第3話 ダンジョンの出入りで大切な事♡
北海道ダンジョンに初挑戦です。
ひとまず、お母さんに新しいジャージを買ってもらって、それにブレスアーマーつけて、腰ベルトに殺虫剤をつけて、軍手穿いて、物干しウエポンを装備して、腰のポシェットにはサビオと一応、マキロン入れて、勇ましい姿で、市電に乗り込みました。
おお、私、冒険者見たい。
冒険者じゃ無いけど、ニワカ女子ダンジョンウォーカーだけど。
私の家、学校まで近いから、よくよく考えてみると、こうして公共交通機関を使うのってあまりなくて、車内には、まんまダンジョンウォーカーの格好の人って、私だけで、ちょっと恥ずかしいなあ、この時間帯はあまり人もいないのかなあ、なんて思ってはいたのだけれど、札幌の人って慣れているみたいで、全く私の方なんて気にもかけずに、1人で恥ずかしがる私を乗せて、路面電車は『西4丁目駅』に至極当然当たり前のように到着した。
降りると直ぐあるのはツタヤだ。
ここから歩いて100Mくらいで、いよいよ目的の、北海道ダンジョンの入り口の一つ、初心者向きの場所へと誘ってくれる、4丁目ゲートたどり着くわけなんだけど、流石にこの大通り公園に続いている駅前通りは、ダンジョンウォーカーの皆さん多い。
私の利用する4丁目ゲートは、別名『初心者ゲート』とも言われていて、このダンジョンの構造を大きく3つに分ける、深階層、中階層、浅階層のうち、浅階層をくまなく歩ける、しかもギルドの本部がある所で一階のなんとかの森って所に行くと、ちゃんとダンジョンへのレクチャーを受けられるんだって。
今日はそれが目的なんだよね。
私も一応は二世のダンジョンウォーカーだけど、これから本当の本当な本気でダンジョンウォーカーになる訳だから、聞いた、って知識だけじゃなくて、きちんと教えてもらえるならそうしようって思ってるの。
大通公園に入ると、流石に多いなあダンジョンウォーカー。
私みたいな軽装なダンジョンウォーカーも多いけど、本格的な人もまばらに混ざっている。
全身鎧な人とか、とても雰囲気のあるローブな人とか、凄い迫力だ。
あ、あの人、槍なんだけど、鎖付きだ。一緒に歩いている緑のローブの人も雰囲気が凄い。きっと深階層とかの常連さんなんだろうなあ、かっこいいなあ。
思わず見とれてしまいながら、飽きる事なく一緒の方向に歩く人達をジロジロと言うかキョロキョロ見て、もう、初心者と言うかお上りさん丸出しで見ている私、恥ずかしいとは思うけど、ダメ、見ちゃう。
とかなんとか考えているうちに、着いたわ、4丁目ゲート。
4丁目ゲートって、新人のダンジョンウォーカーが1番先に行くゲートで、他にも中級者向きの7丁目ゲートとか、最下層直送の中島公園ゲートとかある。
私は今日は初めてのどこに出しても恥ずかしい新人ダンジョンウォーカーなので、当然、この4丁目ゲートが主な出入り口になるの。
そして、行くわ、素人歓迎、新人応援、迷えるダンジョンウォーカー御用達(お母さんから聞いた)の、北海道ダンジョン地下1階『スライムの森』。
ここで新人のダンジョンウォーカーは、ギルドの人からレクチャーを受けられるんだった。
希望があればだけど、もちろん希望だけど、是非にだけど。
一応、ダンジョンでも最弱な、多分知らない人なんていない有名なモンスターなモンスターではあるスライムさんだけど、一応はモンスターな訳で、その出会いはつまり戦うって訳で、私はこの平和な日本に生まれ育って来たから、実際に戦う機会って無かった訳で、いやいや有る方がどうかしているわよ。
そもそもダンジョン入る間に実戦の経験があるっていうのもどうだろう?
