白い粉取り過ぎ禁止】を混ぜ込んで、煮詰める事でバターの様スプレッドにしたヌテラも良いだろう。

 酒に漬けてしまうというのも一興かもしれないな。今度、漬け方をハイドネリウムに尋ねるとしようか。


 そして、ピッキーの背後の棚に新たに広口の酒瓶が一つ、増えた。

 丸々とした小振りな球体が幾つも漬けられている。ラベルには、天使をヘーゼル漬けた酒リキュール




 ちなみに、デミウルゴスは粉々になるまで砕いた天使の脳髄を糖液シロップで煮詰めて、粘土状にまで固くなったそれで髑髏を型取り、おやつペルシパンにしてリュートに与えているとか。

 これは料理ではなく、彫刻の一つだと、己に言い聞かせながら。




 世界一頑なな殻に閉じ籠った天使の脳髄エンゼルナッツ  Lie Lie



 =5+6語呂合わせ

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