考えるとその場合、地域の行政とか治安の方が問題な訳で、でもこうしている間にも、世界には戦争に巻き込まれている子供達もいる訳で、それを思うと、ああ、今はそんな事考えなくてもいいんだって気がついて、気持ちがフラットになる。
んー。
やっぱり緊張してるのかも。
うん、だいぶ余計な事を考えてたよ。
いや、大事な事だけど、世界を考えた場合は無視できない事実だけど、でもいまは関係ないよね。冷たい言い方だけど、ダンジョンに入ろうとしている私が考える事じゃない。その辺についてはもっと違う場所で確たるタイミングで考えようと思う。世界平和は大事だから。
やっぱり1人っていうのがよく無いのかも。
きっと、誰か隣にいれば気分が紛れるっているか、覚悟とかしなくてもその場のノリでダンジョンの地下一階くらいは入れると思うの。
聞きかじった話では、仲間を募る場所とかあるみたいで、学校とかの掲示板とか、あと大通りの地下街では、『〇〇の酒場』的な、酒場ではなくて、あるのはドーナツ屋さんだけど、そこでは出会いを求めるダンジョンウォーカーが集っているとか。
でも、そんなの、私みたいな初心者が行っても多分相手にされないだろし、どんな人がいるかもわからなし、正直に言うと、怖いって思っちゃうからなかなか足が向かないんだよ。
基本的には初対面チキンだし。
上手く話せないし、
きっと私の話なんて聞いても面白く無いから黙っちゃうし。
だから初対面の人には私、とてもつまらない人間だと思うから。
何話していいかもわからないし、絶対に気まずくなるし、そんな思いするくらいなら1人でいいやってなる。
それに、浅階層も浅い1〜2階なら1人でも大丈夫みたいな事、お母さんが言ってたから、一緒にダンジョンに行く友達はゆっくりでいいやって思っててから、それでいいやと再確認する。
そしてダンジョンに入ろうと、いよいよ4丁目ゲートに入ろうとすると、
「新規入場はすませんてますか?」
って急に話しかけられてびっくりした。
なになに? というか、誰? って思って見て観ると、背かに大きな『北海道ダンジョン』って書いた登り色違いで2本、両手には何故か熊よけの鈴をカランカランと鳴らしている人、多分、私と同じ歳くらいの女の子がいたよ。
服装はね、ローブ的な、そんなフワッとした服装で、観るからに魔法使いっぽいんだけど、実は彼女、割と早めに視界には入っていたんだ。
だけど、大通り公園の地下鉄入口にいるティッシュ配りのお姉さんがな、くらいで、完全に彼女モブってしまっていた。
もう、私の認識において風化いの一部と化していた。
だから、まさか話しかけられるなんてびっくりだ。
その彼女、とっても涙目で私に訴えかけてくる。
「『退出』を忘れると、こうなりますから、絶対に気をつけてください」
そう必死の目で私に訴えかける。
ああ、聞いたことあるよ、ダンジョンの出入りに関して、きちんと記録を残さないと、ギルドさんに怒られて、しかも回数を重ねてしまうと様々な罰ゲームが待っているとか。
特に、『ダンジョンを出たよ』って記録を残しておかないと、連絡が来たり、連絡が取れない場合、ギルドの皆さんが心配して、ダンジョンに探しに行くらしいの、優しいよねギルドさん。ダンジョンに入る人、一人一人を大切にしてくれているのがわかる。
でね、ほら、うっかり、ってするよね、ダンジョン出たけど、忘ちゃってとか、それがもう何度もとか、ちょっとこれ、同情できないよね、って人には容赦なく罰ゲームが待ってるの。
まさに、この子。それだね。
本当に晒し者って感じて、とても可哀想。表情も、もう泣きそうな顔していて直視できない。
ギルドって鬼だ。
ってこの時点ではそういう認識になる。
ちょっと可愛そう。
それにとても真面目に必死に訴えかけてくる。
「わかりました、気をつけますね」
私はそんな風に、本当に軽い気持ちで返事をした。
そうしたら、彼女、
「私の言葉に答えてくれる人がいるなんて…」
もう、感無量な感じでジーンとかしちゃてる。あ、これ話けけてはダメなヤツだったかも。
私以外に立ち止まって対応している人っていないって、今気がついた。多分、これって、スルーしてあげるのも一つの優しさだったのかも。
あ、でも、彼女の場合、心がすでに折れてしまっていて、多分、どんな言葉も自分に掛けられる言葉って優しく感じているみたいだから、よかったかも。
でも、それでも、ここ早く離れてあげないと、って思ったの。
晒し者さんがもっと目立ってしまうもの。『ん? なにを話してるんだろ?』って通る人も興味持ってしまうから、私は一緒に晒し者になるおはいいんだけど、晒し者を晒し者で重ねるって言うのは、多分、この人にとって良い事ないって判断したの。
だって、この人、ちゃんと見ると結構真面目そうで、それに可愛らしい人だよ。可哀想にって、そんな気持ちばかりが大きくなってしまう。
「ごめなさい、私、行くね」
「気をつけて、くれぐれも『退出届け』忘れずに」
という言葉を交わして、私、4丁目ゲートをクグッた。
うん、大丈夫、忘れないよ。
そう思って、私は、新規登録する機械の前をスルーする。
その瞬間に、ポケットのスマホが『ブブ』ってなる。
帰りもこんな感じでOKな筈。
昨日、お父さんのPCから事前申請してあって、スマホにアプリ入れたから、スマホを持っている限れ門を出入りするだけで、自動的に入出記録は残される筈だ。そして、ちゃんと受け付けたよってスマホはバイブを持って教えてくれる。
便利だ。
今、新人ダンジョンウォーカーの私でもこれだから、昨今のダンジョンの入出管理はこれが主流の筈で、どちらかと言うと、入口の機械を操作してって言う方が少ない筈。
だから、さっき、危うく『どうして?』とか、彼女の取っている入出の手順と言うか、そのやり方を聞いてしまいそうなる。
今時、『スマホ持ってない派』なのかなあ、とか、多分、それは彼女の生い立ちに関わって来そうで長くなりそうだから、今日はダンジョン初日だから、ごめんなさいスルーさせてもらった。
縁があったらまた何処かで、と言う感じで、私は軽快に『スライムの森』に続く階段を降りて行った。
ダンジョンに入る前に、ダンジョンの厳しさを知った私だった。
スマホ派の私にも落とし穴はあるの。
スマホの電池切れ。
スマホに電源が入ってないと記録されないの。
本当に、気をつけないと。
それを気づかせてくれた『晒し者の彼女』に一応の感謝をしつつ、私は階段を一歩一歩降りて行った。
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